第75話桐生学園新聞部

インターハイ前代未聞の3冠、おめでとうございます。


「ありがとうございます」


現在はどのような心境でしょうか?


「インターハイも嬉しいのですが後の大会も視野にあるので油断できませんね」


ボクシング、レスリング、柔道とこの3種目をやろうとしたのは何故ですか?


「純粋に言えば勝利の嬉しさを求めた結果、この3種目になったと思います」


インターハイを制した今、次の目標は有りますか?


「次は国体ですね。努力あるのみです」


レコーダーを止めて、新聞部の取材は終わった。


「なんや京子ちゃん、もっとホラ吹いてもええんやで。オリンピックとか」


馬鹿、そんな事言ったら自惚うぬぼれになるじゃない。実際、オリンピックへの道は遥かに遠い。


「もっとガツガツ言ってええんやで。肉食女子や」


いや、もう十分肉食だよ。


数日して学校の掲示板に学園新聞が張り出された。私が大きく映っている。


「こりゃもう有名人ではすまんな。頑張ろうや」


オッサンはそう言うが日本全国のボクシング、レスリング、柔道の選手を敵に回したのかもしれない。


「まあシンプルに強い奴は勝ち、弱い奴は負ける。でもそこには魔物が潜んでるんや。ちょっとした油断や隙で一気に勝ちを逃す事も有る。まして京子ちゃんは追う側から追われる側になったんやで。今まで以上に気をつけんとあかん」


オッサンの言う事はもっともだ。たまたま勝機の針が私に振り切っていて勝てた。しかし軽い怪我でもしようものならたちまち勝利を逃してしまう。難しい所だ。教室に入り、私はため息をついた。

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