第82話 激闘
082 激闘
「さあ、行け!勇者どもよ!」男はそういうと豪快に、召喚者の尻を蹴り飛ばす。
彼らの中には、勇者はいないが前にすっ転がっていく。
剛力に蹴り飛ばされた召喚者たちは、敵オーガサージェントの前に転がされる。
オーガサージェントはその体格に似合わず、召喚者に素早く殺到する。
剣や槍が突きこまれる、なん振りかは、防具が防いだが、彼らの剛力は、召喚者を串刺しにしていく。
「来たれ、雷の神バール!」
「葬雷!」
猛烈な、雷の雨が降りそそぐ、皆が感電し、肉を焼く。そこには、召喚者の存在など一顧だにしない男がいた。
凄まじい肉の焼ける臭いと煙が辺りを満たしていく。嫌な臭いに
だが男の魔術?はとどまることを知らない。
「我が求めに応じよ、氷結の神ブリージアよ、ゼロ・ケルビン」
今度は、周囲が瞬く間に氷ついていく。今度は凄まじいまでの冷気が吹き荒れる。この瞬間には、召喚者の生存は絶望的な見通しとなる。
「日輪!」
今度は氷ついたオーガを砕きまくる男。
ザッザッ、何とまだ軍隊は繰り出してくるではないか。
すでに、数百のオーガが砕け散っているというのに。
そして、奥からついに敵の総大将が現れる。
オーガエンペラー!鑑定結果は驚愕の事態。
すでに、オーガキングすら超える大物の登場だった。
目が火眼金睛になっており、金色の瞳がこちらを見下ろしている。
彼は、神輿のようなものに乗っている。
複数のオーガジェネラルが神輿を担いているのである。
「さすがに、これを討伐できるのか?」
「無理だろ」
「無理なの」
すでに、召喚者たちは、皆ハリネズミのようになっていた。しかも、一部は炭化し、一部は氷つき砕けていた。
1000以上のオーガ達が、広間を埋め尽くす。
彼らは、レベル30のただのオーガではない。
皆が、階級を持ったオーガ達であった。
その中でも、オーガエンペラー、
そして彼を守るようにオーガキングが12体そして、その彼を守るオーガジェネラルが12体で守る。
オーガカーネル、オーガサージェントとただのソルジャーなど足元にも及ばないもの達の大集団であった。
「玉、例の大蛇丸にしてくれ!」大蛇丸なら精気を吸い取ることができるので無限戦闘も可能なのだ。
無理な注文である。核が換装され、今はパイロヒドラなのだ。
「ヒレフセ、ニンゲンドモヨ」エンペラーが言葉を口にする。
しかし、その一言が男を動かす。
命令されれば必ず反発する、男はそういう性格だった。
「嵐の神バールよ!トルネードキャノン(嵐撃砲)」
竜巻が龍のように走る。エンペラーの神輿に直撃する。
風の渦巻きは神輿ではじけ飛ぶが、そこまでにいるオーガ達は、空中高く巻き上げられた。
「雷の神の名はバール、葬雷」
恐るべき雷の雨が再び迸る。
「サンダーボルト!」今度は、雷の大電流が神輿に向かって飛ぶ。
バシンと雷が何かのシールドにはじかれる。それはエンペラーの防御シールドである。雷が辺りにはじけ飛び、飛び散る。
「ゼロ・ケルビン」すでに神の名すら省略されているが、周囲が氷結していく。
しかし、エンペラーの神輿には、氷は届かない。
周囲のオーガ達はことごとく倒れているのだが。
「さすがに、しんどいな」一体どれだけのオーガ達を粉砕してきたか。
玉も吸血鬼パワー全開で、殺しまわっているが、相手も強健である。
アルも、刀を振るって奮戦しているが、やはり、一体一体が強い。
「あの隅に行け」男が指さしたのは、部屋の隅っこである。
まさか隅っこで暮らし始めるつもりなのか。
一斉に隅に走る三人、追う大勢のオーガ達。
「永久氷壁!」
凄まじい、氷の壁が生えてくる。
そして、その氷の壁は、部屋の隅に張られた壁のように、隅を守る。
隅が氷で三角のテントような形状になる。完全防御だが、もちろん逃げることは不可能だ。
「コロセ、ニンゲンドモヲ」エンペラーはにやりとして命じる。
「軽く千は殺したはずだが、全く減らんな。俺の魔力は減っているが」
それは、皆も同じだった。
すでに、目に金色の光はなかった。
「玉もつかれたの、おなか減ったの」
「すまん、俺では、ジェネラルを倒すのがやっとだ」とアル。
ジェネラルだけでも、数十はいそうだ。
「奴らは、俺たちが倒す分だけ、召喚しているようだ」とアルが指摘する。
葬雷の雷エネルギーは一撃で数百は生焼け死体を作り出す。
はじめ、出現したのは、せいぜい2000である、半分以上は倒したはずであった。
しかし、現実は、まだ2000程度いそうであった。
「さすがに、ヤバいな」
「ああ」
「なのなの」
「脱出する方法はないのか」
「無理を言うな」
「おなか減った」
それにしても、あのエンペラーめ、命令するだけで、まだ神輿に乗っているだけである。
そして、こちらを
「おい、あいつの目赤くないか?」
「魔物の目は赤いなの」
「お前魔物だよな」と男が玉1号に突っ込みを入れる。
「違うの、人間なの、玉なの」必死に人間をアピールする
恐らく彼女は人間ではない。
現実は冷厳として、そこに存在するのだ。。
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