第37話部活見学 その3

最後の部活見学は柔道だ。柔道場も非常に良い施設だ。乱取りをしている。汗の匂いが凄い。


「なんだ、見学か」


横柄なオッサンが顧問か。


「適当そうなオッサンやけど、中々の指導力やで」


そうか。新子さんに聞いてみた。


「ちょっと怖いです」


確かに無駄に威圧感がある。ポロシャツの下は出た腹だ。一番気に食わない部活だな。何より部員一同笑顔が無い。壁に『全国大会出場』と揮毫きごうされている。


「何!お前女子か」


スカート履いてるんだから気が付けよ。


「ウチは女子が少ないから大歓迎だ」


しかしみんなストイックに稽古に力を入れているのがわかる。楽しく柔道をすると言うより勝利と言うものが部員らを圧しているように思える。


「見学させていただきます」


そう言って汗の匂いの中、隅に新子さんと正座した。


「雰囲気は一番悪いね」


私はうなずいた。


「京子ちゃんがこの雰囲気を変えるんやで!」


オッサンが力む。生きてたら良いんだけど、死んでたらただの死んだオッサンだ。


「うるさいで、京子ちゃん!」


図星か?図星でしょ?


「まあいいわ、どうせ入部するし。今日はゆっくり見学させてもらおう」


正座して見学していると女子の一人がこちらへ向かって来る。


「こんにちは。女子部部長の高崎だ」


時間は有る、ゆっくり考えてくれ、と男勝りの言葉使いだが一番印象が良かった。新子さんに言う。


「柔道部も悪くないかも」


「京子ちゃん、本気で三つも掛け持ちする気?」


「校則に掛け持ち禁止とは書いてなかったよ」


「心配だなぁ」


新子さんは心配している。アッと小さく新子さんは声を出した。


「そうだ、私が京子ちゃんを

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