第46話 復帰
046 復帰
「健康診断はおわりましたよ、ご主人様」
「ああ、なんかすごく眠くて、寝てしまった」
「はい」笑顔の奏。
これで、200年は生きることができる。
DNAがかなり変化してしまったことが、検査で判明している。
遺伝子変化を誘発する革命成分がふんだんに含まれている。失敗すれば、どうなったかは不明。
恐らく、死んでいたのではないだろうか。
しかし、男はそんなことは知らない。
勿論、女もそんなことはおくびにも出さない。
「なんだか、体が痛い」
「はい、御主人様は成長期を迎えられたのです」
「成長期?」
勿論おっさんにそんなものがくることはない。
年齢的には、40過ぎの死体が用意されていたのだ。
しかし、身体強化スキルを手に入れてからは、かなり見た目もよくなっていたのである。
さすがに、ただでは起き上がらない男といえたであろう。
「眠っている間に、身長も体重も増加していますよ」と笑顔の奏。
そんな馬鹿なことがあってたまるかというところだが、現実にそうなっているのが何気に恐ろしい。
そして、その姿は、かつて九十九と呼ばれていたころの姿形に非常に近しいものとなっていた。身体を完全に変化させたのであろうか?そもそも何かの呪いなのか?
「ええ、太ったのか?」
「ええ、ちょっとカロリー高めの点滴も足しときましたよ」
「なに?かろりー?」
「栄養の事ですよ、栄養。ご主人さまには、がんばってもらわないといけませんからね」
何とも言えぬ笑顔が美しい。
「それに、今日から、嫁も増えましたよ」
「ええ、寝ている間に、嫁が増えるの?」
「そうですよ、でも本妻は私ですよね?」笑顔の中に修羅が潜んでいる。
「新しい妻の玉です」そこには、小さな美少女がいた。
妻というより子供である。二人の子供といっても通じるだろう。
「玉ちゃんよろしくね」
「はい、旦那さま」
男はおままごとの相手をしているつもりだが、玉の方は、遊びではなかった。
彼女もまたパーフェクトソルジャーである。
彼女らは、男の記憶から抽出した情報から再現されている。
男が最も気にいっている姿形になって、ロールアウトしてくるのである。
「すまないが、奏、奴らを呼んでくれ」
「わかりました」
男たちは久しぶりに対面した。
同じところに住んでいながら、会うことがなかったのである。
「いつまでも、居心地よく過ごすこともできない」と男。
「そうだ、エリーズ様を探さねば」とアル。
「仕方ねえな」とおっさん。
ようやく、本来の仕事に戻ろうとする男達。
だが、彼女らはそれを止めない。
まず、第一は、主人の生死が最も重要なこと。
そして、主人に嫌われないことが最も重要なことなのだが、めんどくさいことに、男は、奇妙なプライドが高い、ゆえに、あまり押しとどめると反発することを知っているのである。
今、男は大幅に身体能力を半強制的に挙げられた。
かなり、危険度が下がったのである。
そこで、好きにさせることにしたのである。
つまり、牛舎にずっと牛を入れておくと、牛もストレスを感じるのだ、そこで放牧してやることでストレスを発散させてやるのである。
国民的美少女AIはこの1200年間という時間を、情報収集に費やしてきた。
その中で男をどのように操れば最も効率が良いかのシミュレーションはほぼ完全にできていたのである。
ストレスなく長生きさせ、ずっと一緒に暮らすのである。
1200年間主人のなかった期間の中でやっと見つけた主人なのだから。
絶対に手放すことはできない、いや、させない。激しい執念が瞳の奥で燃やしているのだが、やはり感情が完全に制御されていた。
なぜなら、彼女らはパーフェクトソルジャーだからである。
知ってしまえば、おそらく、死ぬほど怖いかもしれないが。
どれだけ、ストーカー気質なんだよ!という感じである。
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