第7話1番痩せる所

オッサンが取りついてから私は鏡を見るのが嫌にならなくなった。まだまだだらしない体だけど、自分に自信が持てたのだろうか?


「京子ちゃん、手鏡で自分の顔見てみ」


私は手鏡を取り出して自分の顔を見た。顔の無駄な贅肉が落ち、シャープになっている。


「太ってて最初に痩せるのは顔やねん。もっとキリッとした顔になるで」


最近すこぶる体調が良い。夜の10時には寝て、朝の6時には起きる。そしてトレーニング。オッサンの勧めでプロテインも飲んでいる。


「何より大切なのはタンパク質とビタミン、アミノ酸。覚えときや」


プロテインを飲んで朝食。両親との食事だ。


「あら、京子ちゃん、見る間に痩せてるわよ」


母親が言う。どうでも良い。


「あの、お願いがあるんだけど」


私が家庭教師を雇ってほしいと言った。


「高校行きたいから」


両親は喜んだ。父は


「よし、最高の家庭教師をつけよう」


乗り気である。娘の変化に喜んでいるのだろうか。盗聴器を付けていたのに。


「よしゃ、勉強もトレーニングも頑張るんやで」


オッサンも励ましてくれる。


「でも俺は勉強苦手やさかい、勉強の時はで」


なんだ、やっぱり勉強は苦手か。


「俺も完璧人間ちゃうからな。勘弁してな」


わかった。自分で何とかする。


「ほな、夕方のトレーニングやろうか」


最初はひたすらウォーキングだったが、徐々にマシンを使う事が多くなった。

一番つらいのが腹筋だ。


「こればかりはガンガンやらせてもらうわ」


私を乗っ取り、ひたすら腹筋をする。


「京子ちゃん、毎日似たようなトレーニングばかりやからちょっと変えてみようか」


何するの?


「ピラティス教室へ通うんや」


またとんでもない事を言い出す。ハイハイわかりましたと私が言うと


「よしゃ、じゃあサンドバッグ打とうか」


私の一番お気に入りのトレーニング。目一杯サンドバッグに打ち込む。どんどん私が変化してきている。

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