第56話 幕外のオーディエンス その1

□□□ジョバンニ・ビルチェ・ガルバオイ・ティアナ


 我は今、公都バルディオンにあるイルバート公皇家の誇る宮城、聖バルダス宮の広いプリンシプル回路を、プロセピナ侯爵を率いて歩いていた。


 「此度のセントニアの暴走、偶然とは言え、我等が不在の折に騒動を起こすとは、全く困った者達よ。」


 我は、セントニアの愚か者共のタイミングの悪さに眉を顰めた。


 「全く最悪のタイミングでしたな。はっはっはっ!」


 プロセピナ侯爵が、大胸筋を揺らして笑う。


 「全くである!

 奴らはおよそ十年に一度軍を起こして攻めてくるが、奴らは軍事を貴族の祭事か何かと勘違いしてはおらぬか?」


 「はっはっはっ!そしてその祭りを一番楽しんでおられるのが、ティアナの小王、ジョバンニ陛下でございますな!

 十一年前といい、更にその前といい。

 騎竜ディーンを駆って、単騎でセントニア軍に突入し、一番美味しい所を持って行かれたと、我が軍の軍団長達から幾度恨み言を言われた事か!」


 侯は上腕二頭筋をパンプアップさせながら、我に非難の筋肉を向ける。

 ぬぬ、見事なり!


 我も背中の最長筋をパンプアップさせ、それに応えた。

 むむむ、誠に服が邪魔だのう!


 「はっはっはっ!それは難儀を掛けたな!

 しかし、此度は我等の出番は無かったぞ。」


 我は、プロセピナ侯爵を振り返ってからのサイドチェストのポーズを決める!

 

 「例の旅人ですな。陛下の仰る通り、好きにさせておったら、良き結果となりましたな。

 黒竜ヴァリトラのウロコも、我が街て競売に掛けられる事となりました。

 既に国中はおろか、アルマーナや遠くブリトンからも噂を聞きつけた貴族や商人が街に集まり出しております。」


 侯はお返しにバック・ダブルバイセップスのポーズで語った。


 「あら、面白そうなお話です事!」


 鈴のような声が、我等の会話を遮った。

 このプリンシプル回廊は、我等ビルチェ選う皇四家と公皇家のお方しか通れぬ定め。

 そして、我に声をかけて来たのはもちろん


 「オリヴィエ!久しいぞ!

 何だその大胸筋と大臀筋は!脂肪ばかりではないか!

 全く、鍛錬が足りん、鍛錬が!」


 オリヴィエに我の大胸筋が挨拶のパンプアップを送るが、オリヴィエの大胸筋は豊かな脂肪に隠れて表情が見えぬわ!忌々しい!


 「ジョバンニ叔父様!

 それはレディに対して、失礼な物言いですわ!

 私に文句を言う前に、奥様のエマリアに同じ事を仰ってくださいまし!

 エマリアの方が、私より余程立派なをお持ちです事よ!」


 オリヴィエが口を尖らせながら、答えた。


 「はっはっはっ!我が妃は良いのだ!そんな恐ろしい事を、我に嗾けるではないぞよ。

 そんな事より、我に挨拶のキスはしてくれぬのか?おチビちゃんは?」


 賢い筋肉は、十分に妻を気遣うものなのだ・・・。


 「もう、いつまでも、私をチビ呼ばわりすると、その自慢のお髭を毟ってしまいますわよ!

 さあ、しゃがんで下さいまし、髭もじゃさん。」


 オリヴィエが頬に軽く挨拶のキスをしてくれた。

 我はお返しにオリヴィエの燃えるような真っ赤な髪にキスをしてやった。


 「髪が乱れます」などと文句を言っておったが、無論わざとじゃよ。


 「ところで叔父様、北方が騒がしいのですが、なんとか成りません事?」


 オリヴィエは髪を撫でながら、横目で尋ねてきた。

 オリヴィエが我の横に並び、回廊を共に歩む。

 春秋とは飛竜のように素早く飛び去ってしまうものよの。

 姉上、オリヴィエはこんなに立派なレディーに成長しましたぞ!

 ちと筋肉が足らぬが。


 「叔父様?」


 「はっはっはっ!その事なら、心配には及ばん。しなやかな筋肉の若者が片を付けてしまったよ。セントニア軍はほぼ全滅よ。」


 「叔父様の判断基準って筋肉だけですの?」


 「それ以外に何が有る?筋肉は嘘は付かん!」


 おチビちゃんは、全く不可思議な事を申す。筋肉こそが全人格ではないか!


