第7話 ABIS(奈落の底)
007 ABIS(奈落の底)
俺は、見事にしてやられ、鉱山労働者しかも奴隷に落とされていた。
人々はこの鉱山、地下深くへと掘り進んでいるものをしてアビス(奈落)と呼んでいる。
つまり、奴隷や犯罪奴隷は、アビスに送り込まれて、そこで死ぬ。
奈落に落ちれば生きて出ることはかなわない。
俺は、世界のアビスに放りこまれたのである。
奴らは、そんな俺をみて笑っているのであろう。
それとも、もう忘れているかもしれない。
ボロボロの作業着を着て、朝早く、鉱山の底へと歩いて進む。
そして、くたくたになって夜に戻る。待っているのは粗食と汚い寝床である。
坑道からでると、鎖のアクセサリをつけてくれる。
この鉱山を経営している男はウッソ・タナケーカという政商らしい。
賄賂を使い、王国に食い込んでいる。
そして、俺のようなものを捕まえて、奴隷にしてここに送り込む。
犯罪奴隷は国からの供給品らしい。
ほかにも、敵国からの捕虜などもここに投げ込まれる。
皆が使い潰されて死んでいく。
この世界の名は 「フセイザラーク」という。
そして、この国は、総神アーマベルガーの子孫が王として君臨する国。
アーマベルガー王国である。
王の名はアーマベルガー13世(ガースベア・アーマベルガー)である。
総神というのは、実は後世に作り出された
そもそも、この世界は『デウス』によって創造されたということになっている。
そして、この世界が危機に陥った時、ある人々が異世界から召喚される。
それが、アーマベルガーとその仲間だったのだ。
アーマベルガー達は、魔王を倒し、自ら国を打ち建てた。
それが、このアーマベルガー王国の建国なのである。
そして、アーマベルガー以前の国の歴史は埋却された。
さすがに、『デウス』までは、埋却できなかったのか、自らを神格化し、総神アーマベルガーへといたったと言うわけである。
ゆえに、この世界には、デウス教という一神教が存在するのだが、神の使いか化身として、総神アーマベルガーが同等の存在としていることになった。
つまり、デウス教のアーマベルガー神という奇妙なものが存在するに至るが、それは正されることはなかった。
それどころか、アーマベルガーの仲間たちも、同様に国を作った。
アーマソウル王国、アーママリーン王国、マノーザ・セイーン王国、マニカ・イートン王国
という国である。そして、彼らも、デウスと同等の存在、神となった。
一神教のくせに、それ以外の神が5柱も存在するという、ゆがんだ状態なのである。
しかも、近ごろは、デウス神聖教団だったはずのものが、アーマベルガー神聖教団という組織に改編された。
キシン・マダール教皇は、当初デウス神聖教団の枢機卿だったが、アーマベルガー13世と手を結び、自分がトップになるためにクーデターを起こし、本来の教皇を追放し、自らアーマベルガー神聖教団と改変し、教皇となったのである。
勿論、神聖教団には神聖騎士団という強力な武装集団が存在することを忘れてはならない。
これらが、この世界の歴史である。
当初、勇者チームだったもの達がこの世界の大半を支配するに至ったということになる。
この世界はすべてがねじ曲げられている。
図書館で得た知識であった。
そして、俺は、またも悔し涙をノミとダニの布団に流していた。
俺は、図書館の『ウィズダム』からスキルを伝授されていた。
それは、『アイテムボックス』というスキルである。
俺は、もっとこのことに注意を払うべきだった。
このスキルは、異空間にアイテムを入れておくことができる。
俺は、金貨を直ぐに、そこに入れておくべきだったのだ。
そうすれば、奪われずに済んだ。
そして、乞食をすることもなかった。
そして、奴隷になることもなかったのだ。
だが、この世界では一瞬の油断も許されない。
なぜなら俺は、この世界では、歓迎されていないからだ。
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