第15話 剣士の告白

015 剣士の告白


俺たちは、昼はどれい労働、夜は訓練となかなかに厳しい生活を送っていた。

牢屋には、番兵はおらず、割と音を立てても問題なかった。

そして、ほかにも奴隷はいたが、皆へばっていて、俺たちの活動に注意を払うものはいなかった。というよりは、死にかかっていたので、気にもできなかった。


俺の訓練段階は次のステージに向かっていた。

罠発見と解除、気配遮断である。

そして、室内戦闘。

それに加えて、魔力量を増加させるため、鉄鉱石を粉にしている。


「だいぶ戦えるようになってきたんじゃねえか」とマリウス。

彼は、やはり剣術が苦手だ。

「ああ、そうだな」アースがいうが、何か奥歯に物が挟まったような口調だ。

「何かあるのか?」

「そうだな、お前たちは戦場でたたかったことがないから知らないかもしれんが、この世界には、魔道士部隊というものがある。彼らの魔術は強力な攻撃だ、たとえ剣技で勝ろうとも、奴らがいれば、突破できないかもしれない」

「ああ、そういうことか」

「ああ」

「どういうこと」と俺。

「魔道士というのは、それほどの数はいないが、いると厄介な相手だ、形勢が逆転するようなことが可能ということだ」

「そうなのか」

「ツク、もっと世界の事を思い出せ」俺は、記憶喪失ということになっている。

事実、記憶がしっかりしていない。

何かを思い出せないのだ、そういうことが、山ほどありそうな予感がひしひしとする。


つまり、使い方にもよるが、魔術は大変に危険な代物ということだ。

今度、ゴブニュに聞いてみよう。

彼なら、何か知っているかもしれない。



「残念だが、それは違う。俺たちドワーフは魔法が苦手だ」

「そうなのか」

「ああ、だが、お前もいつの間にか身に着けたスキル頑健は、魔力を体内に循環させることにより身体能力を高める、いわば魔法の一種ではある」

「そうなのか」

「ああ、お前ほどでたらめな奴なら、魔術もつかえるかもしれん。こればっかりは、才能だ。できる奴はできるが、できないやつはできない。少なくともドワーフ族ではそういわれておる」

「でたらめ?」

「そうじゃ、無能とかなんとか言われつつも、頑健やアイテムボックスを持っている。でたらめな奴じゃ。そんなにスキルは顕現しないぞ」

「そうなのか」

「そうなのじゃ」


「ああ、そういえば、特別犯罪者収監用監獄『デスロック』には、魔法を使える男が入ってるって言ってたな」

「なんだそりゃ」

「アビスさ」

「アビス?」

「そう奈落の底だ」


「かつて、そこでは様々な鉱物がでた。だから大きな穴が開いている場所がある。その底に、絶対に逃がしてはいかん奴らを閉じ込めている」

「俺たちも捕まっているが」

「厳重な監視を受けている」

「どんな奴だ」

「儂に聞くな、そんなこと聞いたら、儂もヤバい」

「そうか」

「そうよ、お前には『鑑定』があるだろう」

「おお」

「だが、いけんぞ」

「そうだな、厳重な警備だもんな」

「そうだ、厳重なな」

「じゃあ、会いにいけないな」


「実はそうでもない」

「え?」


「監獄に行くまでは、厳重だが、監獄自体、ほぼ番兵はいない。」

「なんでそんなこと知ってるの?」

「実はな、間違って行ったことがある」

「ええ!」


この鉱山では、常にあらゆる方向に向かって坑道が掘られている。

つまり、デスロックの方にも向かう坑道があるらしい。

ゴブニュはその坑道を間違って掘り進め、ほぼデスロックに到達する穴を掘っていたのである。


「儂には、特別犯罪者を逃がす趣味はないからな、そのままその坑道は埋めた」

「つまり」

「儂ならいけるな」

「じゃあ、俺はいってもいいか」

「できれば、行きたくはないが、お前を逃がしてやることはできん儂じゃ、少しくらい時間を無駄にしてもよかろう」

「すまないゴブニュ」

「それはお互い様だ」


「まあ、教えてくれるかどうかわかんないしな」

「そうだな」


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