第2話 大地に立つ

 異世界に転生したら、マッパだった俺は、改て自分の体を見回した。


 前世でアラフォーだった身体に比べて、肌の張り艶なんか若々しくて結構筋肉も付いているな。気のせいか、目線も高いように感じる。


 「やった!腹筋割れてる!ひゃっほー!憧れの6パックってやつだ!マッチョじゃないが、なんかいい感じじゃない?神様ありがとうございます!」


 俺はサイドチェストのポーズで我が大胸筋をピクピクさせながら、神に感謝の言葉を捧げた。もう、腹斜筋で大根をすりおろしたい!!

 すると突然、目の前に【ワンマンアーミー】の文字が現れ点滅した。


 「ワンマンアーミー?これを押せってこと?」


 目の前のワンマンアーミーの文字に触れると、ワンマンアーミーの文字はスッと消えて、右目の視界の右下に倉庫とメールと緑と青のアイコンが点滅した。


 「えっ!何これ?てか、俺の目どうなってんの?」


 自分の目が、なんかスマホの画面の様になって驚いた事は驚いたのだが、それ以上に右目に映っているアイコンが気になって、もっとよくアイコンを見ようと視線をアイコンに向けるのだが、結構これが難しい。

 何度かのチャレンジの後、たまたま視線がメールのアイコンを上手くとらえることが出来た。

 すると、目の前に半透明なメール表示ウィンドウが飛び出て開いた。


「地母神だよ!

 転生おめー!

 トーマ君には特別に転生記念の功績ポイントをあげるね!地母神ちゃんスペシャルプリティサービスで500ポイントもあげちゃうよ♡

 あとね、天界の女神達が顔を赤くして喜んでるけど、君、早く服着た方がいいよ!チラ見されてるぞー!

 お返事待ってます♡

 地母神より、あらあらかしこ💋」


 功績ポイント:1,000→1,500ポイント


 あかん!これはあかんやつだ。目に映っている功績ポイントの事なんか気にならないくらい、目の前に表示されたメールは衝撃的だった。何なんだこれ!地母神様からのメールには鮮やかな紅色のキスマークが、思わず女神様の唇を想像させられてしまう程リアルなキスマークが付いていた。


 「どうやったらこれ消えるんだー!」


 俺は慌てて地母神様からのメールを消そうとしたが、消し方が分からない。半透明な光るメールウィンドウを触ろうにも、手がウィンドウを突き抜けるだけで、何も起こらない。

 でも、落ち着いてメールウィンドウを観察すると、右上の角に✖マークがあるではないか!そう、あのパソコンとかでよく見るやつが!

 俺は右手の人差し指でメールウィンドウの✖マークに触れると、目の前からメールウィンドウがシュっと消えた。


 「メールは・・うん、封印だな。」


 なんかとんでもないものを見てしまったが、気を取りなおして倉庫のアイコンに視線を向ける。間違ってもメールのアイコンを見ないように、慎重に・・・。

 すると、倉庫のウィンドウが目の前に開いて、倉庫に収納されている装備のリストが表示された。


===倉庫収納品リスト===

『戦闘装着セット2000』

  ・戦闘服,一般用×2

  ・防寒戦闘外衣2型

  ・防寒戦闘服内衣2型×4

  ・戦闘下衣2型 ×4

  ・戦闘弾帯2形

  ・戦闘靴2型(一般用)

  ・戦闘雨具3型

  ・戦闘ゴーグル

  ・戦闘パット

  ・手榴弾納

  ・戦闘雑納

  ・88式鉄帽2型

  ・戦闘鉄帽覆(暗視眼鏡用)

  ・防弾チョッキ3型 (改)

