第20話 寝ずのツク
020 寝ずのツク
それからの俺たちは、夜の時間そのすべてを錬金術?の修行にかけていた。
俺は、朝昼で、鉱石も堀る必要があり、たまに牢屋に戻り食料を配って回り、剣術の修行もそこで行う。俺の配給が仲間の生死に直結するのだ。
そして、仲間?がどんどん増えていた。
彼らが、勝手に助けて回るのである。
盗む食料がかなり増えた。
もうすぐ、ばれるだろう。
ナポレオンは三時間しか寝なかったというが、俺は一時間しか寝ないな。
ナポレオンより三倍速い!
???
ナポレオンって誰だった。
いつもこの調子だった。
しかし、出鱈目体質は健在で、一時間の睡眠でも、魔力を流しながら寝れば、疲れはなくなる。
「兄貴いつ決行するんだ」
盗賊のマリウスが、聞いてくる。
「・・・・」
俺は、魔力を循環しながら、
決行とは、脱獄である。
彼ら最初の仲間は相当、力が有り余っている。
今では、マリウスが剣士のごとく戦えるまでになっている。
「剣術が
「生える?」
「剣術のスキルを獲得している」
「嘘だろ!」マリウスもアースも驚きの表情だ。
この世界ではスキルが何よりも大事で、それは生来の物とされている。
神の恵みとされるスキルは、生まれ持った加護のようなものだ。
ゆえに、それがあるということは、神の
簡単に言うと、剣術スキルがあったとすれば、その者は、神のために剣を振るう神聖騎士団などを目指すべきというありがたい教えである。
剣術で人殺しなど、罪を犯すものは、神の道から外れているということである。
そういう宗教観なので、全く違う方向で生活する人間は異端である。
だから、剣術スキルを持つものが修行の過程で、鎗術を得ることがあれば、さらに神に愛された者である。
騎士団を目指すからには、馬術の修行もするので、のちに馬術スキルを得ることがある。
それこそ、神聖な騎士であり、神の恩寵を一身に浴びたものである。
故に修行でスキルを得ることはできるのであるが、方向性は初めのスキルに大きく影響を受けるのである。
そして、スキルを得ると、いままでの動きとはくらべものにならない効果が発揮される。
スキルは必殺技ボタンのようなものである。
ボタンを押せば効果が発揮される。
ゲームのコントローラーを一定の順番に押せば技を使える。
その技は、実は、非常に複雑なタイミングを要求される、しかし、このボタンは必殺技ボタンが別枠で設定されており、それを一回押せば発動する、そういうような仕組みである。
不断の修行は必要ない、ボタン一発で必殺技が出ることになる。
それがスキル、それが神の恩寵なのである。
「こんなことが起こるのか?」
「俺は盗賊としてやってきたのに・・・」
「修行のお蔭だ」
「嫌、いくら何でもおかしい」
「何が?」
「俺は騎士団で血を吐くような訓練で、スキルを得たことがある」
ああ、身バレするような情報流しちゃった。
「こんな、お遊戯みたいな訓練で身につくはずがない」
確かに、一般人には厳しいかもしれないが、あくまでも室内限定戦場で、あまり派手に訓練できるわけでもない。
「アース、お前は開錠スキルを身に着けた」
「・・・!!」
「馬鹿な、俺は盗賊として、かなり実践を積んできたが、そんなに簡単に、開錠が身についた奴はしらねえ、いっちゃあなんだが、これはかなり才能が左右する。覚えた奴はじめから筋がよかった。アースは筋が悪かった」
「うるさい、お前の剣術に言われたくない」
「・・・・」
答えがない、只のシカバネのようだ。
ツクは、静かに深い眠りについていたのだ。
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