第39話 魂の進化

 黒竜ヴァリトラの残った右目から憎悪の光が消え、ヴァリトラはため息の様な息を長く吐き出して、その生命活動を終えた。


 [黒竜ヴァリトラを討伐しました。功績ポイントを5,000ポイント獲得しました。功績ポイント:6,007 →11,007 ポイント。

 更に称号:ドラゴンバスタ―を獲得しました。ドラゴンバスタ―獲得の褒賞として、功績ポイント500ポイントを獲得しました。]


 [功績ポイントが合計11,507ポイントになりました。一等陸曹

に昇級出来ます。昇級しますか?]


 「おっ、昇級できるのか。じゃ、昇級お願いします!」とベルちゃんの声なのか、システムの声なのか良く分からないのだが、まずは昇級をお願いした。


 [七瀬冬馬は一等陸曹に昇級しました。昇級した事により次の装備が使用可能となりました。

 『96式40mm自動てき弾銃』

 『79式対舟艇対戦車誘導弾』

 『96式装輪装甲車』

 『81mm迫撃砲 L16』*支援砲撃

また、昇級したことに伴い、福利厚生の一環として駐屯地内食堂の利用が可能となりました。

更に、普通科連隊隷下の迫撃砲隊による支援砲撃を、要請できるようになりました。

以上です。

 功績ポイント:11,507 →3,607 ポイント]


 [七瀬冬馬は所定の条件を満たしました。分隊長に昇任できます。昇任しますか?]


 「おっ、ついに分隊長か。ベルちゃん昇任お願いします。」


 [七瀬冬馬は分隊長に昇任しました。組員を七名任官し、自分の階級より下の階級を付与する事が出来ます。任官された者は、自分の階級以下で権限のある装備を使用する事が出来ます。それに伴い、倉庫の使用権を分隊長から付与されます。

 また、分隊員より副分隊長を一名任命し、指揮権の代行を委託する事が出来ます。]


 「了解ベルちゃん、サーシャとエリクシアを二等陸曹に任官します。そして、エリクシアを副分隊長に任命します。」


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『分隊長』の権限に於いて、バディー名サーシャを二等陸曹に任官しました。バディー名サーシャに二等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。それに伴い、倉庫の使用権を分隊長から付与されました。]


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『分隊長』の権限に於いて、バディー名エリクシアを二等陸曹に任官しました。バディー名エリクシアに二等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。それに伴い、倉庫の使用権を分隊長から付与されました。

 またバディー名エリクシアを副分隊長に任命しました。それに伴い、分隊長の権限に於いて、分隊の指揮権を代行できます。]


 「な、長かった・・・。」俺はやっとベルちゃん(システム)の長い報告を聞き終えて、ほっと一息ついて、地面に胡坐をかいて座り込み、サーシャを膝にのせて尻尾をモフり始めた。

 ああっ~、癒されるわ~。


 すると突然黒竜ヴァリトラの死骸が眩い光を放ちだし、視界がホワイトアウトしてしまった。

 俺は近くにいたエリクシアを抱き寄せ、サーシャとエリクシアの二人に覆いかぶさって二人の盾となった。


 [黒竜ヴァリトラを討伐した事により、固体名七瀬冬馬、サーシャ、エリクシアの魂の階梯が昇華しました。それぞれの魂の希求するに進化します。]


 「えっ?進化ってなに?何なのさ??」俺は混乱して、アタフタしていると、目を覆ていた眩い光は、銀色の光の粒子に変わり、俺とサーシャとエリクシアの胸の中に沁み込んでいった。


 「うん、むん――!」「ふん――!」サーシャとエリクシアが苦しみだした。


 「ベルちゃん!」俺は妖精のベルちゃんに問い合わせた。


 「マスター。心配ありません。今サーシャとエリクシアは己の望む魂の有り方に進化しているところなのです。それに伴い、魂の入れ物である肉体も変化しているところなのですよ。」


 「・・・旦那様・・」エリクシアが起き上がった。俺は灯りを取る為に、キャンプ用のLEDランタンのスイッチを付けた。


 「エリクシア。大丈夫かい?」俺はエリクシアの肩にそっと手を触れた。


 「はい。大丈夫です。でも何か胸の奥底から力が湧いてくるようで・・・」


 「ベルちゃん!エリクシアは大丈夫なの?呪いはどうなった??」立て続けにベルちゃんに尋ねた。


 「マスター。エリクシアは問題ありません。リブルスの呪いカースも解呪されています。また、解呪されたことにより、エリクシアを呪殺しようとしたリブルスに、呪いが跳ね返って行きました。黒竜ヴァリトラの呪いも加わって。

