第7話 魂のキズナ

 少女の顔つきが変わった。未だ悲しみの影を拭えるものではないが、それでもしっかり前を向こうとする意志が感じられる顔つきだ。

 まだ幼いが、強いだ。

 サーシャって言ったっけ?何歳くらいだろう?十歳位かな?身長は140㎝くらいだろうか、俺の胸元くらいの高さだ。

 真珠の輝きを持つ真っすぐな銀色の髪は短くあごのラインで切りそろえられ、長いまつ毛にブルーダイヤモンドの輝く大きな瞳には尽きない好奇心で煌めいているようだ。

 うん、メチャ美少女!

 


 「それではトーマ君、サーシャちゃんの頭に手を当てて、〔バディー〕と唱えて。間違っても〔バルス〕って言っちゃ絶対だめよ!本当だからね!ねっ!」


 ・・・そのネタ好きですが、今は勘弁してください・・・。


 俺は少女の前で膝をつき、彼女の手を取りそのブルーダイヤの瞳を見つめながら、そっと微笑み、そして右手を彼女の頭に軽く載せて唱えた。


 「〔バディー〕!」


 すると二人の体が光に包まれ、そして彼女の頭に乗せた右手を通して、俺の中から何かが大量に彼女に流れていくのが分かった。


 「んっ!」


 彼女は少し驚いて顔をしかめたが、黙って眼を閉じ自分の中に流れ込んでくるものを受け入れているようだった。


 「もう大丈夫ですよ。これで創造神様の恩恵がサーシャちゃんにも分け与えられました。これを以て、二人の魂は分かつ事の出来ない強い絆で結ばれたのです。さあ、トーマ君何か話しかけてみて。」


 女神様がそう促すので、俺は膝を折り少女の目線に合わせてから、少女の両手を取り彼女の眼を真っすぐ見ながらゆっくりと話しかけた。


 「初めまして。俺の名は七瀬冬馬。言ってる事分かるかな?」


 サーシャはその大きな瞳を更に見開き、驚いたようにつぶやいた。


 「えっ?どうして?さっきまでは何を言っているのか分からなかったのに!」


 「うっそ!俺にも君の言ってることが分かる!」


 「へへーん!当然です!二人はなのです。魂が繋がっているのです。言葉を超えて、相手に伝えたいという意思が直接相手に伝わるのですよ。

 どお、すごいでしょ?さあ、ほめて!ほめて!カモーン!」


 あー、なんかさっきまでの神々しい女神様戻ってきて~。


 「じゃもう一度自己紹介。俺の名は七瀬冬馬。冬馬と呼んでくれ。」


 「私はサーシャ。アラナ村の大戦士マシューズの娘、獣人族銀狼種のサーシャです。」


 彼女は右足を引き軽く膝を折りながら、ピンと胸を張って右手を胸に当てながらそう名乗った。

 可愛らしい仕草だ!


 「しっかりした挨拶をありがとう。そうかサーシャか、良い名前だ。よろしくな。」


 俺は微笑みながら、サーシャに右手を出して握手を求めた。


 「はい、よろしくお願いします。」


 サーシャは少しはにかみながら、俺の手を取り、俺たちは握手を交わした。


 「では、汝、七瀬冬馬よ。汝はこれより生涯に渡りこれなる娘サーシャとたづさひて、そを慈しみ、守り、育むをや神前に契りたまへん。

 汝、銀狼のサーシャよ。汝もこれより七瀬冬馬の群れの一員となりて、古の天狼の掟にまつらひ、彼の者を群れの長とし崇めまつらわんをや神前に契りたまへん。

 両名の誓いや如何に?」


 「んっ?彼女に言った意味は分からないけど、俺の方は任せてくれ。神に誓っ・・・ゲフンゲフン、創造神様に誓って必ずこのを一生涯守るよ。」


 「豊穣の地母神アフロディーテ様。私も誓います。

 古の天狼様の掟に従い、この身が森へ還るまで七瀬冬馬様の背を守り、その群れに我が全てを捧げます。」


 なんか、サーシャの頬が赤いが、気のせいか?

 女神さまはそんな俺達を微笑みながら見ると、満足そうにうなずいた。


 「よろしい、神聖な契りがここに成就されました。豊穣と慈愛の女神として二人の誓約を見届け、これを祝福します。二人の末に安寧を!

 ・・・それでは妾は天界へ帰ります。

 サーシャよ二人の狩りに実り多からんことを!

 ・・・・・・・・・・・・・・

 ねえねえ、トーマ君、今晩のお祈り期待してるわ♡」


 女神さまは手のひらを上にして、人差し指と親指で〇を作りながらそれをヒラヒラさせて、俺にだけ聞こえるようにそう囁いた。

 そして女神さまは光となり、天界へ昇って行った。

 女神さまがいなくなっても、森の中は慈愛に満ちた静寂に包まれており、女神の降臨に鳥獣たちまでも気を利かせ大人しくしているようだった。


 [功績ポイントを500ポイント獲得しました。3,600 →4,100 ポイント]


 [功績ポイントが合計4,100 ポイントになりました。1等陸士に昇級出来ます。昇級しますか?]


 なんで今なの?

 功績ポイントの神様基準がイマイチ不明だが、まっいいか。

 それよりも大事なことが有る!


 「ベルちゃん!昇級お願いしまっす!」


 [七瀬冬馬は1等陸士に昇級しました。昇級した事により次の装備が使用可能となりました。

 『4.6mm短機関銃(B)MP7』

 『*40連マガジン×4』

 『84mm無反動砲(B)』

 『*84mm各弾薬×1』

 『高機動車』

 以上です。功績ポイント:4,100 →400 ポイント]


 追加装備、キター!MP7にカール君とコーキって、オラワクワクすっぞー!

 それはともかく、午後もだいぶ時間が経ったので、俺はサーシャに尋ねた。


 「さて、それではサーシャちゃん、お腹すいてない?何か食べよっか。」


 「私の事はサーシャとお呼び捨てください、使徒様。」


 サーシャは跪き両手を胸にクロスさせて、首を垂れながらそう言った。


 「待って、待って。俺たちはバディー、パートナーなんだからそんなに畏まらないで!俺の事は冬馬って呼んで。いい?冬馬だよ!」


 「でも・・・。」


 「デモもへったくれもナシ!トーマ!はい呼んで!」


 「で、ではトーマ様・・・。」


 サーシャはモジモジしながらやっと俺をトーマと呼んでくれた。様は余計なんだけど、まあそれは追々と行きますか。


 「それじゃあサーシャ、食事にしよう。」

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