第173話私のクラスのヤバい奴

この感覚はまた古沢さんとは違う視線だ。古沢さんは直球の好意を向けて来るが、は違った。彼女、木曽さんは私を真剣にスケッチしているのである。


「ちょっと貴女、京子ちゃんをそんなにスケッチしてどうするのよ!」


古沢さんがスケッチブックを取り上げた。そのスケッチブックにはこれでもかとを描いている。木曽さんはごく普通の女子高生だ。絵を描くことに関して言えば学園で1番ではないだろうか?学園のエントランスホールには四季の風景が描かれた絵が飾られるが全て彼女の作品である。木曽さんは天才である。美術部の重要な部員でもあるが漫画研究部の部員でもある。古沢さんは木曽さんをあやしんだ。


「きっと彼女は何かを隠している。秘密をあばいてやる」


こんな時の古沢さんは便利だ。探偵のように全てを調べる。


「こうなったら漫研の部員から直接聞いてやる」


古沢さんと私は漫研に向かった。旧校舎の1番奥に部室があった。古沢さんと私は漫研の引き戸を開いた。結構部員は多い。


「木曾さんは?」


「今日は美術部で活動中です」


太った男子部員を捕まえて古沢さんは詰問きつもんする。


「木曽さんは綾小路さんの何を?」


「それは百合‥」


「百合?百合って何よ!」


部室がざわついた。


「部外秘だと木曽さんから厳しく言われています」


「でも今、百合って言ったわよね?」


「それ以上は勘弁してください。木曽さんの意向いこうです」


何でも木曽さんが所属しているから漫画研究部も部費を予算で計上できると言う。木曽さんは学園長とも仲が良く、彼女の一存で漫研も解散も存続も良いようにできると言う。


「じゃあ彼女の漫画を見せなさいよ」


古沢さんが本棚をまさぐる。マズい、早く隠せ、と部員が声を出したのを古沢さんと私は聞き逃さなかった。古沢さんは奥に消えようとした部員を捕まえた。彼女の持っていた本はいわゆる同人誌と言われるアマチュアの漫画作品だ。部員から奪った本を古沢さんが読んでいる。何故か私には見せてくれない。


「これが百合漫画ね」


古沢さんが読みふけっている。


「なかなか良い作品ね。私が借りるわ」


そんな、勘弁してくださいと言う部員を振り切って古沢さんは部室を出た。私は残ってその百合漫画の事を聞いた。何でも女の子の同性恋愛漫画だという。私を使って木曽さんは百合漫画を描いていた。しかしその私を描いた作品は全て古沢さんが持って行ってしまった。


「木曾さんの作品は買えますよ」


何?売り物?


「はい、来週の同人誌の販売会にサークルで売りますよ」


これは面白くなってきた。

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