【20万PV感謝企画!】SS4 お嫁さん会議

 「諸君、お嫁さん会議を始める!」


 フェアリー・ベルが、眼鏡を掛けて小さなテーブルに両肘を付き、両手の指を組んで口元を隠しながら、親父声で宣言した。

 本人は某司令を気取っているつもりだった。


 「パチパチ、パフパフー!」「パフパフ、パチパチー!」


 「えっ?な、何ですのそれ?」


 ヴァイオラが慌てエリクシアとサーシャの行動の意味を尋ねた。


 「ヴァイオラ様、これはトーマ様の故郷で、会議を始める際の儀式だそうです。ね?ベル様?」


 サーシャが純真な瞳をフェアリー・ベルに向けて尋ねた。


 「諸君、これはマスターの故郷で、会議の前に行う儀式だ。会議の成功と活発な討議を願う神聖な祈りなのだよ。

 ヴァイオラも、お嫁さん会議メンバーにエントリーされた以上は、この儀式を真摯に行うよう!」


 もし冬馬が聞いていたら、噴飯もののでたらめである。


 「それでは、本日の議題を報告したまえ。エリクシア隊員。」


 「はい!ベル司令。今回の議題は旦那様の好みの分析です。」


 エリクシアが席から立ち上がって、会議の議題を説明した。


 「よろしい。ではサーシャ隊員。君から報告を聞こう。」


 サーシャも立ち上がって、報告を始めた。


 「トーマ様は、私の耳と尻尾を撫でていると、ジュニア様が元気になられるので、耳と尻尾がお好きなのではないかと思います。」


 サーシャがそう報告して着席すると、エリクシアが頷きながら言った。


 「確かにそうですわ。旦那様は、私の耳も甘噛みしていると、とても興奮なさいますものね。

 でも、残念な事に、私には尻尾が無いから検証できませんわ・・・。」


 エリクシアが顔を曇らせている。


 「案ずる事はない。こんな事もあろうかと、後方支援連隊女性隊員WACの皆様と新装備を用意しておいた。これを装備しなさい。」


 そう言ってフェアリー・ベルは、紐で腰に付ける可愛い尻尾とケモ耳カチューシャをテーブルの上に取り出した。


 「「ありがとうございます。ベル様」」


 エリクシアとヴァイオラはフェアリー・ベルに感謝して、付け尻尾を収納した。


 「でも、ベル様。もし旦那様が耳と尻尾をお喜びになるのなら、セレナは大丈夫でしょうか?あの子には、まだ早いと思うのですが・・・。」


 ヴァイオラが心配そうにフェアリー・ベルに尋ねた。


 「心配いりません。何故かマスターは胸の平かな女の子には、魅力を感じない様なのです。

 酷いことに、私の胸を見ると鎮静効果があるほどですから。

 セレナの胸は、まだ蒼い果実、安心してだいじょうぶですよ。」


 某司令の口真似は、放棄したようだ。


 「次!エリクシア隊員。報告を。」


 指名されたエリクシアは、立ち上がって報告した。


 「以前、ベル様に頂いた長い靴下と、み、短いスカート姿に非常に喜ばれました。

 ジュニア様もいつもの三割増し位、お喜びでした。

 それに、ベル様にご指導頂いた通り、その姿で前かがみになって両腕で胸を締め付けるポーズを取ると、更にお喜びになられました。


 その時旦那様がおっしゃった、ええと、『絶対領域』というお言葉と、『だっちゅうーの』というお言葉の意味が分からなくて。

 旦那様の意に沿えなかったのではないかと不安で・・・。申し訳ございません。」


 涙目になって、エリクシアは着席した。


 「あの、ベル様。私も良く、み、短いスカートを履くように、トーマ様からお願いされるのですが、一度も『絶対領域』というお言葉は頂けてません。何かお気に障ったのでしょうか?」


 サーシャも、心配で目に涙を浮かべている。


 「二人とも心配には及びませんよ。ヴァイオラを含めて、あなた方は素晴らしい『絶対領域』の有資格者チルドレンです。


 一般的に『絶対領域』とは、ショートパンツやミニスカートとサイハイソックスとの間から露出する太ももの事をいいますが、それだけでは本当の『絶対領域』とは言えません。

 

 足首から脹ら脛、膝、太腿と見上げた時、サイハイソックスで包まれた足に『美』が無ければ『絶対領域』は発動しません!

