第13話 紳士の誓い?

 食事が終わったら、水浴びタイムだ。

 俺はコーキの後部ドアから外に出て、たらいとすのこを倉庫から出して並べて水浴の用意を整えた。たらいの両脇にはケミライトを1つずつ置いて明かりを取った。

 そして、すのこの上に手桶とシャンプーとボディーソープ、それから俺のお風呂セットから体を洗うスポンジ出してすのこに置いた。大きめのバスタオルは、高機動車の後部ドアの所に置いてあげた。

 そして俺は水筒から水をジョボジョボたらいにあけたのだが、サーシャは明らかにおかしな水の量に俺の水筒を不思議そうに眺めた。


 たらいに水がいっぱいになると、「じゃ、俺は反対側で哨戒するから」といって、20式小銃を手に高機動車のフロント側に回った。サーシャは困ったように俺を眺めていた。

 だが、の俺はサーシャに背を向けて、高機動車のフロントボンネットに腰を下ろして哨戒に当たった。

 ベルちゃんが哨戒してくれているので、本来必要ないのだが、俺はサーシャの信頼を裏切るわけにはいかない!断じてだ!

 ましてやサーシャの柔肌を覗き見ようとするヤツには死の鉄槌を!この5.56mmNATO弾をそいつの額にぶち込んでやる!慈悲はナイ!

 俺はサーシャの柔肌を覗き見るカス共をどの様に屠ってやるかとシミュレートしていると、俺の太腿のあたりをサーシャがツンツン引っ張って言った。


 「あの~、トーマ様。これの使い方が分かりません。ご迷惑でなければ洗ってもらえませんか?」


 〇ブの白いポンプボトルを両腕に抱えて、サーシャが小首を傾げている。

 カーッ!何この可愛い生き物っ!

 俺はグラグラと今にも崩壊しそうな俺の理性を必死に立て直しながらサーシャに答えた。


 「ふぃっ!いいよ。」いいのかよ、俺!


 にっこり天使の微笑みを浮かべながら、サーシャは俺の手を取って水浴び場へ戻った。


 サーシャはコンバットブーツを脱いで、すのこの上に立って装備を脱ぎ始めた。

 雪の様に白く美しい肌。細くて長い四肢は、未だ子供のそれであるが、柔らかく膨らみ始めた双丘は少女が女性に変わりつつあることを物語っていた。

 なだらかな双丘の頂にある薄桃色の、ゲフンゲフン。これ以上見てはいかん!


 「それじゃ、たらいの前に膝をついて、前かがみになってくれるかな?頭から先に洗うから。」


 「はい!」


 サーシャは嬉しそうに元気な返事をすると、たらいの前に両膝を付き前かがみの姿勢を取った。

 サーシャの白いうなじや細い背中がまぶしすぎる!これが若さというものかっ!


 俺は片手桶で水を汲み、左手をサーシャの眉のあたりに添えて水除を作り、サーシャの目に水が入らないように気を付けながら頭に水をかけて髪を濡らした。耳をどうしようか迷ったが、サーシャが自分の両手で耳を押さえて、耳の穴に水が入らないようにしてくれた。その仕草もいと可愛い!


 「っヒィ」


 頭に水をかけると、サーシャが息を飲んだ。


 「水、冷たかったかい?」


 「少しだけ。でも大丈夫です。気持ちいいです!」


 「そっか。」


 俺はシャンプーの出し方をサーシャに分かるようにポンピングして手に取り、両手でよく泡立てた。


 「シャンプーはこうしてよく泡立ててから髪につけるんだよ。」


 俺はサーシャの耳に泡が入らないように気を付けながら、髪を泡立てていった。

 油分で泡立ちがあまり良くなかったので、俺はいったんシャンプーを水で流し、もう一度シャンプーを手に取り泡立ててから、サーシャの髪を再び泡立てていった。

 サーシャの小さな頭を爪で傷付けない様に指先の腹で軽くマッサージしてあげる。前世で入院していたころ、看護師のお姉さんに直伝してもらったテクニックだ!

 あのお姉さん「彼氏が出来たら、髪を洗ってあげたいから練習してるの~♡」って言ってたけど、彼氏出来たのだろうか・・・。


 「どこか痒いところはありませんかー?」


 俺はシャンプーの師匠から教わったお決まりだというセリフをサーシャに尋ねた。シャンプーの儀式みたいなものだそうだ。


 「はい、大丈夫です。トーマ様はとってもお上手なのですね!頭がマッサージされてすごく気持ちいいです!」


 俺はサーシャの目と耳に水が入らぬように、慎重に手桶の水でシャンプーを洗い流した。再びサーシャの両手で耳パッタンのサポート付きで。サーシャの耳パッタン、何度見てもカワエエ~。

 

 「よし、次は体を洗うね。本当は女の子の体はスポンジで洗わない方がいいって看護師さんが言ってたんだけど、どうしよ。」


 「トーマ様、よろしかったら手でお願いします。」


 頬を赤く染めながらサーシャはそう言った。

 ヱ、ナントオッシャイマシタ?・・・えーい、ままよ!

 俺は覚悟を決めて、サーシャの体に片手桶で水をかけ全身を濡らした。


 「キャッ!」


 サーシャは軽く悲鳴を上げながらも笑って体をよじらせていた。

 ああ、とうとい・・・。


 いと尊きそのお背中に触れようとする俺の手が震えていた・・・。

 俺はダ〇のボディソープを手で泡立てる事で気を静め、その泡をサーシャの背中に塗っていった。

 サーシャの小さな背中はとても滑らかで、きっと美術館の大理石の彫像もこんな感じなんだろうか?

 俺はサーシャの背中と両の手を俺の手で洗ってあげた。


 「後は自分で前の方とか洗えるよね?」


 俺はサーシャにそういうと、サーシャは顔を真っ赤にしながら俺に向かって体をずらし、両手を広げてこう言った。


 「トーマ様、前も洗ってください・・・。」


 あまりもの衝撃に、俺はノックアウトされてしまった。一発KOだ!

 これまで俺の中で理想としてたグラマラスな女性たちが、アハハと笑いながらさよならしていったさ・・・。

 震える手で、俺はサーシャの全身を洗ってあげたのであった。


 サーシャは、瞳を伏せて真っ赤な顔を俯かせながら、少し震えていたが、体に泡を伸ばしていくにつれて、柔らかな微笑みを浮かべながらリラックスしていった。


 すまん偉大なる紳士同盟の諸兄方。俺は触らずの誓いを破ってしまった・・・。セ、セーフだよね・・・?

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