第57話 カラス

057 カラス


「まあ、話は分かった。よくもまあ、やってくれる。よほど殺してほしいのだろうな。俺は、いま昏く燃えている。残念なことに大蛇丸は普通に戻ったが、奴等こそ一人残らず、切り殺し、吸い尽くすにふさわしいというのに」


「大丈夫なの、必要なら、もとに戻せるの」玉1号がそういう。

「いや、それは大丈夫だ。玉はおとなしくしていなさい」

「はいなの」


郊外の墓地。

しかし、もともと孤児の墓など小さなものでしかない。あってなきがごとしである。

さてどこだろうか。

一面に十字の墓が並んでいる。


「カア~」その時、カラスが鳴いた。

無視すると、「カア~!」

トーンが上がった。

草むらだった。

「カア~」

「ここを探せばよいのか」

「カア~」


どうしても、探さなければならないようだ。

「探知!」

それは簡単に反応した。

「ここだ」

「なぜカラスが」

「カラス使いだったのか」

「そんな職業があるのか」

「いや、ないけど」


俺たちは墓荒らしを行った。

指輪はあった。あたりの草を刈り、もう一度十字を建ててやる。

そして、十字を切る。それが流儀らしい。


「お前についている、女の顔はエリスなのか」

「そうだ、死んだエリスの生まれ変わりのようだ」

やはりそうなのか。

国民的美少女AIは人間の頭の中を見ることができる。

そして、それを人体として実現することができるのだ。


カラスはいなくなっていた。


研究室の図書館。

二つの指輪を表紙に合わせると魔法的なにかが描かれ、表紙が開くようになる。

師匠。いずれ、あの場所に葬ってあげないといけない。


師匠はまだ、死んではいない。

デスロックは襲撃に会わなかったのだ!


その中には、恐ろしいことが書かれていた。

様々な神の名、その真名(真言、梵字のようなマーク)、呼びかける文言や文法である。

そして、デウスもあった。

デウスの真言の効果、安らぎを少し得る。だった。


「異端審問官が泣いて喜ぶ、秘本中の秘本という中身だが」

その中身に飛びついたのは、鍛冶師ゴブニュである。

早速、剣身に見様見真似で彫り始める。


恐らくそれでは、効果が出ないだろう。

魔力を込めて、初めて回路が動く。

そのような予感がした。


「さて、俺は夜の散歩に向かうのだが、一緒に行きたい奴いるか」

「行くの、なんか美味しそうなの」玉1号であった。

「玉は、お留守番で」

「そうですよ、出しゃばりは嫌われますよ」と奏。


「俺は行きたい」

「俺もだ」アルとマリウスはやる気だ。

「俺は殺しはどうもな、だが、この武器の切れ味を見てきてほしい」

殺しは好かんが、切れ味を見るためには人が死んでもいいらしい。

「おっさん、これは彫るだけじゃ、ダメだ。」

剣身に魔力を流す。真言は青く光り始める。

「魔力か」

「一度回路を動かせば、後は剣士の魔力を動力にするようだ」

「なぜそんなことがわかるんだ」

「さあ」


それは、万物の理だからである。


恐るべき剣を持つ三人の男、そして、その周囲には、かつての脱獄囚三十名が立っていた。

彼らは、ゴブニュが作り上げた、防具を着用し、今しがた完成したルーン真言の刻まれた剣を着剣していた。


一人だけは、奏が手編みしたチェーンメイルなどを着ていたのだが。

本当に、チェーンメイルは手編みなのだろうか?

素材鑑定ができないのだが・・・。


一応金属全般には詳しくなった俺のはずなのに。


男の背中には、あの普通になった大蛇丸もかかっていた。

腰の一本は自動で修復されるため、折れることはないので、代わりの刀は一切不要である。

しかし、男は、腰に2本と背中に大刀を計3本も持っている。



研究室の出口。

出口が潜望鏡のように地に這いだすのである。

そこで、奏が何かの棒をこする。

がりがり、火花が激しく散る。

それは、ファイアスターターと鉄である。

「なんの真似だ」

「こうすると縁起がいいらしいのです」

「そうか、我々はただ散歩に向かうだけだ」

「行ってらっしゃい、あなた」


恐るべき散歩が始まったのである。


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