 『美』のない足にサイハイソックスなど醜悪ですらあります!」


 フェアリー・ベルの演説に、スポットライトの演出まで加わった。


 「更に、サイハイソックスの上のショートパンツやミニスカートにも、厳格な発動条件が求められます!

 特にマスターはミニスカートを好みますので、三人ともよく覚えておいてください!


 マスターは、ミニスカートから見えそうでギリギリ見えない下着との攻防と、着用者の恥じらいを重視してます。

 ただ、短いだけのミニスカートで、恥じらいもなく下着を晒しているなんて万死に値します!


 分かりましたか?『絶対領域』は総合芸術なのです!」


 三人とも、フェアリー・ベルの魂の力説を、食い入るように傾聴ている。一言一句を魂に刻み付けようとしているかのように。


 「では、三人にサイハイソックスを何種類か支給します。


 いいですか、サイハイソックスの白黒論争は全くナンセンスです!愚の骨頂!愚者の行為です!


 その時その時のファッション。自分の気持ち。どうマスターから見られたいのか。それらを総合的に判断して、最適のサイハイソックスをその都度選択するのです!

 

 至高の『絶対領域』は、一日にしてならず!常に精進あるのみ!」


 「「「はい、ベル様!」」」


 「ヴァイオラは、次回までにマスターの好みを分析して、皆に報告できるよう用意しておきましょうね。」


 フェアリー・ベルはヴァイオラを気遣うよう優しく語りかけた。


 「次の議題は何かしら?サーシャ?」


 「はい、ベル様。次の議題は『新妻の他人に言えないお悩みコーナー』です。

 ベル様、ごめんなさい。未だにこのコーナーの意味がよく理解できなくて・・・。」


 「サーシャ、それは気にしなくてもいいの。考えるな!感じろ!です。

 では、『新妻の悩み』を聞かせてもらいましょうか!・・じゅるり・・・。」


 フェアリー・ベルは自分の欲望を垂れ流しながら、三人を見渡した。


 「それでは、私から。」


 エリクシアが報告しようと立ち上がった。


 「今は、ヴァイオラ様が加わって、お嫁さん仲間も三人になり、とても心強かったのですが・・・、今、私は自信を無くしてしまいそうなのです。


 それまでは、いつも私とサーシャ様の二人で旦那様のお相手をしていましたが、結果はいつも私たちが気絶させられて・・・。

 私は、旦那様にも気絶するまで気持ちよくなって欲しいのです!」


 エリクシアは、両手の拳をブンブン上下させながら力説した。

 

 「ヴァイオラ様が加わり、ヴァイオラ様に色々とご指導頂きながら三人で臨むのですが、今では気絶させられるのが二人から三人になってしまっただけで、旦那様に申し訳なくて・・・顔向け出来ません!」


 エリクシアは涙をこぼしながら、着席してしまった。


 「エリクシア様、それは私も同じ!あなただけの責任では無いわ!


 ・・私こそ、ヴァイオラ様にお教えいただいた技の半分でもできていたら、少しは皆さまのお役に立てたかもしれないのに・・・。


 いつもあの最中に尻尾をギュッと握られると、私それだけで昇天してしまって・・・ごめんなさい二人とも。いつも二人にばかり負担をかけてしまって!」


 サーシャも席で泣き崩れてしまった。


 「エリクシア様。サーシャ様。どうかご自分を責めないでください。


 旦那様が絶倫すぎるのです。

 あのような素晴らしい女殺しの凶器と、尽きる事のない精力をお持ちの旦那様。並みの女では太刀打ちなどできはしませんわ!


 これほど素晴らしい旦那様に巡り合えたこと、女の幸せと喜びましょう!ねっ?

 だから、どうかご自分をお責めにならないで。」


 三人はお互いに抱き合って、泣き崩れてしまった。


 「みんな!泣いていても何の解決にもならなくてよ!

