第91話 FMS

 ミシェルの居室で、俺達は遅めの朝食を取ることにした。

 お嫁ちゃんずは、みなキャピキャピ配膳を手伝ったりして、とても仲が良い。

 みんな素敵な笑顔を浮かべている。この笑顔を守らなくちゃな。


 みんなが席に着いくと、ベルちゃんがテーブルに立って言った。


 「突然だけど、マスター。結婚のご祝儀で昇進しました。」


 「えっ?何それ?」


 「ですから、昨日の婚礼の儀の最中、神々からの盛大な祝福を貰った際、【ワンマンアーミー】がマスターの階級を一つ昇級させたんですよ。

 だからご祝儀ですね。

 せっかく感動の儀式の最中だったので、システムコールは止めときました。」


 ベルちゃんは、出来るOLのコスプレで、ワザとらしく眼鏡をクイクイと持ち上げながら説明している。


 「やはり一度に六人ものお嫁さんを貰ったことが評価されたのですかね?

 今度は十人くらい一遍にどうですか?将官クラスに昇級できるかもですよ!」


 いや、そんなの体がもたんし!


 「理由は何にせよ、これでマスターは一等陸佐に昇級し、連隊長となりました。

 それに伴い、新規装備としてV-22オスプレイが利用可能となりました。

 一機6,650万ドルもする機体ですから、大事に使ってくださいね。」


 「お、おう・・・。」


 ええと、1ドル115円だと・・・えっ、約76億円!

 でもF-35Aのロット11が、一機8,000万ドル弱だって話だから、それに比べたら安いのか?


 「比較の対象が間違ってますよ、マスター。」


 「おりょ?声が出てたか?」


 「ダダ洩れでしたね。

 それよりも、大事なことが有ります。

 一等陸佐に昇進したことにより、航空自衛隊装備による航空支援が可能となりました。」


 「おお!航空支援は歩兵の友だな!」


 「それ以上に重要な事があります。

 日米安保条約に基づいた米国FMS(Foreign Military Sales)プログラムによって、米軍装備の購入が可能になりました。

 例えば、現実では、F-22は米国議会でFMSが未承認なのですが、この世界では【ワンマンアーミー】によってF-22の購入も可能です。べらぼうな金額になりますが・・・。」


 「えっ!え―――!じゃ、A-10 買える?」


 「可能です。」


 「じゃあさ、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦買える?」


 「可能です。天文学的な金額になりますが。」


 「シーウルフ級原子力潜水艦は?」


 「理論上は可能です。その購入金額を賄う方法が思いつきませんが。」


 「ごくり!LGM-118Aピースキーパーはどや?」


 「ICBMで一体どこと戦争する気か分かりませんが、システム上論理的には可能です。それを実現する為の手段が見当たりませんが。」


 ま、米軍の装備に関してあんまり知識がないから、いっか。しかしFMSか、えらい事になったな・・・。


 「新しい機能については、おいおい使って見ようか。

 それより、ご飯にしよう!ミシェルが待ち切れなさそうだからね。

 いただきます!」

 

 『いただきます!』


 ゆっくり食事をいただいて、食後のお茶をしている中、おれはみんなに告げた。


 「さて、アフロディーテが今日天界に戻るそうだから、アフロディーテが天界に戻ったら俺達は出発の準備を整えて、明日にはここを立とうと思うんだ。」


 「畏まりました。旦那様♡」


 「それでは私はミシェル様のお手伝いをしますね。」


 サーシャが手伝いを申し出てくれた。やさしい娘だよな。


 「それで、俺達はどこに向かったらいいか、みんなの意見を聞かせて欲しいんだ。」


 「トーマ様♡ 今最も警戒しなければならないのが、ローリーの街で襲撃を企んだ者共です。」


 オリヴィエが要点を指摘する。


 「あいつらに関しては、ミシェルのヒントでアクティブ警戒プログラムを作ったの!半径500メートル以内だったら大丈夫!探知できるわ!」


 おお、ベルちゃんナイス!


 「そうなると、対処方法ですね・・・。

 できる限り遠距離で探知して、ロングレンジで倒したいところですね。」


 エリクシアが妥当な戦術を提案した。


 「はい、は~い!クロシェットとミシェルに狙撃班任せてなの!」


 クロシェットが両手を振ってアピールした。いつの間に仲が良くなったんだ、この二人?


