第156話期末テスト

テスト期間になった。部活は無い。努力して勉強に励んだ人間には腕試し、サボって来た人間には地獄。中間は無い。桐生学園の校訓は文武両道だ。どんなに勉強が苦手でも避けて通れない。しかし桐生学園生徒には心配は要らない。スポーツ推薦の無い桐生学園は運動部でも成績は重要である。こんな学園でも大量に国公立の大学に合格させるだけの実力を持っている。私の気に入らないこの学園のところはマメに小テストを実施して生徒の成績を計測するところだ。


「始まったね、期末テスト」


ちょっとゆっくり体を休めれそうだよ、と言うと、


「夏と同じこと言ってるよ」


新子さんは笑った。そうなのだ。夏もそうだった。ハードな部活の練習から解放される唯一の期間だ。


「京子さん、私は不安です」


メリッサは落ち着きが無い。大丈夫、落ち着いてやればできるよ。1年も最後の大きなテストになる。1年でも大学進学には必要なテストだ。ちなみに桐生学園は偏差値が60の学園だ。


「それでは始めてください」


初回に数学を持ってくるのが桐生学園の特徴である。私は数学と物理が苦手だ。やれと言われたらするが。家庭教師の羽生さんも無理をする時期ではないから、赤点を取らなければ良いとの指導があったので、私も力まず出来た。テストが終わり、回収された。


「やっと数学が終わった」


「ダメだ予想が外れた」


「補習決定だ」


阿鼻叫喚である。メリッサ、どうだった?


「なんとか赤点はまぬがれそうです」


よかったね。新子さんと田野君は心配無い。クラスでもトップを争う成績優良者だ。かくいう私はぼちぼちやっている。


「ねぇ京子ちゃん、学校で明日のテストの勉強しない?」


良いね。やろうやろう。いつのまにか来た古沢さんもやろう、やろうと言う。田野君も快諾かいだくしてくれて、鍋のメンバーが揃った。机を寄せ合い、科目の予想をした明日は古文と現代史だ。メリッサ、大丈夫?


「はい、大丈夫だと思います」


メリッサは生まれはアメリカだが徹底的に祖母から日本についての文化と歴史を学んだと言う。


「でもアメリカのカルチャーも好きです」


素直に言い切るメリッサは良い。自国の文化を卑下ひげする日本人も居るのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る