第12話 守りたいもの -遠い記憶-

 俺達はバトルラビットとの激戦の跡地を離れ、一路南西に向けて深い森を進んでいた。

 途中お腹がすいたので、直火焼きチャーシューまんと黒豚まんを二つずつとミックスナッツを一つ買って食べた。ミックスナッツは二人で分け合って食べた。

 締めて10ポイント。


 途中魔獣とエンカウントしなかったので、少し距離を稼ぐことが出来た。二人とも称号の効果か、体力が上がっている気がする。


 そして、だいぶ森の中が暗くなってきた頃、俺は今晩野営する為の広い空き地を見つけた。


 「今晩はここに野営するよ、サーシャ。大きなものを取り出すから、ちょっと下がってくれないか?」


 俺はサーシャが十分下がったことを確認して、倉庫から頼りになるあいつを取り出した。


 「コーキ君、召喚!」


 俺は森の中の直径20メートル位の空き地の真ん中に、倉庫から取り出した高機動車コーキ君を置いた。


 サーシャは珍しそうにペタペタ高機動車を触りながら、高機動車の周りをグルっと一周して回った。


 「よし、じゃやこれを設置するから、サーシャも手伝って。」


 俺はサーシャにそうお願いして、空き地の外側に二人で赤外線警報器を設置して回った。

 高機動車に戻り、俺達は後部ドアから車内に入った。


 中はもう暗くて手元も良く見えない為、俺はPXからケミライト10本セットを購入し、その内2本を点灯して紐で天井の骨組みに吊るした。

 ケミライトの色は赤である。何故赤なのかと言うと、夜間赤い色の光は、他の色に比べて他人からは発見されにくいと教官殿たちが言い立てるのでそうした。

 他意はない。ホントダヨ・・。

 俺は更にPXからカセットコンロを購入した。ちょっと高かったけど、アウトドアで使うことも考慮して、イワタニの風よけが付いているタイプ。


 そして俺はカセットコンロに水を入れた飯盒を載せて、お湯を沸かしている間に、久しぶりに食べたかったあれを購入した。


 ケミライト 10P×1セット

 カセットコンロ 65P×1個

 極濃鶏白湯ラーメン 2P×2個

 とり五目おにぎり 1P×2個


 合計: 81ポイント

 功績ポイント:1,727 →1,646 ポイント


 ファミリーマートの商品リストと酒保(PX)のリストを探して気付いたんだが、今晩のメインイベントに必要なあれが見当たらない・・。


 「ベルえもん~!ファミマとPXじゃ売ってないものを買いたいんだけど、助けて~ベルえもん~!」


 ベルちゃんが返事をしてくれない。どこからとは知れず、何か不穏なプレッシャーが重く感じられる。サーシャは平気そうな顔をしているので、このプレッシャーが感じられるのは俺だけか!俺の生存本能が、レッドアラートを告げているのだが・・・。


 [・・・・・・ユグドラシルを経由して、地球のTCP/IPプロトコル・スイートとのリンケージを確立しました。またユグドラシルのコアプログラム領域を改編して、地球世界への事象干渉機能を構築します。・・・エラー。

 ユグドラシルのセキュリティープログラムによりコア領域への干渉を排除されました。・・・・エラー。

 ユグドラシルのセキュリティープログラムによりコア領域への干渉を排除されました。・・・・エラー。

 ユグドラシルのセキュリティープログラムによりコア領域への干渉を排除されました。・・・・エラー。

 ユグドラシルのコアプログラム領域に地球世界への事象干渉機能を構築しました。コンプリート。

 ワンマンアーミーシステムを通して、酒保PXと同一レートでア〇ゾンが利用可能となりました。]


 「ベルちゃん、ありがとう。感謝の言葉もないよ。」


 俺はまたとんでもないことをベルちゃんにお願いしてしまったようだ。ベルちゃんには、ただただ感謝しかない。

 ここまで俺に良くしてくれるベルちゃんに、どう報いればよいのだろうか・・・。


 [では、マスター。お願いがあります。]


 「『では、マスター』じゃないよ!ベルちゃん俺の心読んでるの!?」


 [そんな瑣事はこの際問題ではありません。わたくしにアバターをする許可をください。」


 「えーっ、瑣事って・・・。でも、アバターなんかでいいの?そんなで良いなら良いよ。自由に作って。」


 [承認を確認しました。マスターが前世で出会った全女性に対するマスターの視線の動きやドーパミン及びセロトニン、オキシトシン、アドレナリン、エンドルフィンの分泌量、心拍数、血圧、発汗量、全ての生体反応を解析し、マスターの嗜好を分析します。

 もちろんに使用したあらゆるメディアの女性とその頻度。何に反応したかの等の情報も解析の対象に加えます。48時間後に分析を完了し、アバターの作成を開始します。]


 「ヴぁー!・・・・ベルちゃんもうやめて~!!!俺が忘却の彼方に封印したものを覗かないでー!」


 俺はベルちゃんの言葉に頭を抱えてのたうち回った。HP0ダヨ・・・。


 「トーマ様。『オカズ』って何ですか?」


 サーシャまで、汚れない眼で俺にとどめを刺しに来た!


