第86話 クロシェット

 みなさま。

 新年、明けまして、おめでとうございます。

 本年も、トーマをはじめ、お嫁さん達の応援、よろしくお願いいたします

m(_ _)m


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 アーちゃん様が天界に戻られた後、俺は指輪ストーリーのガン◯ルフみたいな爺さん達に囲まれて大変だった。


 それ以外の女性達は、みんなミシェルを取り囲んで祝福していた。


 沢山の可愛いケモ耳っ子達も、ミシェルに代わる代わるお祝いの言葉を掛けている。

 小さなケモ耳っ子達、めちゃカワエエな〜!

 俺も爺さん達に囲まれるより、あっちがいいな〜ってみてたら、サーシャにつねられてしまった。

 

 苦笑いしながら、サーシャの耳をいじっていると、爺さん達が「おお、使徒様は獣人を好まれるか!」と言って、獣人の爺さんが、ローブから耳を出して俺に近づいてくる!

 いい歳した爺さんが、顔を赤らめて近づいてくるんじゃねえ!キモイわー!


 そんなこんなでやっと解放された俺達は、ミシェルの居室にいる。

 居室と言っても、部屋が何室も付いている大きなスイートルームだった。


 ここに俺とサーシャ、エリクシア、ヴァイオラ、セレナ、オリヴィエとミシェルの七人が一緒にいる。

 あと、ベルちゃんとシロもな。


 独りぼっちで、黒き森に転生した頃とは大違いだ。


 女性陣は、三日後の婚礼に向けて、目の色を変えてベルちゃんのネット情報を漁っている。


 俺はセレナとシロを連れて、散歩に出た。

 だが、建物の中をぶらついていると、また爺さん達に捕まりそうなので、俺は外を目指した。


□□□フェアリー・ベル


 「マスターは出て行きましたね。」


 「はい、どうやら外に行かれるようです。」


 そうミシェルが答えた。


 「では、みんなに伝えます。

 スカーもそうでしたが、ローリーの街で遭遇した敵も含め、マスターの新たな敵は危険です!」


 「ベル様の探索にも検知出来ないのですね?」


 エリクシアがそう確認した。


 「そして、死ぬと自爆する。

 全部が全部そうかは分かりませんが、その前提で対処しましょう。」


 オリヴィエがそう付け加えた。


 「それに、海竜ジャバウォックを倒した後に現れた真っ黒な帆船。あれも突然現れました。

 それに、大賢者様も攻撃してましたし、敵と思って間違いないでしょう。」


 そしてサーシャも付け加えた。


 「大賢者テレッサ様は、あの黒い帆船を攻撃なさる際、確か『ルトゥム』と叫ばれたような・・・。

 みなさま、何かご存知ありませんか?」


 ヴァイオラがみんなに尋ねたけど、誰も知らなかった。


 「何かの糸口になるかも知れないから、みんなそれぞれの伝手を使って調べましょう。」


 そうみんなにお願いしたわ。


 「ところで、ミシェルには、ローリーの街で、敵が隠れてても分かってたわね。どうやって探知したの?」


 「はい、ベル様。

 私が目を布で隠して、暗闇の世界の住人になった当初、動く事すらままなりませんでした。

 そんなある日、先生が教えて下さいました。

 蝙蝠と言う動物は、夜の暗闇の中でも、空を飛ぶ事が出来ると。

 それは、人には聞こえない音を発して、その反射を聞き取って物を認識しているからだと。

 それ以来私は、自分の魔力を放射して、その反射を感じ取って物をイメージする訓練を始めたのです。

 魔力ですから、どんな物でも透過しますし、形ある物なら必ず反射します。

 ですから、私には『隠蔽』や『隠密』のスキルも効かないのです。」


 「全て旦那様のために、努力なさったのですね。何年も何年も!

 ミシェル様。私、尊敬いたしますわ!」


 ヴァイオラが、感極まってミシェルの手を握りしめている。


 「これはミシェルの努力の賜物ね!お陰で対策の糸口が掴めたわ!

 ミシェル、ありがとう!」


 みんなから褒められて、ミシェルも嬉しそう。


 「ゴホン!ところで、みんなにお願いがあるの。

 今晩、マスターをベルに貸してください。」


 理由を説明すると、みんなはお願いを快く聞き入れてくれた。

 ありがとう、みんな!


◇◇◇◇◇


 その晩俺達は、二人づつに分かれて、別々の寝室で眠る事にした。


 俺はみんなにおやすみのキスをして、サーシャの手を取って俺の寝室に行こうとすると、サーシャは涙目になって、首をプルプル横に降ってみんなに助けを求めた。


 「無理〜!一人じゃ体が持たない〜」


 なんじゃそりゃ!失礼な!

