第27話 エリクシアの決意
派手男に胸を鷲掴みにされたエリクシアは、嫌悪に唇を震わせながら、顔を背けバカ派手男にされるがまま汚辱に耐えていた。綺麗な眉を顰め、瞼をきつく閉じながら・・・・
『ブチッ!』俺の中で何かが切れた!
俺は派手男に突進し、その胸倉を片手で掴み上げて全力の拳を奴の顔面に叩き込んだ。
「ブガッフグ!」奴は豚のような悲鳴を上げでぶっ飛ばされた。
だが俺はそれで許してやらない!俺の神聖な霊峰を汚した罪!万死に値する!百回地獄に落としてやる!!
「こ、こいつ!」
取り巻き達が慌てて腰の剣を抜剣した。俺に剣を向けた取り巻きを、俺は冷酷に睨めつけて、素早くSFP9をホルスターから抜いた。
「バンバンバンバン」
連射が早すぎて、1発の銃声にしか聞こえないほど早く4発の弾丸をそれぞれ取り巻き達の太腿に撃ち込み、大腿骨を砕いた。
俺の反射速度が、次第に人間の領域を超えてるような気が・・・。
「フヒィー!ンヒィ!フブヒィー!」
一瞬で血まみれになって床にのたうつ取り巻き達を見て、派手男は悲鳴を上げ、おまけにパンツまで濡らしていた。汚ねーブタだ!
ヤツは鼻骨と前歯が折れ、血が滴るのを手で抑えながらブタの様な悲鳴を上げ続けた。
「おい!そこの派手男!お前はやっちゃーいけねー事をやってしまった!俺の神聖な
神に祈れ!そして地獄に落ちろ!」
俺は歯を食いしばり、一言一言噛みしめるよう怒りの言葉を吐き出し、SFP9を向けながら派手男に近づいた。
派手男は俺の全力の怒りに触れて腰を抜かし、自分の小水の中で俺から少しでも逃れようとバタバタもがいていた。
「ブヒッ!お、お前こんな事してどうなるか、わ、分かってるんだリョウな?おっ、ぼぼぼぼぐは、ナ、ナグルト伯爵の・・」
「そんなこたァどうでもいいんだよ!俺は旅人だ!お前をブチ殺しても、この街から出て行けば良いんだよ。
俺を捕まえたければ覚悟を決めろ!追ってきたら皆殺しにしてやる!」
「フヒー、き、キチガイめ!」
俺は派手男の顎をけり飛ばすと、奴の右腕を踏みつけ、御神体を汚した右手の五本の指にSFP9の9㎜弾を至近距離からお見舞いし、指を全部吹き飛ばした!
そして手のひらと右手首の関節にも9㎜弾を撃ち込み、最後に右足の大腿骨も、取り巻き達と同じように砕いてやった。
[ごみ屑を掃除しました。功績ポイントを220ポイント獲得しました。功績ポイント:4,189 ポイント→4,409 ポイント]
[クエスト:地母神様の愛し子を
功績ポイント:4,409→4,909 ポイント
「大丈夫か?」
俺は驚き立ち竦むエリクシアの肩にそっと手を回して、肩を抱きながら店を後にした。
サーシャは俺たちの後ろでSFP9を構えながら、後方警戒にあったってくれた。良く出来た狼っ娘ですよ。
□□□エリクシア
「おい!そこの派手男!お前はやっちゃーいけねー事をやってしまった!俺の神聖なモノを、その汚ねー手で汚しちまったんだァ!
神に祈れ!そして地獄に落ちろ!」
ナナセ様は歯を噛み締めながら、そう怒りを吐き出された。
「俺の神聖なモノ!」
奴隷にまで身を落とした
私は胸が熱く高鳴り、込み上げくるものを必死に堪えて立ち尽くした。
このお方は、私の胸に暖かな春の風を運んで、私の心を覆った冷たい氷を溶かして行くのが感じられる。
そう、私はこの時、この瞬間の為に生を受けたのね。
父上、母上、兄上そして可愛いキリアン。もういいかしら?
