第80話京子の初恋

「京子ちゃん、初恋の相手でもおらんのか」


オッサンが珍しく意外な話を振って来た。そりゃ居るよ。


「誰やねん。教えてえな」


田野君。背は低いけどイケメンだよ。


「ほう、あの男か。大人しそうではあるがどうやろ」


田野君は大人しく本を読んでいる。そこにクラスの半グレが田野君を囲んだ。


「なあ、田野、パン買って来てくれや、お前の金でな」


「嫌だよ」


田野君はキッパリと断った。私は様子を見ている。


「てめぇ、生意気だぞ」


生徒の一人が田野君の胸倉を掴んだ。おい。


「なんだよ綾小路」


私は半グレの前に立っていた。田野君の胸倉を掴んだ男の胸倉を掴み、持ち上げた。何処までも持ち上げるつもりだったが、つまらないので投げた。いいか、これ以上田野君に嫌がらせをするなら、タダじゃおかないぞ。クラスに静寂が訪れた。半グレたちはコソコソと教室の外に出た。


「ありがとう、綾小路さん」


田野君がお礼を言った。なに、ああいうの嫌いなんだ。


「僕、背が低いからいじめられやすいんだ」


悲しそうに言う。でももう大丈夫。私が指一本触らせないよ。


「女の子に助けられるなんて情けないな」


ううん、そんな事無いよ。気にしちゃダメさ。こっちで一緒にご飯食べない?


「良いの?」


もちろんだよ。お昼ご飯は楽しく食べなきゃ。


田野君も加わって賑やかなお昼ご飯だ。仲良く男女関係なく食べる。これで田野君を誘う目的が出来た。やった!


「京子ちゃんは面食いやねんな」


そうよ、男は顔よ。顔が全て。背の高さなんて関係ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る