第73話木下ボクシングジムにて

「よっ!インターハイ優勝おめでとう」


久し振りに木下ボクシングジムにやって来ると田中さんが声を掛けてきた。ありがとう、田中さん。


「綾小路ちゃんが居ない木下は楽しくないよ」


田中さんはそう言った。これから時間あるからボチボチ顔出すよ。


リングが空いたのでスパーをしようとなった。ヘッドギアをかぶり、マウスピースを口に放り込む。


タイマーがセットされスタートした。3分間だ。私と田中さんは戦い方を知っているのでそれぞれがまるで会話をしているようなスパーだった。


「京子ちゃんとスパー出来て楽しかったよ」


うん、私も楽しかった。


「京子ちゃんがインターハイ優勝した時、ジムも凄く話題になったんだよ」


田中さんは優しい。言葉に裏表が無い。


「部活で忙しくて。これからは顔を出すよ」


前代未聞の3冠達成で新聞にも取り上げられ、私は時の人となった。でも私は自慢する事じゃないと心から思っている。人間には結果と過程を大切にしないといけないと私は思っている。取材を受けた時は必ずそう言う事にしている。


「京子ちゃんが来るとジムも活気が出るなぁ」


木下会長が声を掛けてきた。お久しぶりです。


「よく頑張った、おめでとさん」


そう言ってジム生の練習を見ている。私の原点がここにある。田中さんと会えたのも嬉しいし、みんなと会えて嬉しい。


「ねえ京子ちゃん、帰りラーメン食べに行こ」


良いねぇ、ラーメン。行こう行こう。五十嵐に送迎の変更を連絡して練習後、田中さんとラーメンを食べに行った。美味しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る