 リブルスがどうなるか、楽しみですね♡」ベルちゃん、黒い、黒いよー。


 「そうか、それじゃこれでエリクシアはリブルスの呪いカースにこれ以上苦しめられることはないんだね?」


 「もう大丈夫ですよ。その証拠に、エリクシアの首をご覧ください。マスター。」ベルちゃんに促されるままに、エリクシアの首元を見る。


 「旦那様!奴隷の首輪が、奴隷の首輪が有りません!」


 エリクシアは自分の首元を両手で弄りながら、俺に訴えてきた。


 「ああ、そうだよエリクシア。君の首には、君を縛る忌まわしい首輪はもう無いんだよ。」俺は嬉しくて、微笑みながらエリクシアのそう伝えた。


 「ああっ!旦那様――!あああ・・・・」エリクシアは泣きながら俺に抱き着いてきた。俺はエリクシアを両手で抱き留めた。


 「ううっ、ど、どうしました?」すると、俺の膝の上に伏せていたサーシャが目を覚ました。


 「えっ、だれ?」俺の膝から顔を起こしたのは、大きな狼の耳をピコピコ動かしながら、肩まで伸びた輝く銀髪を右手ではねている美少女であった。

 エリクシアが黄金に例えられるように、この美少女は例えるなら白銀の名を冠するに相応しい美しさである。

 美少女は白銀の微笑みを零しながら、俺に語りかけた。


 「何を言っているのですか?トーマ様。サーシャですよ。アラナ村のサーシャです。」


 確かにサーシャの装備を身に着けているが、コンバットスーツのサイズが合っていない。明らかに手足が長くなって裾から覗いている・・・。


 「ベルちゃん、説明お願いします。」俺は1/12サイズの妖精に頭を下げた。


 「説明しよう!サーシャは進化の過程で、どうやら肉体的な成長を願ったようです。マスターの子供をはr・・」「ちょ、ちょっと!ベル様――!」ベルちゃんが慌てたサーシャの両手に捕まってしまった。


 「それで?」俺はベルちゃんに先を促した。


 「ゴホンッ!現在サーシャの肉体年齢は十六歳です。肉体的に十分成熟した女性ですよ。マスター。

 それに伴い、サーシャは称号:銀狼の母を獲得ました。

 これは銀狼種の王と対になる称号です。

 サーシャの体も成長しましたので、サーシャの装備を今の体のサイズに合わせて作り替えましょう。」


 ベルちゃんはそう言うと、サーシャの装備が輝きだした。光が収まると、サーシャの装備は皆今の体にピッタリサイズに変わっていた。しかもアーちゃん様コーデのカモ柄よりも、もっと明るめで青色が強いカモ柄に変わっていた。ベルちゃんコーデと呼ぶべきだろうな。


 「ベル様、ありがとうございます!」サーシャは元気にそう言ってから、俺の腕の中に潜り込んできた。

 もぞもぞ俺の腕の中に入って来るサーシャに気づいたエリクシアはサーシャを見つめ「サーシャさんなの?」と尋ねた。


 「はい!エリクシアさん、サーシャですよ。これでトーマ様の赤ちゃんをいつでも産めます♡」サ、サーシャがとんでもない事を言い出した。


 「あら、そうですね。それじゃ、今度旦那様からお情けを頂きましょうね♡」えっ?エリクシアさん。なんかその反応間違ってやいませんか?


 「サーシャの進化が成長だとしたら、エリクシアの進化は何なんだい?」俺はまずそのことをベルちゃんに尋ねた。


 「エリクシアは聖騎士に進化しました。それにより、風と水の上級魔法が使用可能となりました。また、聖騎士の武技が使用可能です。」


 「ああ、嬉しい!これで旦那様と家族をお守りできます!」そう言ってエリクシアはまた涙を流し、サーシャに抱き着いた。

 エリクシアが段々泣き虫になっているのは気のせいだろうか・・・。


 「そうか、それがエリクシアの望みだったのか。

 ゴホンッ!それで、ベルちゃん。俺は?」


 「マスターは変化有りません・・・。」


 サーシャとエリクシアが憐れむような眼差しで俺を見ているよ・・・。超絶美少女な二人に憐みの眼差しを向けられて・・・俺の中で何かが目覚めそうだよ!ああっ、もっと・・・


 「あっ、でもちょっと変化した設定が有ります。

 まず、マスターの頭の中の声ですが、これは本来スキル【ワンマンアーミー】の礎となった歴代自衛官の経験やノウハウです。

 マスター達はこのスキルを通じて、歴代最高の自衛官の技能とノウハウを身に着けているのです。

 それが何故疑似人格を持っているのかはまだ不明ですが、それらの疑似人格がアバター化しました。アバターの一部は現在外部に派遣して、現地人材を訓練中です。

 そんな事より、マスターは野外需品装備が使用可能となりました。つまり、お風呂です!キャー、みんな――!が使えるのよ―――!!」

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