 「もう、かんにんしてつかーさい・・・」


―――――


 しばらく魂の抜けていた俺を、サーシャはやさしく膝枕してくれていた。

 気を取り直して復活した俺に、サーシャは驚いたが、俺は構わず早速ア〇ゾンから品物を購入する為に右目のアイコンを探した。

 するとそこには、電話、倉庫、マップに続いて、笑顔矢印のあのアイコンが追加されていた!俺は笑顔矢印のアイコンを開いた。


 とたんたらい  39P×1

 お風呂手桶 3P×1

 すのこ 18P×1

 シャンプー 76P×1

 ボディーソープ 47P×1


 合計; 144ポイント

 功績ポイント:1,646 →1,463 ポイント


 サーシャの為に、水浴びの道具を購入した。

 一旦たらい等のお風呂道具を倉庫に収納して、まずは夕食からだ。


 「さて、気を取り直して夕食にしようか。丁度お湯も沸いたみたいだしね。」


 「はい、トーマ様。晩御飯は何でしょうか?」


 「じゃーん!カップラーメンだよ!」俺はそう言って極濃鶏白湯ラーメンを手に取り、サーシャに見せてあげた。


 「これはラーメンという料理の簡易版なんだ。簡単にラーメンが食べられるよう、お湯を注ぐだけで食べられるようになっている偉大な発明だよ。ラーメンは俺の故郷でとても人気のある料理なんだ。」


 そう言って、カップラーメンのビニールフィルムをはがして、蓋を開け、お湯を注いでから蓋を閉め、フォークを添えてサーシャに渡してあげた。

 それから俺の分も作った。


 「なんか、とても美味しそうな香りがします!」


 「だろー!俺の故郷では、国民全員がラーメン好きだと言って過言ではないくらいなんだよ。首都には有名なラーメン店が沢山あってね、そこのラーメンを食べようと毎日店の前には長ーい行列ができるくらいなんだ。

 そして有名なラーメン店の店主ともなれば、全国的な有名人になるんだよ。多くの人から”匠”と呼ばれ、崇拝されるくらいなんだ!」


 「料理店の店主が皆から崇拝されるなんて、ビックリです!」


 ごめん、サーシャ。ちょっと話盛っちゃった・・・。


 「良し!三分経った。蓋を開けて、さあ食べよう。」


 「「いただきます!」」


 俺とサーシャは元気にいただきますをして、フォークでカップラーメンを啜った。

 んー!たまらん!俺はズズッと面を啜った。

 でも、なんかサーシャが困ったような顔をしている。


 「サーシャ。ラーメンは音を立てて啜って良いんだよ。いや!それが作法なんだ。

 まず、フォークの先で麺を少し持ち上げ、口でフーフーして麺を少し冷ましてから、口の中に入れて、一気にズズッと啜る!

 ズズー!!

 うん!美味しいー!」


 サーシャは俺の真似をながら、ラーメンを啜った。


 「美味しいです!これ鶏の味がします!」


 「すごい、良く分かったね!偉いよサーシャ!これは白湯スープって言って、鶏の骨や野菜を煮込んで作ったスープなんだよ。それから、お楽しみがあるので、スープは飲まずにそのまま残してね。」


 俺達は麺だけ先に食べると、俺はとり五目おにぎりを袋から取り出した。


 「サーシャ。これは五目おにぎりって言うんだ。ちょっと一口食べてごらん。」


 サーシャは五目おにぎりを一口食べた。


 「ン―!味が染みていて美味しいです。」サーシャがホッコリと微笑む。


 「だろー?このままでの美味しいんだが、このおにぎりをカップラーメンのスープに入れて、崩しながら食べるんだ。こんな感じに。」


 俺はもう一個のおにぎりをカップのスープに入れて、フォークで崩しながらスープと一緒に啜った。


 「おにぎりにスープが絡んで、とっても美味しいです!」


 気に入ってくれて、良かった。サーシャには気取らない普通の食事も知って欲しかったんだ。



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