第171話席替え

新しい2年A組は席が決まっていなかった。例によって座高が高い私は一番後ろの窓側だ。しかしそれがまずかった。くじ引きで決められた席替えで、横が古沢さん、前が田野君になった。


「キャー京子ちゃんのお隣だ!」


古沢さんの喜びが全身から出ている。困った。そして前の席は田野君。


「京子ちゃん、よろしくね」


田野君は優しい。古沢さんの視線を感じるが気にしない事にした。今日は新学年の新学期なので授業は無い。田野君、遊ばない?


「うん、良いよ」


田野君は答えた。隣で古沢さんがえた。


「ハァ?デート?田野君とデート?私も連れてって」


やっぱり古沢さんが噛みついて来た。新子さんに助けを求めたがマネージャーの仕事があるらしく、無理だと言う。じゃあ三人でお茶でもしようか。


「うん、それが良いね、行こう、行こう」


田野君は少し困った顔をしたが直ぐに落ち着いて穏やかな顔になった。私、田野君、古沢さん。穏やかでは無いメンツだ。午前中にクラスメートの自己紹介が終わり、私達3人はカフェに行った。


「で、お2人さんはどこまで進んでるの」


田野君は驚いて、


「いや、デートしたりしてるよ」


「そんなことは知ってるわ。おでんを食べに行ったわよね」


「何故それを知ってるの」


「京子ちゃんの行動は観察済みよ」


田野君と古沢さんのやり取りを見ていると何故か楽しい。


「古沢さん、教えてあげようか?」


古沢さんがこちらへ体の向きを変えた。


「キスまでよ」


「何ィ!」


古沢さんが般若の様な顔になったが、すぐに落ち着いて、まあカップルだし当然よねとコーヒーを飲んだが手が震えている。古沢さん、私にとって田野君は大切な人なの。わかって。


「まあそう言われたらそうよね」


いつになくトーンダウンした古沢さんは女子高生になった。私は席替えを思い出した。頭が痛い。帰宅後、田野君からメールが来た。


「これからはメールで約束をしよう。どこで誰が聞いているかわからない」


正論だ。これからはそうしよう。私と田野君はたまたま席がお隣のクラスメートと言う事にした。私のファンクラブがどこに潜んでいるかわからない。


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