第160話京子、トラブルに巻き込まれる その1
桐生学園には弓道部とアーチェリー部がある。正式には洋弓部であるが、アーチェリー部で通っている。私は弓に対して興味が有るし、弓を引いている部員達を眺めるのは好きだ。ある土曜日の昼下がり、柔道部のお昼の休憩にアーチェリーの練習を見ていた。アーチェリーの弓はカッコイイ。
「そんな遠くから見ないでもこちらへどうぞ」
部員の1人が声を掛けてきた。遠慮もする事は無いので練習場の片隅に体育座りで見学させてもらう事にした。丁度アーチェリー部もお昼の休憩の時間だった。アーチェリーの弓は色々なものを付けてるね。
「はい、命中精度を上げるためです」
持たせてもらった。思いの外、重い。
「結構大変です。弓を引くのも」
なるほど、それはそうだ。私は感心した。何十メートルも離れた的の中心を狙うのは容易ではない。良い体験をさせてもらった。ありがとう。
「綾小路さんなら大歓迎ですよ、また来てください」
アーチェリー場から去った。後々に思うとその後の行動が悪手だった。その足で弓道場に向かった。弓道部はまだ弓を引いていた。アーチェリーには無い、独特の緊張感が有り、私は弓道も好きだった。美しい所作と放たれた矢が的に当たる音の心地良さはアーチェリーには無い。クラスメイトが声を掛けてきた。
「あら、綾小路さん、また来たの?見学していきなよ」
お誘いに応じて道場の片隅で正座する。
「足崩しても良いよ」
大丈夫。正座には慣れてる。静かに稽古は続く。弓道は美しく、見ていても飽きない。そろそろ良い時間になったので弓道場を後にした。その光景をアーチェリー部に見られた。全ての原因はここから始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます