第21話進路

「スポーツに強い私立校はこの2件になるね」


家庭教師の羽生さんが調べてくれた。私立でスポーツにも力を入れている高校。ボクシング、柔道、レスリング部有り。部活動の掛け持ち可。


「でも京子さん、部活を3つもするなんて大変よ」


大丈夫っすと答えてはいるが正直不安である。それもオッサンの強いプッシュがあるからだ。


「オープンキャンパスが有るわよ。行ってみたら良いんじゃないかな」


そうアドバイスする羽生だが一抹の不安がある。彼女は大丈夫だろうか。親御さんから伺うと巨体をいじめのターゲットにされて不登校になったと言う。しかし今目の前に居る彼女は筋肉質で、すらりとしているが痩せていると言うより無駄な脂肪が無いといった体型である。そして非常に目立つ。


「オープンキャンパスなら私も一緒に行くからね」


羽生さんは優しい。何時も私の応援をしてくれる。


「羽生さん、私大丈夫です、きっと上手く行きますよ」


またいじめにあったらぶん殴ります。


「京子ちゃんのそう言うとこが危険なのよ」


京子にむしゃぶりつく。


「京子ちゃんは私の教え子でも成績はトップクラスよ。暴力なんて必要ない。きっと上手く行くから」


まあまあ羽生先生、落ち着いて。ハッと気を取り直して京子から離れた。


「まだ時間は有るから、ゆっくり選びましょう」


羽生先生は優秀な家庭教師だ。人気も有るだろう。教えるのも上手いし、手を抜かない。きっと私の進路も悩んでくれたに違いない。


「じゃあ授業を始めましょう」


勉強が始まった。静かな時間だ。


「まあ、この先生もそれなりに京子ちゃんの心配をしてくれてるんやで」


送迎車を見送ってオッサンと話した。


「でも現実的に勉強してクラブ活動3つ掛け持ちなんてできると思う?」


「できないと思うからできへんのやで、京子ちゃん。多くの人達がおちいる罠やな」


やると決めればできると言う事か。神様も酷な事を言ってくれる。いや、神様が与えてくれた試練なのかもしれない。



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