 「はぁ、分かりました。

 それよりセントニア軍を全滅ですか?一体どんな男ですの?」


 「良い筋肉d」「筋肉以外で!」


 「うむ、手厳しいの。

 そうだのぉ、我に娘がおったら有無を言わずに婿に取るの。」


 「それ程の男ですか・・・」


 オリヴィエの瞳が、妖しく光った。


 「如何にオリヴィエとは言え、手強いぞ。

 相手には、かの黄金の戦姫が付いておるからの。それに、白狼の娘も付いておる。」


 「・・・黄金に白狼・・・」


 オリヴィエは、美しい赤毛を白磁の指で絡めながら、考えに耽っておる。

 その内、その指を噛みだすぞ。

 この子の悪い癖だな。子供っぽく見えるので、やめさせねばな。


◇◇◇◇◇


 俺達は、16式機動戦車の装甲に立って、戦果を見つめていた。

 あまりの光景に、みな口が重かった。

 ・・・全てが、俺の選択の結果だ。


 すると、ベルちゃん(システム)の声が頭に響いた。


 [七瀬冬馬はセントニア軍を撃破しました。功績ポイントを340,270ポイント獲得しました。功績ポイント:4,717 →344,987


 功績ポイントが合計344,987 ポイントになりました。三等陸佐に昇級出来ます。昇級しますか?]


 つ、ついに佐官級に達してしまった!

 三佐って事は、少佐か!ついに、赤いマスクのお方の本編登場時と同じ階級か〜!これで俺も「ふっ、坊やだからさ!」と言えるぞー!


 「システム・ベルちゃん。三等陸佐に昇級お願いします!」


 [七瀬冬馬は三等陸佐に昇級しました。昇級した事により次の装備が使用可能となりました。また、これにより回転翼機ヘリコプターパイロットの技能を獲得しました。

 また、以下の装備が使用可能になりました。

 『87式自走高射機関砲』

 『90式戦車』

 『10式戦車』

 『UH-1J』

 『OH-1』

 『UH-60JA』

 『AH-1S』

以上です。功績ポイント:344,987 →121,087 ポイント]


 が、ガンタンクに90と10式だって!

 しかもコブラだ!コブラが使える!のか?

 何だこの豪華な装備は!盆と正月が一緒に来たっての、こう言う事を言うのか?


 [七瀬冬馬は所定の条件を満たしました。中隊長に昇任できます。昇任しますか?]


 「は、はい、昇任お願いします!」


 [七瀬冬馬は中隊長に昇任しました。これにより以下の部隊が指揮下に入ります。

 ・中隊本部班

 ・小銃小隊×三個小隊

 ・対戦車小隊×一個小隊

 ・迫撃砲小隊×一個小隊

また、中隊長権限に於いて以下を任官できます。

 ・小銃小隊長×三名

 ・対戦車小隊長×一名

 ・迫撃砲小隊長×一名

以上です。]


 なんか軍隊っぽくなった・・・。

 創造神様は、一体俺に何をさせたいんだ?


 「システム・ベルちゃん。中隊長の権限に於いて、サーシャとエリクシアを一等陸尉に任官します。それからヴァイオラを一等陸曹に、セレナを三等陸曹に任官します!」


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『中隊長』の権限に於いて、バディー名サーシャを一等陸尉に任官しました。 バディー名サーシャは一等陸尉までの装備を使用する事が出来るようになりました。

 また、これにより戦車長とヘリコプターパイロットの技能を獲得しました。]


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『中隊長』の権限に於いて、バディー名エリクシアを一等陸尉に任官しました。バディー名エリクシアは一等陸尉までの装備を使用する事が出来るようになりました。

 また、これにより戦車長とヘリコプターパイロットの技能を獲得しました。]


 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『中隊長』の権限に於いて、固体名ヴァイオラを一等陸曹に任官しました。固体名ヴァイオラは一等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。]

 

 [長瀬冬馬はワンマンアーミー『中隊長』の権限に於いて、固体名セレナを一等陸曹に任官しました。固体名セレナは一等陸曹までの装備を使用する事が出来るようになりました。

 また、これにより看護師の技能を獲得しました。]


 みんの昇級によるアップロード酔いが収まったようだ。


 俺はみんなの手を取り立たせてあげて、家族みんなに告げた。


 「さあ、プロセピナに戻ろう。街のみなが待っている。」

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