第154話美しい字

メリッサ、もうすぐ期末試験だけど大丈夫?朝、聞いてみた。


「全然大丈夫じゃないです」


まあこんな時期に転校なんだから仕方が無いよね。新子さんが、


「じゃあ、皆で勉強会しようか」


じゃあ、家来てする。


「本当?行く行く!」


いつの間にか古沢さんが居た。グイグイ来る。


「ありがとうございます。是非参加したいです」


メリッサは喜んだ。じゃあ日曜日の午後、うちの家にしよう。一旦学校へ集まってから車で一気に迎えに行くよ。メンバーはメリッサ、田野君、新子さん、古沢さん。まあ良いメンバーだ。勉強会が決まった。


「綾小路さん、今日はボクシング部に行かないのですか?」


いや、今日はレスリング部の部活なんだ。


「部活動を掛け持ち?すごいですね私にはボクシング部で手一杯です」


メリッサは表裏の無い子だ。だからクラスでも人気がある。国語の授業の時黒板に彼女が書いた文字に私は驚いた。なんと美しい文字だろうか。聞いてみると祖母が習字教室をやっていて、幼い頃から漢字を書いていたと言う。すごいね。


「ありがとう、綾小路さん」


メリッサは素直にお礼をした。律儀りちぎである。あっという間に日曜がやって来た。バイクの教習は午前中で終わり、午後からは予定を作らなくて正解だった。五十嵐の車でやって来た一同は私の家には慣れているがメリッサには新鮮に見えたようだ。


「素晴らしいお庭ですね」


メリッサは感動している。今は冬だから庭も寂しいよ。


「是非春に来たいです」


私の部屋に皆が集まった。ティータイムの準備もメイド長の笹原さんにお願いしているのでみんなでお茶しよう。勉強会が始まった。しかし以外にもメリッサは問題を良く解く。苦手科目を聞くと古文と国語が苦手だと言う。でも心配無さそうだ。3時になったので一息つこう。笹原さんが紅茶とスコーンを持って来てくれた。


「桐生学園の皆さんはとても優しいです」


やはり彼女は奇異の目で見られることが多かったと言う。黒人なのに字も美しく、成績も良いとなれば複雑な感情にもなるだろう。私もそんな扱いだ。突然父親がやって来た。


「みなさん、勉強お疲れ様。良かったら我が家で夕食を食べて行ってください。今日は鍋料理だ」


メリッサを含めて皆喜んだ。よし、じゃあティータイムは終わりにして勉強頑張ろう。

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