 「スナイパーとして、クロシェットとミシェルの適正はどう思う?ベルちゃん?」


 「クロシェットなら大丈夫ですよ。マスター。

 それ以上にミシェルの才能は驚く程スナイパー向きです。

 肉眼視ではありませんが、魔力によるアクティブ探知能力は脅威です!

 魔力波で壁などの遮蔽物も透過して探知できますので、対物ライフルを持たせるのが宜しいでしょう。

 早速FMSでバレット M107を購入したら如何ですか?マスター?」


 「対物ライフルか。へカートIIしか知らないんだけど、M107ってどうなの?いくらくらいするんだ?それ?」


 「.50 BMG弾を使用する対物ライフルです。一般人だったオーナーの趣味で作られた、一風変わった誕生秘話をもつ銃ですが、性能はピカイチです。

 各種弾丸込みで2万ドル。白金貨三枚です。」


 2万ドルで白金貨三枚。ぬぬぬっ、換金率悪くないか?


 「よし、ベルちゃん買って頂戴。」


 「はい。マスター。」

 「あなた。ありがとうございます。」


 「うん。ミシェル。良く練習して、使いこなしてくれ。」


 ベルちゃんが、早速M107を購入してミシェルに渡していた。

 でかいな!


 「それで、クロシェットの装備はどうするの?」


 「基本、クロシェットにはミシェルの観測手をやってもらいますが、狙撃用にレミントンM24SWSを装備してもらいます。」


 ベルちゃんはM24を取り出して、クロシェットに渡した。


 「えへへ、お姉ちゃんありがとなの!」


 「それで、ロングレンジでの対策はミシェルとクロシェットに任せるとして、俺達の次の目的地はどうする?」


 「あなた。パハジ高地にある天聖宮を陸路で出るには、この渓谷に沿って南下するしか道はありません。

 するとこの渓谷の出入口に位置する街がフォール・ド・アルマナになります。

 フォール・ド・アルマナは連合王国との国境にある街ローリーと首都クールデヴォワを結ぶドミティア街道 の中継の街になります。」


 そうミシェルが説明してくれた。


 「でも、その道は当然奴らに監視されてると思った方がよろしいでしょうね。」


 エリクシアが美しい眉をひそめながら付け加えた。


 「それでしたら、クラウディア街道かオスティアナ街道の街を通って、首都クールデヴォワを目指すのはどうかしら?

 遠回りになってしまうけど。」


 とオリヴィエが提案した。さすがオリヴィエだ。他国の地理にも詳しいんだな。


 「それならば、クールデヴォワの北にあるオスティアナ街道の街ヴァランスを目指すのは如何でしょうか?

 首都クールデヴォワから一番近い街となりますし、規模も大きいので状況確認と情報収集にはもってこいかと。」


 ミシェルがそう提案した。

 その間俺達は、不慣れな地名だったので、スキルのマップを見ながら議論を聞いていた。


 「よし!それじゃヴァランスの街を目指すとしよう。

 せっかくだから、今回はV-22オスプレイで行ってみようか?

 出発は明朝0900でどうかな?」


 「はい、畏まりました。」


 全員頷いてくれた。


 「それじゃ、ダーリン♡ とても名残惜しいけど、天界に戻るわね。

 また今度会う時には、またたっぷり可愛がってね♡」


 そう言って、アフロディーテは濃厚なキスを求めてきた。


 「それからお嫁さんのみんな。今回の敵は、私達神の目を欺くことが出来る強敵です。

 古くから神々と敵対してきた敵であることを肝に銘じなさい。」


 『はい』みなが緊張しながら答えた。


 「いいこと?万が一の時は、ありったけの魔力を貴方たちの指輪に込めなさい。セレナちゃんはまだ指輪が無いから、その時は星のネックレスに魔力を込めるのよ。

 きっとあなた達の身を守ってくれることでしょう。

 では、また近いうちにお茶しましょうね。」


 そう言ってアフロディーテは天界に戻って行った。

 そういえば、最近ファミマスイーツねだられてないな・・・


 「ダーリン!今晩にでも美味しいお菓子ちょうだい♡」


 あっ、しっかり心の中盗聴されてましたか・・・。


 「さっ、それじゃみんな準備しようか!」

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