第19話 錬金術
019 錬金術
「これだけは教えておく、錬金術とは、自然の摂理であると」
「・・・・」
「錬金術とは、そもそも、卑金属から金を作り出すことを目的としてきたが、それは誤りである」
「卑金属は卑金属であり、金とはならない、卑金属の性質が変わり、別の化合物になることはあっても、鉄が金になることはない」
「・・・」
「しかし、銅から金が出ることが・・・」
「違う、それはその化合物の中にすでに金が入っていたが単離されただけである」
「錬金術の基本は単離である」
「析出である、そしてそれらの物質の化合を行うこと。その性質を調査分析していくその中に初めて、発見があるのだ」
かなり、ヤバい熱の入れ方だった。
所謂、狂信的研究者の姿だ。そういえば、毎日実験日和といっていた人間がいたような、いないような。
もっとこう、簡単にポーションなどができれば、そのよく効くポーション、神に挑戦するような奴の作り方を熱を入れずに教えてほしいものだがな。
そして、錬金術の基本について、夜が明けるまで教えられた。
「師匠、牢に戻らないと見つかります」
「うむ」
これでは、体がもたない。
朝にここにいれば、牢番に見つかってしまう。
しかし、嫌というほど基礎を叩き込まれる。
容器は煮沸殺菌、水は蒸留水、析出、混合、単離これでもかというほど、析出させられる。
水の中から不純物を徹底的に析出させられる。
蒸留するから、不純物はとれるだろう!
「今日は鉄の成分を加熱により、状態を変化させる。」
???
「純鉄は柔らかい」
???
仮面は今日、鉄について語っている。
そもそも、加熱できんだろう。
「鉄に炭素を均一に混ぜる」
そして、高熱で熱する。
一気に冷やす。
それは、刀の作り方では!
「仕方がないから、炎の魔法を教えてやろう」
「できなかったのでは、確か治癒魔法しかできないとおっしゃっていたように」
「公式ではそうだが、錬金術に火がなくてどうするのか」
「いやいや、公式といわれても何が何やら」
「いくぞ、火炎の神アグニスの加護をここに」
炎が出ている。
だから、あんたはデウスの使徒のはずなんだが!
いままで、いまだにデウスは出てきていないのだがな。
「デウスの怒りがアグニスの火炎の形をとるのだ」
明らかに、取ってつけたような言いぐさ。優しい神だといっていたような。
じゃあ、『デウスの怒りを』と唱えれば、炎が出てもよさそうだがな。
しかし、この炎の魔法は困難を極めた。
なぜなら、仮面の要求する、炎は、広範囲であったり局部であったり、高温、低温、超高温と明らかに、異常なこだわりと精度を要求したからである。
そもそも、炎の魔法のスキルのないものには非常に難しい。というかほぼ無理な話であった。
だが、かつて世界で最も
「師匠、その魔法を用いれば、この牢獄こと吹き飛ばすことも可能なのではないかと、意見具申いたします」
「私は、公式には、治癒魔法しか使えないから、それはできない」仮面のテンションは下がる。
「こんなところでいれば、体に悪いかと存じます」
「儂は、ここで朽ち果てることに決めたのだ」
仮面は自らの深い闇へと沈みこんでいった。
仮面の魔法使いは、火炎魔術だけで行けば世界最強の部類に入るに違いない。
しかし、心の傷は深く、この奈落で将来を終えることを選んでいるのだ。
「それに、儂はすでに不治の病を持っている。治ることはなく、徐々に死に向かっていくだけなのだ」
「師匠!そんなことはありません、師匠の技術を受け継ぎ、必ず素晴らしい治癒魔法か薬品技術で師匠を治して見せます」
「これほどの地獄にいながら、人の事を心配できるお前は
最後の方は、涙声になっていた。
俺もあなたのようなすごい人がなぜこんなところで死のうとしているのか、それが残念に思うよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます