第63話ボクシング予選
ボクシングは地方予選から激戦になった。私のミドル級はハードパンチャーが多く、ダウンも多い。皆タフだ。
「こりゃ男も顔負けやな」
オッサンはあまり動揺していない。なんで?
「そりゃ京子ちゃん、殴り合いは俺の得意とするところやで」
1回戦は難なく勝利した。問題は2回戦である。昨年の地方予選優勝者である。新子さんの情報によると典型的なハードパンチャーだそうだ。
「熱くなってくるやん」
グラブをはめて、ヘッドガードをつけて、マウスピース。リングに上がる。対戦相手は既に上がっている。闘志満々でこちらを睨みつけている。
「まあ今の内やで相手は。心配する事あらへん」
ゴングが鳴った。インファイトに持ち込みたい相手を左ストレートで捕らえた。相手がガードを下げた時に私はラッシュに持ち込んだ。ジャブから左ストレート、左右のボディーブロー。抵抗する相手を力で抑え込み、ダウンを奪った。ボディーが効いたようで、初めの頃の勢いは無い。そのまま再びゴングが鳴って判定は私の勝ちだ。
「何なのあの子、パンチが尋常じゃない」
負けた対戦相手はトレーナーにこぼした。
私の試合はその後問題なく勝利を収めた。フィニッシュブローの打ち下ろしの左ストレートが面白いほど決まる。地方予選を問題なく通過した。
「綾小路!よくやった!全日本も狙えるぞ!」
顧問は興奮気味だ。しかし私は疲れたので挨拶も程々に五十嵐の車に転がり込んだ。
「お嬢様。いかがでしたか」
予選通過したよ、と言うと五十嵐は喜んだ一緒に乗り込んだ新子さんも
「文句の無い、良い試合内容でした」
家に帰り、録画した予選を観て、新子さんと問題を検討した。新子さんは
「今日はゆっくり休んでね」
五十嵐の車で新子さんは帰った。重い体を引きずり、風呂へ入って、ベッドに倒れ込んだ。夕食も食べたくない。泥の中に沈むように眠った。
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