第6話 出発の日(災厄が始まるその日)

006 出発の日(災厄が始まるその日)


出発の日、俺は数枚の金貨をもらった。

門衛にである。

「さあ、とっと消えろ」

見送りには、高校生数人が来ていた。

「じゃあな、おっさん。野垂死のたれじにするなよ」

彼らは、俺を笑いにきたのだ。


しかし、言い返すことはできない。

彼らは、特別なスキルを備えている。

レベルを上げれば大変危険な存在にすぐになることができるのだ。

そして彼らはすでに帯剣している。

いま訓練真っ盛りなのであろう。

そう、この国の手先として。

餌は、姫との婚約であろうか?

だが、あれは姫の役をしている女優にしか過ぎないがな。

しかし美人ではあった。それでもいいのかもしれない。


城を追い出されると、貴族街区、すぐに警備兵が飛んでくる。

「早く貴族街からでろ、貴様のような奴がいるところではない」

そうかもしれない、俺は貴族ではない?からだ。

しかし、何かが反応した、貴族だったかもしれない。

わからない。

立ち止まると、殴られた。

「早くでろ、自分の身のためだ」

警備兵の目は、ゴミでも見ているかのような冷たい目だった。

そうかいよ!

このくそったれが!

怒鳴りそうになり、何とか止める。


引っ張られるように、貴族街区から放り出される。

別に、そこまであてつけることもないだろうに。


「よお、おっさん」

怒りのままに歩いていると、日本語が聞こえた。

そう、この異世界に来てからは、異世界語でしゃべっていた。

どうゆう仕組みかは不明だがな。

そして、この世界で日本語をしゃべれるのは、一緒に来た奴らしかいない。

「よお、おっさん」

「ずいぶんと老けたんじゃないか」

3人の日本人高校生がいた。

現地人のしかも貴族が着るような服を着ている。

「おっさん、この世界ってすげえぜ、俺らはもう体験してきたぜ」

「売春宿最高だったぜ、みんな外人なんだぜ」

「ついよ、貰ったかね使いすぎたんだよ」


「だから、出せ、有り金をよ」

「どうせおっさんの能力は鑑定しかねんだろ」

「俺たちは、一応戦士的な能力を持っているんだぜ、痛い目にあいたくないだろう」

確かに持っているが、勇者がもっていたものよりも相当グレードは低そうだった。

「売春宿に使う金なんかに」

「グエ!」

いきなり、鳩尾を殴られた。

「雑魚がいきがるんじゃねえんだよ」

背中を今度は殴られる。

さらには、蹴り上げを食らう。

胃液を吐き出してしまう。


「汚いものを出すな」思い切り蹴りつけられる。

そして、意識が暗転する。


・・・・・

気づいたときは路地裏でみぐるみはがれていた。

金以外も服すら取られていた。

上半身裸だった。

おそらく、奴ら意外にも俺の服を盗んだ者たちがいるのであろう。


数日が過ぎた。

俺は、乞食をしていたが、そもそも、この世界では、食料が不足しているのだ。

恵んでくれるもの達などいない。

腹が減った。

このまま死ぬのか。

意識が時たま遠ざかる。


今度気づいたときは、あの世でもよかったのだ。

こんな糞くらえな世界などに居たくはなかった。

だが、事態はもっとひどい状態であることにすぐに気が付かされる。

何と、手足に鎖がつながれていた。


「おい、奴隷、いつまで寝ている」

そこには、現代日本で見ることがないほど凶悪な顔つきのおっさんがいた。

「奴隷、いまからお前は、ウッソ・タナケーカ様の奴隷として働けることを光栄に思えよ」

「嘘だろ」

思い切り殴られる。

「口答えするな奴隷風情が」


その夜俺は、いつまでも、涙を流し続けた。

こんなに泣きくれたのは、いつぶりだろうか。


舌を噛んで死ぬ勇気がない、自分に涙した。


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