第35話 コロニー強襲

 黒き森に足を踏み入れて、四日になる。

 森に入った当初は、偵察用オートバイKLX250に乗って移動したが、それも半日だけの事で、それ以降は木々の間隔が狭くなり、大きな木の根が走行の邪魔をするので、俺達は徒歩に切り替えて前進した。


 森の奥に進むにつれて、魔獣のエンカウントする頻度が増えてきたが、逃げる魔獣はあえてそのまま逃がしてやった。だが、ビッグボアお前は別だ!お前の肉は俺達が頂戴する!

 ビックボアを発見すると、「キャー、肉ですー!」と言って、サーシャが瞬殺してくれたよ。


 また、野営するにあたってベルちゃんが素晴らしい提案をしてくれたんだ。


―・―・―


 「マスターが毎回寝るとき高機動車を取り出すのは、ベルには理解ができない何かこだわりでもあるのですか?」


 「えっ、だって倉庫に入っている装備の中に野営装備ってないじゃない!だから、みんなでかろうじて寝れる高機動車を寝室代わりに使ってるんだけど?」


 「なら宿営用天幕シュクテンを出しましょうか?」


 「えっ?テント出してくれるの?でも倉庫のリストに無いよ?」


 「はい、もちろん倉庫の装備リストにはありせんが、階級の権限内でしたら、リストに載っていない自衛隊の装備が使用可能ですよ。まあ、隠しコマンドみたいなものですけどね。」


 「なにそれー!」


―・―・―


 そんな事が有ってから、夜は高機動車に代わってシュクテンのテンちゃんを俺達の寝床として利用している。

 六人用のテントに三人で寝るのだから、十分な広さである。15㎝サイズのヤツは員数にカウントしない。

 それでコー〇マンのエアマットをもう一つ購入した。二つ連結して大きなベッドを作って、三人で仲良く川の字になって寝ているのだ。

 非常に快適なんだよ!

 うん、俺の腕枕で寝てるエリクシアの体が柔らかくて・・・素晴らしく快適だ。


◇◇◇◇◇


  黒き森に入って四日目の昼過ぎ、ベルちゃんの警告で俺達はに気づいた。


 「マスター、前方にオークのコロニーを発見しました。前方十時の方角。距離460メートル。コロニーの規模は合計二百十四。内訳は、オーク百三十一、アーチャー二十六、ナイト四十、メイジ十二、ジェネラル四、そしてキング一です。」


 「オークのコロニーだって?うーん、面倒な気がするが、どうしよう?」サーシャとエリクシアに尋ねた。


 「トーマ様。オークは女性の敵です!異種族の女性を拉致しては、その女性を苗床にして繁殖します。ですから、この規模のコロニーとなると、かなりの数の女性が捕まったと思うのですが、苗床にされた女性は皆精神に異常を来たして、ただ食事を取って排泄して、オークの子を産むだけの存在になってしまうそうです。ですから・・」


 「分かった!このコロニーは壊滅させる!」エリクシアの悲痛な訴えを聞いて、俺は決断した。


 「それに、オークのお肉は美味しいのです。」サーシャがボソッと呟く。分ったから、君の為にもたくさん狩るから・・・。


 「夜間だったら、個人用暗視装置JGVS-V8を使って、遠距離から一方的に殲滅できるのだが、まだ日が高いからな・・・。うーん、この戦力でも問題ないが・・。特科の火力支援が欲しいとこだな。  

 どうなのベルちゃん。特科の火力支援って何とかなんないかな?」


 「マスターの現在の職位では無理です。分隊長から火力支援要請が可能となります。更に上位の職位では、航空支援も要請が可能となります。」なんと特科に空自の支援もあるのか・・・いずれではあるが。


 「よし、じゃ今回は派手に、持てる火力で殲滅戦と行きますか!」と俺は決断したのだが、問題が一つ残っている・・・。


 「サーシャ・・・・・。」俺はサーシャの両肩に手を置き、瞳を真っすぐに見つめてサーシャを説得した。説得の賜物か、サーシャは目をウルウルさせながら、黙って首を縦に振って同意してくれた。


 「只今を以て本作戦名をブリティッシュ作戦と呼称する!」俺は高らかに宣言した!