  ・戦闘手袋2型×2

  ・防弾盾

  ・個人用暗視装置 JGVS-V8

  ・9mm拳銃用レッグホルスター

  ・ハイドレーションシステム

  ・個人救急品


『*戦闘糧食II型×2』

『一般着替えセット×4』

『靴下×4』

『タオルセット×4』

『洗面・風呂道具』

『歯磨きセット』

『ベビーパウダー』

『雨合羽』

『飯盒』

『水筒』

『携帯シャベル』

『工具一式』

『ビニール袋 大・中』

『マルチツールナイフ』

『赤外線警報器×8セット』


『20式5.56mm小銃』

『*30連STANAG マガジン×6』

『20式小銃用弾納』

『ベレッタGLX160』

『*40x46mmグレネード弾×2』

『フォアグリップ』

『光学式照準眼鏡』

『9mm拳銃SFP9』

『*15連マガジン×4』

『SFP9用弾納』

『*M26破片手榴弾×2』

『*MK3A2攻撃手榴弾×2』

『*MK1照明手榴弾』

『*発煙手榴弾』

『*焼夷手榴弾』

『*催涙球2型』

『*閃光発音筒』

『コンバットナイフ』

(*装備は毎日0:00新規補充)


◎倉庫内の装備は使用後に再度倉庫に入庫する際、『後方支援連隊機能』によって自動的にメンテナンスされる。

=============


 「着替えキターーー!」


 倉庫に表示された装備の多さに驚いたが、それは後回しだ!思わず俺は絶叫し、着替えの文字を連打した。

 すると目の前にビニール袋に入ったTシャツとパンツと靴下がどさりと落ちた。俺はビニール袋を慌てて破り捨て、肌着を着込んだ。


 「ふぅー、よし!さらば愛しき原始時代よ!そしてようこそ21世紀の高機能肌着よ!」


 急いで肌着と靴下を着た俺は、ついに原始人(マッパ)を卒業し、異世界のその大地に立ち上がった!


 しかし、大地に立ったは良いが、肌着しか着てないと心細かった。さすがに、原生林の真っ只中に肌着だけで立っている勇気はなかった。これまでマッパだったのはカウントしない。

 

 俺は肌着の上に着る戦闘装着セットを次々に倉庫から取り出しては身に着けた。

 初めて手に取った物ばかりだったが、不思議と体が装着の仕方を知っていた。

 

 防弾チョッキや弾納なんか必要なのかと思ったが、頭の中では未知の原生林の中で、安全の為の装備を装備して、し過ぎる事はないとの理由をやかましい位告げてくるので、スペアのマガジンからSFP9やナイフまでしっかり装備した。


 最後に20式小銃を取り出し、コッキングハンドルを引き、カートリッジをチャンバーに送り込み、セレクターを安全の「ア」の位置にある事を確認し、そしてベレッタGLX160の発射筒を開いて40x46mmグレネード弾を装填してから、20式小銃を脇に置いた。


 「どうやら装備から武器・弾薬の取り扱い方に至るまで必要な知識が頭の中に入ってるみたいだな。今日初めて触ったのに、使い方が体に馴染んでいるみたいだよ。」


 一通り身支度を整え終えたので、俺は水筒を手に取り水を一口飲んだ。冷たくて美味しい水だった。


 「さて、最後のアイコンは何なんだろう?どこかで見たような・・・。」


  緑と青の横二本線のアイコンに視線を合わせると、目の前に商品リストのウィンドウが飛び出した。


 「スゲーな、アイスから武器弾薬!?えっ、ちょっこれ、食品関係の商品は基本ファミリーマートの商品じゃないかよ!お弁当屋やファミチキってそのまんまじゃん!自衛隊にファミマが入っているのか?」


 自衛隊では5年に一度の入札でPX(酒保)出店業者を選定云々・・・。また頭の中で細かいことを説明し始めるのだが、俺には興味が無かったのでとりあえず無視!一体誰なんだ、やたらと俺にウンチクを語りたがる頭の中の人たちは・・・。


 不思議機能をやっと見終えて、装備一式装着し終えた俺は、20式のコッキングハンドルを勢いよく引き、気合を入れて叫んだ。


 [さあ、冒険の始まりだ!」


 意味もなくコッキングハンドルを引いてしまった為、排莢され5.56mm小銃弾は、後で回収しマガジンに入れました。カッコ付けた代償に俺は一人赤面していた。

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