私、オッサンに取り憑かれました。

ミツル

第1話綾小路京子

昼夜逆転の生活は私を不摂生な生活を送らせるのに十分であった。両親は私を恐れて放任している。兄と弟が出来の良い家庭に生まれるとこうも苦しくなるとは思わなかった。いつしか私は過食になり、ブクブクと太ってしまった。15歳で身長は190センチ。体重は100キロから数えていない。姿見の鏡には洋服を掛けて自分の姿が見えないようにしている。布団の中でうつらうつらしている。


「おはようさん、京子ちゃん」


誰だ?明らかなオッサンの声である。幻聴か?


「いやいや、幻聴ちゃうで。ワシの声やがな」


馴れ馴れしく語って来る。


「幻聴じゃなかったら何なんですか」


「それ言う前に、キミ、監視されてるで」


ベッドの下に盗聴器が有るというのだ。何を言っているのか、このオッサンは。

しかし気になるので調べてみると


有った。2個も。


「なあ、京子ちゃん、俺の話も聞いてえな」


ベッドに2個の盗聴器、私、謎の声のオッサン。


「盗聴器オフにしたかったら裏側のスイッチやで」


見るとスイッチが有った。私はスイッチを切った。


「京子ちゃん、いい加減認めてえな」


うるさい、だまれ。


「そうか、そうか、じゃあちょっとやらせてもらうで」


体の血管中の血管に何かが流れ込んだ。途端に私はベッドから降りた。私の意思ではない明らかにこのの意思で私の体が操られている。


「な、ゆうたやろ。俺は幻聴でもなんでもないで」


じゃあ何なの?


「これはな、神様の意思なんや」


どうやってそれを証明できるの?


「今やってきた事、わからん?君、トロイ所あるで」


私をどうするの?


「どうするも何も、キミを更生させるために来たんや」


なぜ?


「細かい所は秘密やねんけどな、キミ、神様に選ばれた子やねん」


選ばれた?何に?


「君は人間を救える能力が有る言う事や」


なんで関西弁?


「そりゃ大阪人やもん」


私の嫌いな関西弁。


「ごめんやで。でもわざわざ標準語喋るんも気持ち悪いやん」


すっくと立ちあがった私は鏡の前に来た。掛かっている服をどける。

止めて!見たくない!私は部屋着を脱いで下着姿になった。


「ええか、京子ちゃん。これからキミは変わるんや。俺の力をな」


鏡に見たくない私が写る。しかし目もつむれない。部屋着を着て、部屋を出た。


「今度は何処に行くの」


「家族のみんなと晩ごはんやがな」


嫌、嫌。


「慣れ慣れ。直ぐ慣れるで」


私は食事室まで来た。父親はもう食事をしている。


「今日はみんな忙しくてな、お父さん一人だよ」


体はまだ謎のオッサンに操られている。


「あの、サラダと鶏のささ身をボイルして300グラム」


オッサンはメチャクチャな注文をしている。


「これからはサラダ、温野菜、鶏のささ身を中心に献立を考えてください」


丁寧に説明しているがなんだよそのメニュー。


「かしこまりました。コックに指示しておきます」


メイド長の笹原さんは食堂から消えた。


「どうしたんだ、京子。まるでアスリートの食事じゃないか」


「お父さん、私、頑張るから」


何を頑張るんだ、おい、オッサン!


食事を終えて部屋に戻った。途端に体の力が抜けてベッドに倒れ込んだ。


「わかったやろ。よろしくな、京子ちゃん」


オッサンの声は聞こえなくなった、と思うと


「何時でも呼んでや」


五月蠅うるさい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る