第14話ランニング

「もうそろそろええんちゃう?」


オッサンは外にランニングに出る事を勧めてきた。季節は秋で、走りやすいと言う。


「気分転換になってええで」


私は最新のランニングウェアとサポートタイツにショートパンツというスタイルでジョギングを始めた。防犯カメラに私の姿が見えているだろう。気にせず玄関の門を出た。夏はすっかり去り、秋の空気がやって来ていた。


「秋やねえ。じゃ、頑張ろか」


オッサンが私の身体を乗っ取る。最初の頃は完全に私の身体を支配していたオッサンだったが、少しずつ私に感覚を戻していた。完全に支配された時はもう自分の感覚は無くなり、操られるがままだったが、今は感覚を全て支配はしていない。具体的に言えば風を切って走る時の心地よさ。すごく気持ち良い。


「たまには外もええやろ」


うん、と答えた時、私はオッサンを認めてしまったような気がして何だか悔しい。風を切って私は走り続ける。河川敷にやって来た。夕日が美しい。


「どや、京子ちゃん。たまには外で走ろうや」


うん、そうしよう。そろそろ帰ろうか。


「そやな。晩御飯食べよ」


家に帰ってシャワーを浴びた。体重計に乗ると80キロ。大分体も軽くなった。


「ええ感じや。こっから絞ろうや」


食堂へ来た。珍しく家族全員が揃った。私がテーブルに着くとサラダと鶏のささ身が出される。


「本日は香草を使ったサラダです。温野菜もどうぞ。鶏のささ身に掛けるソースは味噌をベースにしてあります」


毎日色々と工夫してくれる。とっても助かる。


「なんだ、京子、すっかり痩せたな」


兄は私を見てそう言った。兄は私に興味が無い。ただ世間体だけは気にしている。


「私、変わるから」


弟もこの言葉にびっくりしていた。


「京子姉ちゃん、頑張れよ」


応援してくれた。弟の達也は何時も姉思いだった。


「私、来年、高校受験するから」


食堂が動揺した。敢えて宣言しろと言うオッサンのアドバイスだ。

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