第172話京子とバイク

私はフルオーダーしたレーサー用のウェアに着替えた背中、肩、あらゆるところにプロテクターが着けてある。安全には万全を尽くす。今日は日曜日。春の心地よさと愛車にまたがる楽しみを味わうつもりだ。最初は1台にしておこうと思ったが他のバイクも楽しそうで、父親を説得した挙句あげく、4台もバイクを所有する事になった。広い駐車場の一角は京子のバイク置き場になった。次に手を付けたのはメインテナンスだ。中古車を格安で購入し、徹底的に分解、レストアした。そうだ、新学期だしバイクで登校しよう。月曜の明日は送迎を要らないように五十嵐に伝えると五十嵐もバイクで付き添うと言う。バイクも乗れるんだ。


「昔は雷族と言ったものも有りました。現在よりも2輪免許は取得しやすかったのですよ」


私は正門から道路に出た。心地よい振動が春の陽気と相性が良い。散り桜の中を安全運転で走る。このなエンジンがアクセルをもっと開けと催促してくるが構わず安全運転である。桜並木をゆっくりと通り抜ける。このまま何処どこまでも乗っていきたい。そろそろ帰ろう。今日は愛車のKTMの他にも購入したバイクをなまらせないように乗り回す。CB400、トライアンフ、ハンターカブ、どれもヴィンテージバイクだ。パーツ取りのバイク置き場を確保するのにも困らなかった。バイクに何時でも触れる時間は有るが、勉強をおろそかに出来ない。みんな、今日もありがとう。バイクにそう挨拶する私だった。


翌日。ハンターカブで登校する。アップマフラーが規則正しく排気をする。


「おっ!今日はハンターカブかい」


バイク野郎の溜まり場にバイクを置く。


「CB400の調子はどうだ?」


まあまあだよ。


「今度運転させてくれよ」


いやだよ、自分のバイクを大切にね。五十嵐に手を振った。これまた年季の入ったBSAが校門前から去って行った。下校も迎えに来てくれると言う。


「綾小路は背が高いからリッターオーバーでも楽に乗れそうだよな」


バイクの話をするのも楽しい。今度みんなでツーリングへ行こうと約束した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る