第2話 白い部屋の隣

002 白い部屋の隣


「見るがよい、彼らは今、召喚されたばかりである」

堕天使が、高校生らしき一団を指さす。

「お前は、彼らの召喚に巻き込まれた形で行くていになる、何度もいうが、これから逝く世界では、鑑定は不遇のスキルをみなされている、せいぜいあがいて、我々を楽しませてくれ。我々は、娯楽に飢えている、貴様の足掻きが最高の贈り物となり、貴様の罪は許されるのだ」

堕天使に言われても、嬉しくないのだが、そもそも、が何を指すのかは不明だった。


「あの、私の体はどうなるのでしょうか」

見えているのは、高校生が学ランやセーラー服を着ているのが見えている。

つまり、自身の体を持っているのである。

俺は、老衰で死んだため、じじいの体しかなかった。いや、火葬されたので骨しか?残っていないのではないかと思ったのである。


「ツクの体は、適当にそこらへんの死体を見繕っておいた、問題ない」

いやいや、相当問題がありますって。

死体遺棄とか、占有離脱物横領とか、犯罪じゃね?


「さあ、我らが神を怒らせた貴様の来世が楽しみだな」

あんたは、その神に逆らって堕天したんじゃないの?


「ははは、神あってこその堕天なのだ、我らの愛情表現の形なのだ」

そんなことを聞きたいわけじゃなくて!


「では逝け、ツクよ」

「うわあ~~~~~~」


こうして俺の意識は暗転していく。


隣の部屋では、天使が転移世界での諸注意を行っていた。

神の威光を示すべく、悪魔を討伐するように説教されている。

「そんなことは、もういいんで」

「簡単にいうと、勇者になって、魔王を倒せばいいんでしょ」

近ごろの若者は人の話を聞くのが苦手なのだった。

「まあ、報酬次第かも」

「面倒な者どもだの」

天使は、つぶやいた。

こうして、彼らも異世界へと旅立ったのである。



・・・・

城内の地下にある部屋。

ここで、召喚魔法陣が発動し、いよいよ、勇者たちがやってくる。

魔法陣がを捕らえ、色が変わり発光している。

もうすぐ、獲物を吐き出すことを教えているのだ。

勇者としてやってくるのは、ほぼ若者である。

そういう、ルールになっている。

簡単にいうと、魔法陣に年齢設定も組み込まれているのだ。

まあ、それを解読できる魔導師もいまではいないのだが。


経験則では、若者がやってくることになっているのである。


「よくぞ参られました。勇者さま方。」

姫役の女性がそういう。彼女は姫という態度をとっているが姫ではない。

それらしく見える、女性。今でいえば女優である。

そもそも、王族がどこの誰ともわからない者にあうわけがないし、危険である。

安全上の理由でもありえないといえるだろう。

だが、この召喚されし者たちは、とにかく姫が好きらしい。

これも、経験則で証明されているのだ。

ゆえに、姫から命令されるとほぼほぼ男は言うことを聞く。

因みに、女には、王子的な俳優を配役している。

これは、高位貴族という設定でも、受けがいいらしい。

これもまた、経験則で証明されているのだ。

「聖女様方、どうか私たちを助けてください」男優が科白せりふをいう。


「では、皆さまのスキルの鑑定をお願いします」

王女(役)が手のひらを向けたのは、水晶玉だった。

「このたまに、手を載せてください」

「さあ、聖女さま」

これだけで、高校生たちは舞い上がっていた。

人生経験のない若者を操るのはたやすい。

年齢設定が若いのは、これのためなのである。


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