第42話レスリング部

「おい綾小路」


基礎トレーニングを終えて休憩中、話しかけられた。


「ウチは女子部員が少ないがそれでも良いのか」


全然かまいません。


「おまえ、ボクシングと柔道部も掛け持ちしてるんだってな」


はい、入部してます。


「おまえ、舐めてんじゃねぇのか」


練習相手に選ばれたらしい。


「お前がどれほど凄いかは知らん。レスリングは遊びじゃないんだぜ」


「京子ちゃん、俺の出番やで」


オッサンに体をゆずる。


「デカイ口叩きよってに。いてこましたろ」


タイマーのブザーが鳴った。開始早々鋭いタックルが来たが、オッサンは切った。おおっと声がする。


「小林のタックルを切ったぞ」


すかさずバックに取り付き、リフトして投げた。


「女なのになんて力だ」


周囲に沈黙ができる。タイマーが切れた。ブザーが鳴る。有難うございました。


小林先輩は部屋から出て行った。


「おい、新人。お前何時からレスリングしてたんだ」


中学生からです。嘘をついた。


「化け物か、お前」


その後の練習も男子に混ざり参加した。新子さんは何かをノートに書きこんでいる。

練習が終わったころ、2人で帰った。2人ともジャージである。


「正直に言うと、京子ちゃんの体力、技術、精神力共に国体レベルだと思う」


そうかい、褒められると照れるねぇ。けどもう体がバラバラになりそうだよ。


「それはそうよ。京子ちゃんのフィジカルはオリンピックでも引けを取らないわ」


「これを見て」


ノートを見せられた。体力測定の結果が載っている。


「青色の字が全国女子の平均。赤色の字は京子ちゃんの記録」


そう言って、京子ちゃんは言った。


「男子の平均より上なの、京子ちゃんは。これは神様から与えられた贈り物よ」


新子さん特製のプロテインを飲んで私はずっと話を聞いていた。これで良いんだよ。

ね、オッサン。


「そうや。綾小路京子は世界を相手にする器があるんやで」


これから木下ジムで練習だ。新子さん、ありがとう。


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