第151話京子、忙殺

ただでさえ忙しいのにバイクの免許を取るために貴重な休日も埋まってしまった。田野君にそれを伝えると、


「仕方が無いよ。怪我だけは気を付けてね」


ローテーションで部活をしていると先輩だらけになってしまう。廊下では挨拶するばかりだ。教室では新子さんと打ち合わせ、浅田とのバイク談義、古沢さんのストーキング対策と暇が無い。


「京子ちゃん、バイクの免許とるんだって?すごーい」


古沢さんはなにか私に変化が有ると見逃さない。そしてどこから得るのか情報も正確である。


「京子ちゃんのタンデムシートに1番に座るのは私よ」


古沢さんは粘着質でしつこいので乗せてあげよう。断ろうものならどんなトラブルになるか恐ろしい。


「古沢さんの後で良いから私も乗せてね」


新子さんが言った。古沢さんも新子さんの態度を見習ってほしい。なんだかんだやっているとすぐに授業など終わってしまう。慌ただしい1日、今日は柔道だ。素早く柔道着に着替えた。ストレッチをして全体稽古に入る。


「綾小路。今日は試合形式で稽古をする。準備しろ」


私は小指にテーピングをした。経験的に先輩を観察すると指に故障が多い人が沢山居る。組み手でしっかり掴んだ手を切られて離れた時に指の腱を痛めるのだ。マレットフィンガーもよくある怪我だ。


「綾小路、もっと攻めろ、前に出ろ」


先輩のげきが飛ぶ。しかし攻めようにも私の戦い方はみんな知っているのでなかなか得意の組み手に持ち込めない。お互い膠着状態こうちゃくじょうたいで4分間が終わった。


「綾小路。寝技を勉強しろ」


顧問から言われて確かに私は寝技にあまり時間を割いていなかった。早速寝技の勉強を始めた。全体稽古でも寝技の稽古は有るが、さらに相手を寝技に持ち込む稽古を寝技に詳しい先輩に教えてもらった。あっという間に部活動の時間は終わり、帰れば家庭教師の羽生さんが待っている。まったく忙しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る