私の秘密を全てナナセ様に打ち明け、そしてこの熱い胸のときめきをお伝えしよう。
例え残された命が短くとも、私のこの思いをあの方にお伝えしたい。
そう心を決めた時、ナナセ様は私の肩をそっと抱いて、「大丈夫かい?」と優しく問いかけて来た。
私は嬉しくて、流れる涙を止める事が出来なかった。
私は、ナナセ様に肩を抱かれながら素材商を出ると、そこには見知ったバルガーム・パシャ殿の馬車が止まっていた。
「御三方を本邸までお送りします」と本邸の御者が告げた。
私達3人は馬車に乗り込み、ナナセ様は私の右側に座り、そっと左の手で私を抱き寄せ、右の手で私の右手を優しく握って下さった。本当に嬉しかった。
「ナナセ様、ご迷惑をおかけして、申し訳ございませんでした。」
「トーマ。トーマと呼んで。」とトーマ様が私の瞳をじっと見つめながら、そう仰った。
握った右手に力を込めながら。
「はい、トーマ様・・・」私はトーマ様の肩に頭を預けると、トーマ様は私の肩を抱く腕に力を入れて、私をギュッと抱きしめて下さった。触れられた肩が熱を持つ。
でも、これだけは話さなければ!
「トーマ様、私の命は長くありません。来月私の18歳の誕生日までに黒き森の黒竜ヴァリトラを討伐しないと、命が消えてしまう
私は私の秘密をトーマ様に語り出した。パルガム・パシャ殿以外には、決して語った事の無い秘密を。
トーマ様は私の肩をそっと優しくさすりながら、黙って話を聞いて下さっている。
「私の名はエリクシア・ファブリス。
内乱で滅んでしまった、隣国ガルキア王国の、いえ元ガルキア王国が侯爵、ガルシウス・ファブリスの長女として生を受けました。
バルガーム・パシャ殿と我がファブリス家はそれ以前からのお付き合いです。
私が12歳の秋にガルキア王国で内乱が起こりました。王位継承に端を発しての事、と父から聞いております。
内乱は2年以上続き、王族は皆殺され国は滅びました。
父は王国崩壊後も近隣の貴族達をよく纏め、ファブリス領は戦火を免れておりましたが、私が15歳の冬に、ガルキア北部の軍閥が我が故郷に攻めて来たのです。
当初こそ奇襲を受け、北部軍閥に侵攻を許しましたが、父は防衛線を敷き、これを撃退しました。
父が追撃に移ろうとした時、それが起こったのです。
父には騎士団長を務めるリブルスと言う部下がおりました。父上の家臣であり友であり、そして私の剣の師でもありました。
しかし、卑怯にもリブルスと奴の部下達が、追撃戦に出ようとする父を後ろから襲い、父を亡き者にしてしまったのです・・・。
父を失った領軍は混乱し、その混乱に乗じてリブリスは領都を急襲。私を人質に取ったリブルスは、私の命を盾に私を除いた侯爵一家を皆殺しにしました。母マルシアも、三歳年上の兄ステファンも、四歳年下の弟キリアンも。
しかし、私だけは生かされました・・・。
但し三年後の十八歳の誕生日までに黒き森の黒竜ヴァリトラを討伐しないと、死んでしまうと言う呪いを私に掛けて。
リブルスはこの邪悪な
9人の術師の命で呪いを掛け、そして強制的に私の魂を奴隷に落としたのです。
その後、領都にある秘密牢に私は幽閉されておりましたが、バルガーム・パシャ殿とその一党によって秘密牢から救出され、このセントニアに逃れて来たのです。」
私は全てをトーマ様に語り終えると、身を起こし、トーマ様の両手を握り、その漆黒の瞳を見つめなが、続けた。
「トーマ・ナナセ様。残り僅かな命ではありますが、貴方様を愛する事をお許し下さいませ。
お慕い申し上げます。心から。
この命尽きようとも。」
私は自分の思いの全てをトーマ様に伝えて終わると、トーマ様は両手で私の体を強く抱きしめ、激しい口付けを下さいました。
そして力強く誓われたのです。
「俺もエリクシアを愛してる。決してエリクシアを死なせはしない!」
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