 泣きたい時は、コートで泣きなさい!」


 フェアリー・ベルは、タテロールの髪にテニスウェア姿で三人を叱責した。

 古典過ぎて、理解され難いネタをぶち込んできた。


 「マスターの絶倫は、どうやらあなた達三人によって覚醒させられたようですね。

 元々マスターは、人並み程度の精力しか持っていなかったの。

 でも、あなた達三人と魂の交わるような性交を毎夜繰り返すうちに、マスターの持つある因子が覚醒してしまったのです。

 それは、マスターの出生に関わる秘め事ですから、今は明かせません。」


 フェアリー・ベルは神妙な顔で続けた。


 「しかし、今日は皆に伝えたいの事があります。


 黒竜ヴァリトラ討伐後、サーシャとエリクシアは魂の階梯を上り進化しました。

 その際、ベルはマスターに何の進化もしてないと伝えましたが、それは嘘です。


 実はその時、マスターはハイ・ヒューマンに進化していたのです。

 更に、セントニアやガルキア残党との戦闘を経て、マスターは更に進化を続け、今や亜神の領域に片足を踏み込んでいる状態です!


 このことを告げたら、マスターの心、精神状態にどんな影響を与えるか分からないので、決してマスターに伝えてはいけませんよ。」


 「トーマ様が・・・」「旦那様・・・」「・・・」


 三人とも自分の手に余る秘め事を打ち明けられ、驚愕している。


 「ハイ・ヒューマン。さらにその先へと進化したマスターの魅力は、人間にとって絶対的です。

 今後は、これまで以上に女達が群がって来るでしょう。


 いいですか、三人とも!

 マスターに変な女を近づけさせるわけには行きません!

 私達で、十~分に吟味して、吟味しぬいた女だけをマスターへの接近を許すのです!」


 フェアリー・ベルが拳を奮って力説する。


 「ですが、マスターの絶倫問題については、今のところ手がありません。


 現状のマスターの精力で、あと三人くらいメンバーが加われば、あるいは何とか・・・。

 でも、マスターの力は日に日に増加しています。


 セレナの戦力化を急ぐという手もありますが、マスターがそれを望みません。今のままのセレナを愛でていたいようです。


 一方であれは、今はまだその時ではありませんし・・・」


 フェアリー・ベルがしばし遠くを見つめて想いを巡らす。


 「「「ベル様・・・」」」


 その様子を三人は不安そうに見つめた。


 「しかし、そんな劣勢な私達にも希望があります!


 まずは、マスターと毎夜魂の溶けあうような性交を繰り返している、サーシャとエリクシアとヴァイオラ三人は、マスターの魂の欠片も受け取っているのです。

 いずれ時が満ちれば、更なる進化の階梯を駆け上がって、マスターと同じハイ・ヒューマンに進化できるる可能性があります。

 そうなれば、人間の肉体だけの性交ではなく、魂の性交を体験できることでしょう。」


 「それでは、ベル様。その時まで旦那様の稚児ややこは!」


 エリクシアが身を乗り出して尋ねた。


 「何とも言えません。

 マスターが元いた世界では、神と人の間に子をもうけた例がたくさんあります。

 神は世界の理外の存在なのです。故に、神が望めば不可能も可能になるのです。


 先に言った通り、マスターは今や亜神になりかけています。

 マスターが望むのなら、あるいは・・・。


 しかし、これだけは断言できます。

 マスターとの子供は、生まれた時からハイ・ヒューマンかそれ以上。決して尋常一様な子供ではありえません。

 その母親となるあなた方にも、覚悟がひつようですよ。」


 フェアリー・ベルは優しく三人を見渡した。



 

 「マスターの亜神化。あの女はこれを狙っていたというの?・・・」


 かくしてお嫁さん会議は、冬馬がセレナとビィエールィを連れて散歩から戻って来るまで、ぐだぐだと続くのであった。


 そして、散歩から戻った冬馬は、三人の嫁たちから、子供がいかに可愛くて、愛らしいかを延々と聞かされるのであった。

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