第31話高校受験

「さて、行く高校は決めたんかいな」


オッサンが言った。私は1枚チラシを引き出しから取り出した。


「ほう、ここに決めるんやな」


その高校は桐生学園。私立マンモス高。クラブ活動も盛んで、スポーツ推薦の学生も多い。ここなら良いだろうと狙いを定めた。家庭教師の羽生さんは


「楽勝、楽勝ですよ。もっと上を目指しても良いんだけどね、綾小路さんがここで良いと言うならばここに決めましょう」


実は羽生先生には高校生になっても家庭教師を引き続いて教えてもらう事にした。塾はあまり気に乗らないのだ。


「京子ちゃんがそう言うなら俺も賛成やで」


最後の最後まで悩んだ。田中さんのいる高校ならもっと楽に高校生活を送れるかもしれない。厳しい道を選んだのは私とオッサンの話し合いによって決まったのである。


「ええか、京子ちゃん。キミには今まで神様から試練が与えられてん。決して越えれん障害じゃなかったはずや」


下着姿で鏡の前に立つ。そこには筋肉質な女の子がいた。腹筋も割れている。


「これが神様の1つ目の試練、肉体の超越や。今や京子ちゃんは世界に通じるボクシングのテクニックも身に付けてるで」


そこで神様は第1段階を終えたと判断し、次は柔道とレスリングもしろと言っているそうだ。ここまで来られたのは神様、オッサンのおかげである。これが天啓てんけいと言うやつだろうか。


「さあ、じゃあ桐生学園の準備をしましょう。もう時間があまり無いのよ」


願書の提出期限が近づいてきている。間に合わないわけじゃないけど、急がなければならない。書類には保護者の記名と印鑑が必要だった。


「おお、高校が決まったんだね。サインと印鑑が欲しい?喜んでやろう」


お父さんは喜んで書いて印鑑を押してくれた。学費などの書類と必要な教科書代、制服代の見積もりも出した。


「うん、いい準備だ。京子、幸運の女神は準備する者に来るんだ。その意気込みで試験も受けるんだよ」


お父さんは私を送り出してくれた。後は受験だけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る