 サーシャの言葉にちょっと傷ついていると、エリクシアが笑って俺の手を取ってくれた。


 「旦那様♡私もご一緒させてくださいまし♡」


 もちのろんです!お嬢さん!


 その晩俺は、アフロディーテ様に教わった方法を二人に試した。


 ゆっくりと、二人の肉体を快楽に導き、緩慢に繰り返す絶頂の頂きで、二人の魂を肉体から解き放ち、二人の魂を少しずつ俺の魂に重ね合わせて行った。

 三人の魂は、己の魂の隙間を、愛する者の魂で満たす事の愉悦と幸福に震えていた。

 やがてサーシャとエリクシアの意識が跳んで、俺も意識を手放した。


–・–・–・–


 多幸感の揺り籠から引き離されるように目覚めた。

 どうやら俺は、二人を抱きしめたまま、気絶していたようだった。


 ベルちゃんが、枕元にいて、俺のおでこをペタペタ叩いている。


 「マスター。しっ!静かに!

 二人を起こさないように、ベルについて来て・・・」


 俺はベルちゃんに言われるまま、ガウンを羽織って寝室を出た。


 夏なのに、高地の夜は肌寒い。

 ベッドを出る時、二人にシーツを掛けて来て良かったよ。


 俺はベルちゃんの後に続いて、水晶の間に入って行った。


 水晶の間の巨大なドームは、夜になると満天の星空が映し出されている。


 星明かりで明るい水晶の間。

 ベルちゃんは創生の水晶に近づいて行った。


 俺はベルちゃんの後について、水晶に近づいた。


 俺が近づくと、創生の水晶は嬉しそうに星の光を瞬き反射させた。


 「マスター。お願いがあります。

 ベルを信じて、この創生の水晶に触れて、強くベルを求めて下さい。

 どうか・・・」


 「良いよ。ベルちゃんのお願いなら、何でもするよ。」


 そして俺は、創生の水晶に手を触れベルちゃんを求めた。


 「・・・ベルちゃん!」


 ベルちゃんへの、全ての想いを込めて、ベルちゃんを呼んだ!


 創生の水晶は暖かく、次第に鼓動のような脈動が感じられた。

 水晶の脈動は段々大きくなり、それに合わせるように、薔薇色の光と神力の放射が強くなった!


 俺は眩しさに、水晶に触れている手とは反対の手で目を隠して、光に耐えた。


 すると突然水晶の脈動が終わり、人の鼓動が人肌を通して伝わってきた!


 俺は驚いて目を開けると、シャンパンゴールドの長い髪に、黄金の瞳に好奇心のおどる光を湛えた、神々しいほど美しい美少女が立っていた。


 俺は、裸の美少女の胸に手を当てている事を確認してから、声を掛けた。


 「ベルちゃん?」


 「マスター♡」

 「どこ見て確認してるんですか!」


 えっ!えーっ!ちっちゃなベルちゃんが、いつも通り妖精の姿で飛び回っているし、俺に抱きついているこの美少女もベルちゃんなのか??


 「マスター。

 フェアリー・ベルは、マスターをサポートするために、本体と直結リンクしたアバターです。

 この世界における、本体の端末だと思って下さい。


 しかしこのは、マスターと添い遂げるためだけに、人として生み出され、本体から切り離されたスタンドアローンの完全な人間です。

 言うなれば、フェアリー・ベルの妹だと思ってください。」


 俺に抱きついていたベルちゃん妹が、突然悲鳴を上げた。


 「キャー!マスター!む、胸がありませんー!」


 「ハァ、本来だったら、マスターの理想の容姿とプロポーションで誕生するはずだったのですが・・・。

 マスター。この娘を求めた時、何か変な事考えたでしょ?」


 「いや、ベルちゃんを求めろって言うからさ、ベルちゃんって言ったらほら・・・」


 俺は自分の胸に手を当てて、それを上下に動かして見せた。


 「うえーん!それじゃ、私の胸は?谷間はどこ?」


 「諦めなさい!」


 ふ、不憫だ!


 「先人の教えに、『おっきなおっぱいも、ちっちゃなおっぱいも、みんな違って、みんないい』って言うし・・・」


 「ハイハイ、パイ廚乙乙!」


 「うーん、それよりも、二人ともベルちゃんじゃ紛らわしから、君に名前をつけてあげよう。」


 そう言うと、ベルちゃん妹は嬉しそうに俺の胸に顔を擦り付けて喜んでる。


 「うん!お願い!マスター♡」


 「よし!君の名は『クロシェット』!

 ベルちゃんの妹だから、小さな鈴って意味だよ。

 よろしくな!クロシェット!」


 「『クロシェット』・・・!

 うん!この名前大好き!マスター♡」


 「どうか、末長くクロシェットをお願いします。マスター。」

 

 

 

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