第32話試験開始
試験会場には緊張感があった。それも無理はない。スポーツ推薦以外の受験生はみんな競争相手。私はマウンテンジャケットにジーンズのラフな格好で来ていたので更に目立った。
「うわ、こいつデカイ」
聞こえるように陰口を叩く奴がいる。私は睨み返した。リングの上なら料理してやるのに。
「京子ちゃん、挑発に乗ったらあかん。平常心、平常心」
オッサンは必死に私を説得する。しかし私は直ぐ平静を取り戻した。家庭教師の羽生さんも
「京子ちゃんなら大丈夫!自信もって行きましょう」
応援してくれている。受験票に従って教室を探す。すぐに見つかった。机を確認して椅子に座る。座面は固いが良い椅子だ。筆記用具を取り出して準備する。トイレも済ませてあるし、水分も控えめにしてある。準備オッケーである。教室は満員になった。試験官が問題を配る。裏返されたままだ。答案用紙の氏名を書くように指示されたので記入した。
「では、試験開始」
試験官の声で一斉に問題をめくる音がする。あれ?なんだこれ、この問題。めちゃくちゃ簡単じゃないの。
「羽生先生の特訓のおかげやな」
オッサンの言う通りだった。羽生さんは私の学力を見据えて指導してくれていたのだ。余裕を持って試験に打ち込む事が出来た。なんだ、思ったよりストレスフリーじゃないか。
「ええで、ええで京子ちゃん。その調子やで」
余裕である。基本的な事しか問題になっていない。羽生さんの出す問題の方が何倍も難しい時間内に終えて答えの見直しも済ませた。1年前ならとても試験を受けるレベルじゃなかった。羽生さん、ありがとうございます。悠々と退室し、五十嵐の運転するベントレーに乗り込んだ。
「京子お嬢様、如何でしたか?」
余裕、余裕、楽勝!と答えておいた。私は次の目標を見据えていた。
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