第15話友達
木下ボクシングジムに通う事になった。月曜、水曜、金曜日の夜は女性のみのジムになる。娘さんに聞くと女子向けのクラスを作ったのは娘さんの提案だったそうだ。10人程度で賑やかだ。
「よしゃ。俺が入るで」
オッサンは私の意識を残しつつ身体を乗っ取るようになった。
「京子ちゃんはミドル級やな」
オッサンが言った。もちろん、私の意識下でだ。
「綾小路さん、デカいね」
みんなが声を掛けて来る。適当にあしらう。壁に貼ってある階級表を目で追う。72キロがミドル級か。後約8キロ。
「十分絞れる重さやな」
オッサンと会話してると女の子が話しかけてきた。
「綾小路さん、ほんと大きいよね」
私とは正反対な身長差。可愛い。
「私、田中みどりです。よろしく」
気さくに話しかけて来る女の子だ。色々と話をした。
「えっ!まだ15歳?末恐ろしいわ」
私を輪にして会話が弾んだ。これだけの人と会話出来たのはいつからだろう。
木下会長が、はい練習始まるよと声を出した。みんなで輪になって準備運動とストレッチをした。
「綾小路さん、初心者じゃないでしょう」
田中さんが言った。周囲の女子も話しかけてきた。
「うんうん、身体の絞り具合がボクサーのそれだよね」
いえいえ、家に有るサンドバッグを打っていただけです。
「家にサンドバッグある家ってどうなの」
はは、殴るのが楽しいので。
「綾小路さんが本気出したら私達瞬殺だわ」
私はサンドバッグを打っていた。
「ほなちょっと本気でやろか」
オッサンが左フックを放った。鈍い音を放ってサンドバッグが揺れる。
「素晴らしい!」
木下会長が私に声を掛けてきた。
「君にはボクシングの才能が有るよ」
ベタ褒めである。
「しかし君の階級で練習できる相手が居ないねえ」
私、やりますよと言って来たのは田中みどりだった。後の私のかけがえのない友達だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます