第93話 片付ける女
093 片付ける女
戦いは終わる。
しかし、そこには、500を数える死体が生成されていた。
たった数分で生産された。
戦いというよりただの虐殺だったかもしれない。
男とその一味は、その場を速やかに後にする。
後続の追っ手がくるかもしれないからである。
今この場には、一人の女しかいない。
生きている?という意味で。彼女が本当に人間のような命を持っているのかということはわからないが、外見上生きている人間に見えないことはない。
その女の名は玉1号。
外見上はロリ幼女であるが、近ごろ背が伸びている。
本来の設計では、背が伸びることはなかったはずなのだが、なんらかの要素により成長しているのである。
恐らく、悪魔的な何かにとりつかれているためにそのような現象が起こっているのである。
彼女は、男の理想の姿を具現化するために、生まれときから幼女であり、死ぬまで幼女である。そういう意味では、国民的美少女は、はじめ別の顔に生まれたが、途中で変更され、これ以降は変化することはない。
彼女(玉1号)の代わりに、玉2号がロールアウトしている。
彼女こそが設計通りに生きることになるであろう。
彼女は、ある種の才能に恵まれている。
それは、血である。
この血の河を自在に操ることができる。
彼女の本体は、この星に居た原住生物である。
人々はそれを恐れ、『ヴァンピール』と呼び忌み嫌った。
それは、ほぼ不死身で、滅しても必ず復活するという特性を持ち、なおかつ強かった。
だが、名前は伝わっていない英雄が彼女?を倒し魔法石に封印したのである。
さすがの英雄にしたところでも滅することができなかったのであろう。
まさに人類にとって災害級の魔物がいとも簡単に開放されることになってしまったのである。
『浪漫武器』発言によって。
彼女は、所謂真祖であるため、ほとんど従来の知られている弱点が通用しない。
十字架?聖水?ニンニク?川を渡れない?鏡に映らない?銀の武器?
確かに、効果は有る。
十字架で焼けただれはするが、すぐに治癒する。
聖水により、焼けるがすぐに治癒する。
ニンニク。料理に使う。
川を渡るどころか、泳ぎも得意。
鏡に映らない。しかし、鏡の中に入ることも可能。
銀の武器。持って使うことも可能。
そして、夜の眷属であるはずだが、彼女はデイウォーカーであった。
たとえ、灰になったとしても、その灰の中から復活する。本当はフェニックスなのかもしれない。
所謂、化け物中の化け物である。
言い方を変えれば高性能なソルジャーだ。
その高性能なソルジャーがパーフェクトソルジャーの体を乗っ取ったということである。
ある意味、あの男よりも世界の敵を作り上げてしまったのかもしれない。
あの女は世界の敵を簡単にこの世界に復活させてしまったのだ。
そして今、彼女は流れる血の河に命じる。
集まれと。
彼女の頭の上に渦を巻いて血が銀河のような渦を作る。
彼女の目がまさに血のような光を帯びる。これは男の火眼金睛のような赤ではなく、まさに血のように赤いという表現がぴったりな色だった。
血の一部が元の死体に戻っていく。
すると、今までは流れ出ることしかなかった血液がフィルムの逆回しのように戻り始める。
そして、傷が治っていく。吹き飛ばされた手足が元の体に接合される。
精気のない青い顔色で兵士は立ち上がる。
その体から鉛弾が排出されていく。
青い顔の兵士の目は血のように赤く。
口からは、獣のような牙がむき出しになる。
玉1号は、ネクロマンサーでもあった。
死体であって、眷属として操ることが可能であった。
人間には聞き取れない、声(超音波)で命令を発する玉1号。
今この瞬間に生まれた、眷属部隊が膝まづく。
《後続の追っ手は貴様らが消せ、その時に儂を呼べ・・・なの》
《ははあ、祖師様》500体の魔物がひれ伏している。
そう返事をすると、兵士たちは、どういう具合か、大地へとめり込んでいく。
そして、そこには何も残らなかった。
彼らは、弱点が存在するため、地行術で大地に潜り進むことができる。
太陽の光を浴びないために。
こうして、凄惨な戦場跡には、鉛の花だけが残されたのである
そこには、なんの痕跡も残ってはいない。
鉛の花が咲いているだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます