第23話 ナグルト観光 その1
昨晩お風呂ではしゃぎすぎた俺たちは、翌朝いつもより遅くに目を覚ました。ふわふわでふかふかのベッドがいけないんだ!サーシャもふわふかベッドが気に入った様で、まだ俺の胸に抱き着いてピースカ寝ている。しかもマッパで!何故だ?
「サーシャ、そろそろ起きようか。」
俺はサーシャを起こすと、今日の観光する為の装備を考えながら着替えだした。
すると、俺たちが起きだしたことに気付いたのか、メイドさんが2人、それぞれ水の入った洗面器を持ってきてくれた。
俺とサーシャはそれで顔を洗い、歯磨きを終えてから、サーシャの髪と尻尾をブラッシングしてあげた。もちろん、髪の毛と尻尾のブラシはそれぞれ専用の高級ブラシだ!サーシャはこのブラッシングが大好きなのだ。
目を細めながら鼻歌を歌っている。「海の声」だった。よく覚えてるな。
街中で
少し悩んでから、俺はサブアームとしてナイフを選んだ。サーシャのは彼女の希望で長めのSOGのタクティカルナイフS37-K 17.8cmを選んだ。
俺たちはメイドが用意してくれたローブを羽織って準備を完了した。
準備の整った俺たちは、昨晩の食堂に案内され、そこで朝食をいただいた。
パンとスープとソーセージで朝食をいただいていると、クリーム色のチェニックに薄いブラウンのパンツ姿のエリクシアが手に黒いローブを持ち、腰に片手剣を佩いて食堂に入ってきた。質素なチェニックでは隠し切れない見事な双丘が自己主張をしている・・・。
「おはようございます。ナナセ様、サーシャさん。昨晩は良くお休みになれましたか?」
「ああ、お陰様でな。少し寝すぎてしまったよ。ちょっと待ってくれ今食べ終わるから。」
「ごゆっくりどうぞ。」といってエリクシアは俺の斜向かい、サーシャの隣に腰を下ろした。
俺達が朝食を終えるのを待って、エリクシアは腰の巾着袋をテーブルの上に置き、中身を取り出して見せてくれた。
「これが現在西方文明圏で使われている通貨です。アラン連合王国で作られ西方中で流通されています。」
「ほう、興味深い話だな。」
エリクシアのよると、通貨は以下の8種類がある。通貨の単位は『ドーラ』だそうだ。
鉄貨
銅貨 (10鉄貨) 銅貨1枚=1ドーラ
大銅貨 (10銅貨)
銀貨 (10大銅貨) 大人の1日の日収が銀貨3~5枚らしい
大銀貨 (10銀貨)
金貨 (10大銀貨)
大金貨 (10金貨)
白金貨 (10大金貨)これは市場にあまり流通しないらしい
俺は昨晩とんでもない金額をパルガム・サシャからもらったことになる。
それから、鉄貨はある事はあるのだが、実際の取引では使われるのを嫌がられるとの事だ。鐚銭と言う訳か。なので支払いが銅貨に成るよう気を付ける必要があるそうだ。
「よし、だいたい分かった。後は実習だな!じゃ出かけようか。」
「はい」サーシャとエリクシアが声をそろえて答えた。
俺は出かける前に、店の番頭に頼んで白金貨を二枚、色んな貨幣に両替してもらった。両替した貨幣は結構な量になったが、倉庫に収納するので問題ない。
優秀な倉庫さんは、どの貨幣が何枚あるか親切に表示してくれる。
バルガーム・パシャの商館自体が、ナグルトの街の目ぬき通りにあるので、商館の玄関を出るとそこには行きかう人と荷馬車でごった返していた。
昨晩は暗くて良く分からなかったが、ナグルトの街はテレビで見た中世ヨーロッパの街並みによく似ていた。これぞ夢見たファンタジーの世界だ!
路上の人々は、皆地味な色合いの服を着ているな。これなら俺達の黒っぽい装備は目立たないか?
今日は
「随分にぎやかですね!こんなに人を見たの初めてです!」
とサーシャが声を弾ませて言った。
何故か人通りの多い通りなのに、俺達の周りだけ人が避けて通り過ぎて行く。腑に落ちん。
「では、この通りの一本裏手にある市場へ向かいましょう。そこはもっと人が多いですよ。」
エリクシアはそう言うと、サーシャに手を伸ばして二人手をつないで歩きだした。いつの間に二人はそんなに仲良くなったんだ?お兄ぃさんはチト寂しいぞ!
目抜き通りの裏にある市場は、一言で言うなら「雑多」!種々様々な露天商が軒を並べており、色とりどりの天蓋が自己主張している。カオスだ。
市場の人々は人族がほとんどで、少数の獣人族を見かけたが、皆どこかおどおどしながら、道の端を避けるように通り過ぎて行った。獣人族で堂々と闊歩しているのは、戦士風の装備を付けた極々少数の者だけだった。
それに人種を問わず、奴隷の首輪を付けた者が通行人の四割程いた。
俺にとっては市場で売っている物が皆珍しく、果物や野菜にしても見たことがないものばかりであった。
俺達が一軒の果物の露天商に立ち寄ったとき、エリクシアが黄色い実の果物を指さして、これが『スィーグゥ』の実であると教えてくれた。
昨晩サーシャが飲んでいた果実水はこれだったのか。
気を利かせて露店の親父が味見させてくれたので、俺達は剥きたてのスィーグゥを一切れずつ頂いた。
「ンフ――!甘くて美味しいです!」サーシャが尻尾をパタパタさせている。
スィーグゥの実は食感は梨の様だが、瑞々しくて味は桃に似ていた。
エリクシアが色んな果物を紹介してくれると、露店の親父が目ざとく味見させてくれるので、気にいった果物を俺は片っ端から店にあるだけ買わせてもらった。店の親父が極上の笑みを浮かべている。いや、親父キモイからちょっと離れて・・・。
果物の露店で爆買いしている俺達は、結構目立っていたのか、隣の露店商も俺を引きずりこむ勢いで、商品を売りつけようとする。隣は魔道具屋の露天商だったよ。
俺は食べ物だったら、味見させてもらい、道具だったら手に取っていじらせてもらって気に入ったら買い込み、気に入らなかったら断ったりして、気侭に露店を回った。
そうして、三人で市場を楽しんでいると、まだ五~六歳くらいの幼女が俺に声を掛けてきた。
「あ、あの、おじちゃま。お花いかがれしゅか?」
少女は手に花の入ったバスケットを下げて、俺を必死に見上げながら声を掛けてきた。
「朝積んだばかりなの。お花、いかがれしゅか?」
俺は、少女の前に膝を折ってしゃがみ込み、その子に尋ねた。
「そうだね。この黄色いお花と白いお花はいくらだい?」
「えっと、ひとつ銅貨三枚です。買ってくりぇるの?」
俺は黄色の花と白い花を一輪ずつ少女のバスケットから抜き取ると、代わりに銀貨を彼女の手に握らせた。
「えっ?こんなに??」少女は手にした銀貨を見て驚いた。
「いいから持ってお行き。他の人に見つかったりしない様、しまっておくんだよ。」
そう言って、少女のバスケットにスィーグゥの実も一つ入れてやった。
少女はニッコリ笑って「ありがとう!おじちゃま!」と言って、市場の人ごみに消えていった。
「プッ・・・・クスクス・・・おじちゃまって・・・・・プププ・・・。」
サーシャが肩を震わせて笑いをこらえている。覚えていろよ、サーシャめ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます