第58話 襲撃
058 襲撃
領主館の近くには、領軍の宿舎兼基地が存在する。
ソドームの街の領主は、ヨーシマー・ソドーム子爵である。
もともとあまり評判の良くなかったソドーム家だが、このヨーシマーは格別に評判の悪い人物であった。とにかく、女に手を出すのだ。そのせいで領民の婦女がかなり犠牲になったという。
だからといって、罰されることはない。
領民を虐げたとしても、それは罪にならない。
誰が裁くというのだろうか。
この世界では、そんなものはない。
法律もない。いわゆる俺が法律なのだ。
不満を持つ男たちは、反乱を企てたが、ことごとく狩りつくされたのである。
住民は、日々おびえながら過ごしている。
可愛い顔を持つ娘には、墨を塗るという防御方法を採用している。
そして、領主館の周りには石壁が周囲と区切っている。
さすがに、自分がいつ狙われてもおかしくないという自覚はあるのだ。
だが、その男たちは、壁の周りに集まっている。
男の目が金色に光り始める。
翳した手が石壁を砂に変えていく。
散歩はどうやら領主館の方に向かっていくようだ。
幸いにして、この30人には剣術スキルが生えていた。
理由は不明だが、生えていた。
血反吐を吐くような訓練を反復すれば身につくことがある。
それは、もう体に叩き込むようなもので、すでに訓練で身体が反射するようなものである。
だが、残念ながら、そこまで厳しい訓練を受けたものはいなかったのだ。
30人のほとんどが兵舎に向かう。
寝ているうちに殺すのが一番簡単でいいからだ。
領主館の本館の扉に兵士はいたが、裏口にはいなかった。
扉が紙でできているかのように、破れた。
「敵襲!」
やっと、宿舎で戦闘が開始されたようだ。
「こちらも参る!」男は、なんと2刀を抜き放つ。
厨房を横切り、食堂を抜けて、玄関ホールへと進む。
異変を聞きつけた、兵士たちが、武装もそこそこに部屋から出てきている。
どうも、本館にも兵士はいるようだ。
さすがに、何度も反乱を起こされただけは有る。
秘剣風車!2刀による日輪。
しかし、剣筋は上段と足首を狙っている。
飛び散る血潮。
アルは一人にとびかかり、力任せに突き刺し、押し倒す。
マリウスは、バックハンドブロウのように、敵の意表を突く攻撃を繰り出す。
薄暗い屋敷の中で、男の目は金色に輝いていた。
そして、残像を残すような恐るべき速さで右へ左へと剣光をひらめかせながら、階段を駆け上る。
猛獣が攻撃するような素早さと致命的な攻撃力を持っていた。
飛び散る血潮と飛び散る手足、阿鼻叫喚の地獄のような景色を一瞬で作り出すのであった。
武装した兵士がかかってくる。さすがに不寝番の兵士もいるのだ。
だが、それがどうしたというのか。2刀を鞘に納めた男は、封印が解除された、大蛇丸を抜く。
槍と大刀が打ち合う。
槍の穂先が切り飛ばされる。
驚きの表情の兵士の頭を勝ち割る、大蛇丸。
もう一人の兵も同じ運命をたどる。
大蛇丸は長すぎて室内戦闘には向かないが、壁や床を抵抗なく切り裂くため、なんの問題にもならない。
目標の部屋らしき前にも兵士がいる。
「儂は、エルナンド・ド・フィッティ。王国親衛隊の隊長を勤めたこともある」
「汝の力は、我が力なり、顕現せよ、暴風の神バールよ」
嘗てのエルナンド隊長は突風に巻き込まれ回転しながら、扉を砕いていく。
「名乗り遅れたな、我はルセール・ド・ツク・ゾーレオパルドだ。人の名乗りはちゃんと聞くものだぞ」
すでに、エルナンドは首があらぬ方向に曲がって天井を睨んでいた。
「なんだお前たちは!」
「散歩の途中だ、なんだか剣を振るう輩が襲い掛かってくるからな、かかる火の粉は振り払わねばならぬ」
「兄貴、奴は俺にやらせてくれ」とマリウス。
「儂をこの街の領主と知っての狼藉か、儂はヨーシマー・ド・ソドーム子爵であるぞ」
肥ったおっさんがわめいている。
「ふん、平民ごときが、妄想の戯言を。」と男。
「儂は本当にこの街の領主だ、無礼だぞ平民が」とオーク。
「平民か?、貴様貴族か?」と男。
「さっきの名を聞いていなかったのか」とオーク。
「なんたら、ソドムだったか?」と男。
「無礼な!貴族に対する物言いがなっていないぞ」
豚のような男が今度は真っ赤になっている。
「オークが貴族になれるのか?この国では」
「殺してやる」
「そうか、マリウスがんばれよ」
「おお」
マリウスとオークのような男の戦いが始まる。
「
「何を探している」とアル。
「金だな」
マリウスはやはり盗賊、追い詰められていく。
オークの方が強いのだ。
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