第161話京子、トラブルに巻き込まれる その2

弓道部から出てくるところをアーチェリー部員に見つかった。


「綾小路さん、弓道部に何か関係でもあるんですか?」


何か興奮している。その場では何事も無く去ったのだが、翌日新子さんに聞いてみると、


「ああ、弓道部とアーチェリー部は仲悪いのは有名だよ」


しまった、厄介な事になった。なんでも代々双方が敵視しあっていると言う。気になって覗きに行くと弓道部部長とアーチェリー部部長が話をしている。どうしたの?


「貴女が顔を出したのでちょっと揉めていてね」


双方の鬱憤うっぷんが溜まったところに私が顔を出したので部員達の怒りがあふれ出た。


「こりゃ京子ちゃん、なんとかせんとあかんで」


オッサンが言う。一体どうすれば良いのか、悩んだが桐生の弓、という程他校から呼ばれているほど桐生学園は強豪なのである。私は誠実になるしかないと思い、双方の部長に提案した。30分後、双方の部員が集めれれて私はその前に立った。脇には双方の部長が居る。


「弓道部の皆さん、アーチェリー部の皆さん、聞いてください。私は弓が好きです。練習風景を見ていると何故か落ち着きます。それは皆さんが強い想いで弓を引いているからです。その姿は力強く、美しい。だから互いに敵視する事無く、仲良くしてください。そして私のささやかな楽しみ、皆さんの練習風景を眺める、と言う楽しみを奪わないでください。お願いします」


私は静かに頭を下げた。双方の部員から拍手が起きた。双方の部員が去った後、2人の部長から感謝された。


「我々部長も双方の確執に頭を悩ませてきた。綾小路さんの言葉が部員達に届いたかはわからないが、1つのきっかけになったと思う」


私は内心ハラハラしていた。勝負だなんて事になったらもう収拾しゅうしゅうがつかない。


「素直に自分の気持ちを伝えたのが良かったな」


オッサンももう大丈夫だろう、と言った。この後も私は弓道部とアーチェリー部に顔を出し、見学した。私が見学するので部員達は真剣に弓を引く。

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