第36話部活見学 その2

新子さんを連れて来たのはレスリング部だ。強豪校だけあってエアコンもバッチリある。


「綾小路さん、本気なの‥」


新子さんはなかあきらめている様に見える。


「新子ちゃんは嫌とは言えん性格みたいやで、気ぃ使ってあげんとあかんで」


オッサンは言った。もちろん、引き込むような事はしない。うん、わかってる。


「ええ感じやん、レスリング部」


常に清潔に保たれている部屋はそれに反して汗だくの部員たちが基礎練習をしている。


「ええな。基礎に時間使ってる所は強いで」


「部活見学かい?」


はい、1年A組綾小路京子です。


「綾小路君、立派な体格だね」


いえ、それほどでも。


「女子部はこっちだよ」


奥にまたレスリングマットがあって、女子がトレーニングしている。


「女子と男子は顧問が別々なんだ。中村さん、よろしく」


中村と呼ばれた顧問は私を見て


「デカイな。身長は?」


190センチです。


「アタシよりデカイじゃないか」


まあいきなり決めなくても良いからゆっくり見て言ってよ、と中村顧問は奥へ消えた。練習している部員がチラチラこちらを見ている。バレていないと思っているのか単細胞なのかバレバレである。


「京子ちゃん、滅茶苦茶見られているね」


そりゃもう、ライバルになるんだからね。ピピっとタイマーが鳴った。休憩時間らしい。すぐさま私と新子さんは囲まれてしまった。部員は皆、たくましい。


「噂には聞いていたが君が綾小路さんか」


女子部部長の立山だ、よろしく。握手を求めて来た。握手する。強烈な力で私の手を握り込んで来た。私も負けない。


「うん、素晴らしい握力だ。私達は君達を歓迎するよ」


「いえ、私は違いますよ」


みな不思議そうに新子さんを見た。いや、視線送っても入部しませんよ。

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