ひとりぼっちの戦争 〜異世界転生したけど、もらったチートは自衛隊だった

ろにい

1章 旅の始まり

第1話 プロローグ


  気が付いたら真っ暗な空間に浮かんでいた。

 ・・・どういうわけか手足や体の感覚がない・・・


 「どうやら目醒めたようじゃのう。」


 どこからか圧倒されるほど威厳のある声が響いて来た。


 「七瀬冬馬よ。長きにわたる辛く苦しい闘病人生、よく最後まで生き抜いたのう。天晴れであった!」


 え?それじゃ俺は!


 「そうじゃ、お主は己が命を全うし、これから輪廻の理りに還るところじゃ。」


 何ですとー!?


 「お主の肉体は既に土に還り、魂だけがこうしてここにおる。」


 そうか。苦しい事ばかりの人生だったけど、終わったのか・・・。

 10代になってすぐに難病にかかって入院。以来20年以上にわたり闘病生活を続けて来た。

 次第に朽ちて行く自分の身体を見るのは悲しかったけど、いつも優しく看病してくれた両親にはただただ感謝しかなかった。

 父さん、母さん、ごめんなさい。もらうばかりの人生で、何も返す事が出来なかったよ・・・。


 「そこでじゃ。本来ならお主はこのまま一切を忘却し、輪廻の渦に還らねばならぬのじゃがな。

 どうじゃ、このまま別の世界に転生して、新たなる人生を送って見る気はないかね?

 血湧き肉躍る剣と魔法の世界じゃぞ!」


えーっ!どゆことー!?


 「なに、簡単な事よ。重い病気に罹りながらも、毎日健気に明るく前向きに生き抜いたお主へのちょっとしたご褒美じゃよ。」


 そっか、ご褒美か・・・。


「どうじゃ?転生する気はないかのう?」


 します!行きます!!転生させて下さいー!!!


 「ほっほっほっ。そうか、そうか。転生してくれるか。

 では、お主はあちらの世界でどんなふうに生きたいのかのう?」


 俺はなにより父さんの様な、強い男になりたいです!

 あと、出来るならちょっと冒険がして見たいです。

 動かなくなった身体では、病院の窓から見える遠い山並みを、ただ眺める事しか出来ませんでした。なのでそこを走ったり探検したりするのを夢想してたんです。

 だから元気な身体になったら、色んな景色を見て冒険したいんです!


 「そうか、そうか、良くわかった。」


 「それではお主の望む様な人生が送れるよう、あちらの世界に別の体を用意してやろう。何せお主の体は既に土に還っておるのでのう。

 お主の元の体の情報から、新たに健康な身体を用意してやろう。

 あと、少しばかりワシからの贈り物も付けてのう。ほっほっほっ。」


 神様、ありがとうございます。


 「ほう、ワシのことを神とな?」


 こんな事出来るの、神様ぐらいでしょう?


 「ほっほっほっ。ただの越後屋の隠k」


 いや、いいから!古いし!


 「ごほんっ!では、七瀬冬馬よ!お主の新しき人生に幸多からんことを!」


 そしてまた俺は意識を失った。


◇◇◇◇◇


 「創造神様。よろしかったのですか?あの様に強力な力をお与えになられて?」


 「地母神アフロディーテよ、良いのじゃ。ワシはあの者が気に入っておるのでのう。

 ・・・あ奴は己が死に至る病であると知りながら、それでも腐る事なくひたむきに生き抜いた。最後の瞬間までのぅ。

 あまつさえ、病院で親を思い不安に泣く子らには優しく声をかけ、長い入院で気のふさいでいる老人達には明るく声をかけておった。本来なら、己が一番苦しいというのにのう。」


 「まあ、なんと善良な・・・。」


 「あ奴が命を終えた時、あ奴の人生でついぞ友垣なぞ作る事なぞ出来んかったが、あ奴の葬儀にはそんなあ奴に励まされた多くの者らが長い列を成し、あ奴を偲んでおった。

 あ奴を亡くした両親にとって、それがどんなに大きな慰めになった事か。」


 「そうでしたか。」


 「だからのう、アフロディーテよ。ワシはあ奴に今度は幸せに生きて欲しいのじゃ、その善き魂のままでのう。」


 「それでは妾からも加護を授けましょう。彼の者に良き巡り合いがもたらされんように・・・」


――――――


 「そういえば彼の者の父親は確か軍人でしたね。だから創造神様はあの様な力をお与えになったのですね・・・。

 それでは妾も彼の者の為に少し用意してあげましょう・・・。」


◇◇◇◇◇


 永遠に続くかと思われるた落下の果てに、咽せるような青臭い匂いで俺は目醒めた。

 それは草や木の濃い匂いで、そこは見渡す限り暗く深い森の中だった。太古の森という名が相応しい森だった。

 大人が数人がかりで抱えても手が届きそうもない巨木がひしめき合って生えており、根元その幹にまでぎっしりと苔が生えていた。苔には所々小さくて白い質素な花が咲いていた。


 鬱蒼とした巨木の森ではあったが、冒しがたい畏敬の念を感じる様な、凛とした神聖な気配さえ漂っていた。


 「シシ神様が出て来そうだな。」


 [ユニークスキル【ワンマンアーミー】を獲得しました。所属国を選択してください]


 突然頭の中に抑揚のない冷たく機械的な女の人の綺麗な声が響くと同時に、突然目の前に文字が現れた。


 [所属国: 選択]


 選択の文字が点滅していたので、それに指を近づけると、国名が重ねて表示された。


 日本

 アメリカ

 イギリス

 ドイツ

 フランス

 イタリア

 トルコ

 ロシア

 中国

 ----

 ジ〇ン公国


 「ちょっ!最後の何これー!!え、選べるの?」


 残念ながら魂の格とやらが足りなくて、選べなかった。


 「絶対にあの神様の悪戯だよね!でも、ちょっと嬉しいかも。魂の格とやらが上がったら、選べるのかな?」


 入院したての頃、病室で初めてファーストを再放送で見たんだけど、すごくワクワクした事を覚えてる。

 一緒に入院してた年下のガキンチョどもと意味もなく「坊やだからさ」を連呼して、若い看護師さんを困らせてたっけ。

 是非とも俺も赤いマスクの大佐の様になりたいものだ。あの赤いMSに乗れるのだろか?


 「いやいや、選べない物をうだうだ考えても仕方ない。

 どれにしようかな。やっぱ日本人だし、外国の事なんか分かんないから、日本にしよ。」


 日本を、選ぶと確認の表示が出た。親切設計だな。


 [所属国:日本で間違いありませんか YES / NO]


 「イエスをぽちと。・・・うがぁ―――!!」


 イエスを押すと、突然膨大な情報が頭に流れ込んで来た。俺はたまらず悲鳴をあげてうずくまり、情報の激流にただひたすら耐えた。

 自慢じゃないが、長い闘病生活のおかげで、苦痛には耐性があるのだ!

 どれ位うずくまって耐えていたのだろうか?

 一瞬であったようでもあり、二・三時間そうしていたようにも思えた。

 情報の激流は唐突に終わりを告げた。


 [システム日本国自衛隊をインストールしました]


 [階級:二等陸士を獲得しました]


 それだけを告げると女の人の声は沈黙した。


 俺はフーっと息を吐き出し、うずくまった姿勢から体を起こすと、とてもとても大事な事に気付いた。

 

 「何で俺マッパなの?」

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