第155話鍋パーティ

「ご馳走になって良いのかしら」


新子さんは戸惑っている。まあ、気にせず楽しんでよ。私のお父さん、お客さんをもてなすのを楽しみにしているんだ。


みんな家に夕食をご馳走になる事を電話で伝えている。メリッサも電話をしている。


「じゃあ皆さん、楽しんでください」


父親が鍋の説明をする。


「今日は良いフグが手に入ったので鍋以外にも楽しんでください」


ふぐと聞いて一同ざわついた。古沢さんは、


「ふぐなんて食べた事無いわ」


「ちょっと豪華すぎるわ」


新子さんの言葉の間にも鍋の準備がされる。鍋が2つ用意された。


「具材は十分あるので気にせず食べてください」


あまりのタイミングの良さに、今日の夕食はフグにする予定だったのだろう。グツグツと鍋の蓋が音を立てている。田野君が、


「もうそろそろ良いんじゃないかな」


一斉に蓋を開ける。フグ鍋である。関西ではてっちりだったっけ。メリッサ、たくさん食べてね。


「ありがとう、綾小路さん」


メリッサ、私は京子で良いよ。


「うん、京子ちゃん、ありがとう」


メリッサは箸の使い方も上手い。フグと野菜をバランスよく器に移す。洗練された所作しょさだ。私は鍋奉行なべぶぎょうになって手際よく具材を入れていく。


「美味しい‥‥いくらでも食べれそう」


みんなで楽しく鍋をつついているとフグの唐揚げが運ばれてきた。田野君が1つ食べると、


「美味しい!みんな食べてみて」


みんなが唐揚げを食べる。美味しい、贅沢だなぁと感想が聞こえる。お腹一杯食べてね。2つの鍋の具材は空になった。そうしていると雑炊の準備がされた。ここからがフグ鍋の美味しいところだよ。


「美味しい雑炊です」


メリッサも気に入ったようだ。


「最後まで美味しい。なんて贅沢ぜいたく


みんな満腹になって帰る事になった。五十嵐がワゴン車で送迎をしてくれる。みんな、また学校でね。


車からみんな手を振っている。楽しい食事だった。リビングに戻ると父親が居た。お父さん、ありがとう。


「礼には及ばないよ。楽しんでくれたならそれが1番嬉しい」


私の父は人に尽くすタイプだ。そうして大企業に成長した後も社員への心使いも細かい。メイドさんや五十嵐も十分な給料で家族をやしなっている。父親が居なくなったら会社はどうなるだろうか?一抹の不安を抱えて私は父親と談笑した。

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