第29話霊能者

最近は外にブラブラする余裕が出来た。Tシャツにジーンズにスニーカー。女の子の色気はゼロだ。本屋にでも行こうとするとおばさんに声を掛けられた。


「貴女、憑いてるわよ」


ドキッとした。聞いてみた。


「男性の霊が憑いてるわ」


ちょっと詳しい話が聞きたいのでカフェに誘ってみると承諾してくれた。具体的に聞いてみた。どんな霊ですか?


「精悍な男性の霊よ。とても強い力を持っています」


「なんや、このおばちゃん、人間やないか」


オッサンはそう言った。おばさんは続けた。


「貴女に憑いている霊は貴女を守る強い守護霊です」


ふーん、私はどうすれば良いのですか?


「貴女は自然に正しい選択をするようにこの霊は誘導してくれます」


おばさんは名刺を取り出して私に手渡した。名前と連絡先のみのシンプルなものだ。


「私はこれから用事があるのでここでお別れです。貴女とはもっとお話がしたいのですが、これは仕方ないです」


そう言って席を立った。オッサン、どう思う?


「あのおばちゃんは本物やな。たまにおるねん。視えてしまう人は。ただ面倒くさいから知らないふりしてる人が多いんちやうか?何せ霊が見えるなんて言ったら頭おかしい人に見られるからな」


なるほど、面倒くさいね。でも視える人と話できるのはとても大きい収穫だ。


「でもな、視える人間でもただ視えるだけで細かいとこまではわからへんのとちゃうか」


流石に詳しいと私も困る。あらぬ詮索はされたくない。


「そうやろ?あんまり詮索されたら京子ちゃんも困るやろ」


それはそうだ。お金取られたりしたら大変だ。


「まあそこまでの悪意は感じへんかったけどな。純粋に人助けしたいんかもしれんな」


このおばさんとはこの後深い知り合いになるとは思っていなかった。

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