◇◇◇◇◇


 ブリティッシュ作戦の作戦要綱を説明した後、俺達は三方向に分かれてコロニーを取り囲むように前進した。オーク達に気取られぬよう慎重に行動し、それぞれ所定の配置に移動した。


 「ランサー配置に着きました」エリクシアが配置に着いた。


 「セイバー配置に着きました」サーシャが配置に着いた。


 「アサシンから各サーバントへ、状況開始!」と俺の命令で一斉に攻撃が開始された。


 「ポン、ポン、ポン、ポン、ポン・・・・・」


 先制はベレッタGLX160によるグレネード弾の攻撃だ。各自GLX160の40x46mmグレネード弾を四発ずつ、合計十二発斉射した。

 そう、今回はサーシャにお願いしてサーシャのメインアームをFN P90キューちゃんではなく、俺達と同じ20式に持ち替えてもらったのだ。サーシャのアイデンティティともいえるP90キューちゃんを手放させてしまったのだ・・・。許せ、サーシャよ。


 オークのコロニーに突然爆炎が上がった!

 コロニーのあちこちが爆発する中、オーク達は慌てて木や枝を立て掛けただけの粗末な巣から飛び出して来た。


 俺は20式を脇に置いて、俺はソイツを手に取り、伏せ撃ちの姿勢を取って、コッキングハンドルを引き、ガンサイトを覗きこんだ。

 そう、今回はこの5.56mm機関銃MNIMIが主役だ!


 「ダダダダダダダダ・・・・・・!」

 「ダダダダダダダダ・・・・・・!」

 「ダダダダダダダダ・・・・・・!」


 俺の射撃に合わせて、三方向からの十字砲火がコロニーを襲う!


 ナイトが四匹突進して来る。それを一斉射でなぎ倒した。


 アーチャーが矢を番えているが、サーシャの斉射によって沈黙した。


 メイジが呪文を唱えているが、エリクシアの斉射で血だるまになった。


 「グガ―――!」


 咆哮を上げながら、キングがジェネラル二匹を従えて突進して来る。が、俺達三人の十字砲火で、瞬く間にハチの巣となり、自らの血溜りに沈んだ。


 「状況確認!」俺が命令すると、「ランサー、クリア!」「セイバー、クリア!」と返答が帰って来た。


 「よし!状況終了!」俺はその場に立ち上がって、二人に攻撃終了を命令した。


 「現時刻を以て、ブリティッシュ作戦ファーストフェーズを終了。続けてセカンドフェーズへと移行する!各員励め!」


 俺はMINIMIを倉庫に収納し、20式を装備してコロニーに入って行った。セカンドフェーズ。そうオークの回収作業だよ!これが地味に大変なんだ・・・・。


 サーシャが「オニク〜ニクニク〜♪」とご機嫌な歌を歌いながら、俺達の三倍の早さでオークを回収している。ヤルナ、サーシャ!


 俺達は、オークだった物を回収している際、人間の女達の遺体を発見した。どれも見るに堪えないひどい状態だった。


 オークの回収作業が済んでから、俺は女性の遺体の有った小屋に焼夷手榴弾を放り込んで、遺体を焼いてあげた。これしかできなくてすまん。

 

 [オークのコロニーを壊滅させました。功績ポイントを5,883ポイント獲得しました。功績ポイント:4,024 →9,907 ]


 [功績ポイントが合計9,907 ポイントになりました。2等陸曹

に昇級出来ます。昇級しますか?]

 

 「昇級、お願いいたします!」俺は二人と集合しながら、昇級をお願いした。

 

 [七瀬冬馬は2等陸曹に昇級しました。昇級した事により次の装備が使用可能となりました。

 『12.7mm重機関銃M2キャリバー50

 『軽装甲機動車LAV

以上です。功績ポイント:9,907 →3,007 ポイント]


 「続けて、サーシャとエリクシアを3等陸曹に任官します!お願いします!」俺は続けて二人の昇級をお願いした。


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『組長』の権限に於いて、バディー名サーシャを3等陸曹に任官しました。バディー名サーシャは3等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。それに伴い、倉庫の使用権を組長から付与されました。また、看護師の技能を取得しました。]


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『組長』の権限に於いて、バディー名エリクシアを3等陸曹に任官しました。バディー名エリクシアは3等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。それに伴い、倉庫の使用権を組長から付与されました。また、看護師の技能を取得しました。]


 俺はどうも人型のオークの肉に抵抗があるけど、サーシャが満足なら、それで十分だ。

 これでしばらくウチの肉担当が困る事はないだろ。まさか、肉担当が増えたりしないよね?ね??

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