第28話オッサンの証明
「なに?俺が死んでるかどうか気になるんか」
そうだよ。あんたの正体が知りたい。
「それは神様から禁止されてるからできへん」
せめてお墓でも見せてよ。
「それやってもうたら俺の事全部バレるやん」
バレて困る事でも?
「そりゃ困るで。今やとネットで検索できるやん」
検索で出てくるほどの有名人なの?
「まあ、ちょっとその界隈では名前が知られてる」
何で死んだの?
「酔っぱらって道で寝てたのを車にひかれた」
うわ、痛そう。
「それが全然痛くないねん。酔ってたからかな」
で、気が付けばあの世に居たの?
「そうやねん。そこで神様に呼び止められて今に至るんや」
それで私を更生させろって言われたのね。断らなかったの?
「そんなん断られへんやん。神様のお願いやで!」
オッサンは名前すら名乗らない。余程込み入った事情があるんだろう。
今日はジムも休みだし、走りに行くか。
「ええねぇ。走ろ、走ろ」
河川敷にやって来た。思う様走る。汗が冷たい。
「風邪引かんように気をつけんとあかんで」
オッサンはオッサンなりに私に気を使っている。それはずっと一緒だからだ。でもオッサンの言う事は的確で、私は何度も助けられた。私はオッサンの事を知りたい。
「いつか教える時が来る。今はその時期じゃないんや。堪忍してや」
オッサンは申し訳なさそうに語る。悪人ではなさそうだ。まあ神様から選ばれた人だからそれはないか。
「なあ、京子ちゃん。人間死んだらあの世行きやで。そこで天国と地獄へ行く人間に振り分けられるんや。ほんとの話やで」
オッサンが何時になく真剣に語っている。そりゃそうだ。だからオッサンは私に取り付いている。こうして会話の中から絶対にオッサンの正体を暴いてやると決心した。
「まあ、できるならやってみいや」
オッサンはいくつかのヒントを残した。路上に寝ころんで車にひかれた。それは近畿で起きた。
「京子ちゃん、甘い甘い。そんなんじゃとても俺には辿り着けへんで」
この野郎!と私は思った。
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