第8話ティラピス

「綾小路さん、素晴らしい!」


ティラピスの講師がべた褒めだ。


「柔軟性、筋力、すばらしい」


「ありがとうございます」


オッサンは私の声で答えた。オッサンが私の身体を支配している時は何でもないが、オッサンがあとのダメージは全て私のものになる。


あのさぁ楽しむのは良いんだけどさぁ。


「京子ちゃん、トレーニングの成果が出てるで!ティラピスのメニューこなせるやん」


そのは全て私の身体に降りかかってくる。案の定帰宅して自分の部屋に帰るとオッサンは抜けて私の身体は分解されるような疲労が襲って来る。


「もうピラティス教室は行けそうやろ?体幹たいかんも鍛えれてバッチリやない」


私を襲う疲労感でベッドに横になるので精一杯だった。ピラティス、キツイよ。


「普段使わん筋肉使うからな。しゃあないわな」


オッサンは私を筋肉バカにしようとしているのだろうか?


「アホな。京子ちゃんの長所を伸ばそうとしてるんやで」


筋肉付けてどうするの?


「そこは任せとき。オッサン、考えがあるねん」


私にボクシングを教えると言う。


「京子ちゃんはダイヤの原石なんやで。磨けば輝くんや」


何を言っているんだ、このオッサンは。確かに体を動かすのは体調にいいと感じるし、サンドバッグを殴るのは楽しい。


「そうやろ?徐々に京子ちゃんは変わって来てるで」


ボロボロに疲れた体を引きずって、鏡の前に立つ。以前よりかはずいぶん痩せたものだ。


「もっともっと素敵な肉体になるで」


オッサンのヨイショは絶妙なタイミングで来る。ゴマすりの上手い奴だ。


「ええよ、ええよ。文句言って。でもオッサンもこれが仕事やから堪忍やで」


申し訳なさそうに言うがきっと明日もトレーニングが続く。私はオッサンと対決する事に決めた。

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